Painting Data
Allegory of Spring
(La Primavera)
c.1482
Tempera on panel, 203 x 314cm
Galleria degli Uffizi, Florence
  
Web Gallery of Art より拝借
Courtesy of Web Gallery of Art
Artist Data
BOTTICELLI, Sandro
1444/45-1510
Italian Painter
Florentine school
* * *


  たとえ芸術にはあまり興味がないとおっしゃる方でも、よもやこの絵をご存じない方はいらっしゃらないでしょう。イタリア・ルネサンスを代表する名画、ボッティチェリの《春》です。
  これほど著名な作品に対して今さら何をか言わんや、というところですが、しかしこの絵の寓意解釈は15世紀の作品の中でも最も難解と言われる代物ですので、一応簡単にご説明しておきましょう。
  まず画面左端にいる赤衣の若者は伝令神メルクリウスで、手にした杖で空にかかる雲を追い払っています。神話においてはメルクリウスは豊饒の女神プロセルピナを冥府から地上へ連れ出す神ですので、ここでは生命死に絶える冬の終焉と新たな春の到来を告げる使者として描かれているものと思われます。
  彼の隣で輪舞を踊っている乙女たちは優美の女神グラティアたち、三美神として知られるヴィーナスの随神で、絵画の世界では理想の女性像としてのヴィーナスに具わる3つの徳目「愛」「純潔」「美」を象徴する存在とされています。誰がどの徳目を象徴するかについては絵によりますが、とりあえずこの作品では左が「愛」、中央が「純潔」、右が「美」とされています。
  上空に目をやると、「盲目の愛」を象徴する目隠しされたキューピッドがその弓矢で「純潔」を狙っています。よく見ると彼女の視線は隣にいるメルクリウスに注がれており、身にまとった薄衣は左側の「愛」の方に半ば脱げ落ちてしまっていますね。これは純真な乙女に訪れた愛の目覚めを表しています。
  翻って画面右側では、青い肌をした西風の神ゼフュロスが1人の乙女を捕えようとしています。ゼフュロスは春をもたらす風で、四方の風神たちの中でも最も優しいとされる神です。彼が求愛する乙女の名はクロリスといい、一介のニンフの身でしたがゼフュロスの妻となったことで花を支配する女神フローラに昇格します。
  クロリスの左に立つ花柄の衣裳を着た女神は、クロリスの変身後の姿であるフローラとも、あるいは春の女神プリマヴェーラとも言われます。まあ、これは別にどちらであっても大差はありません。
  最後に、画面中央に君臨してこれらのすべてを統括しているのが美と愛の女神ヴィーナスです。同じボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》に描かれた裸体の美神が高尚な愛を司る「天上のヴィーナス」であるのに対し、ここに描かれた着衣の美神は「世俗のヴィーナス」を表します。この美しく明るい森は彼女の王国であり、俗愛を司る彼女の力に満ちあふれています。
  《春》――それは花咲き誇る季節の春であると同時に、生命燃え盛る人生の春のことでもあります。耳を澄ませば、舞い遊ぶ女神たちの口から華やかな愛の賛歌が今にも聞こえてきそうではありませんか?
 
 
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