上高地は梓川流域に発達した谷底平野で、大正池と徳沢の標高差は60mほどしかありません。 多少のアップダウンはあってもほぼ平坦な道をのんびり歩くだけでも、雄大な穂高連峰を間近に眺めることができ、 美しい花や野鳥の囀りを楽しむことができます。
大正池と残雪の穂高連峰
田代湿原と残雪の穂高連峰
1915年(大正4年)に焼岳が噴火した際に梓川がせき止められて誕生したのが大正池です。沢渡方面から来て釜トンネルを抜け、大正池の向こうに穂高連峰が見えてくると、上高地に来たという実感が湧いてきます。
間近に見る焼岳はゴツゴツした山容が荒々しく迫力十分。穂高連峰はやや遠いものの、池の水面に姿を映し静かに聳え立つ様は残雪期にはことに素晴らしく、岸辺のデッキにはカメラの放列ができます。
大正池の少し上流の小湿原の中にある小さな池が田代池です。田代橋のたもとから田代池を経由して大正池まで自然研究路があって、林の中を野鳥の声を聞きながら歩くことができます。田代池近くの三叉路は上高地の中でも指折りのビュー・ポイントで、湿原の向こうに雄大な穂高連峰の姿が仰ぎ見られます。
ウェストン・レリーフ
帰りは田代橋・穂高橋を渡ってウェストン・レリーフを見に行くのもいいでしょう。英国の宣教師ウォルター・ウェストン(1861-1940)は3度来日して中部山岳地帯を踏破し、著書「日本アルプスの登山と探検」で日本の山を世界に紹介したことで知られます。このレリーフは氏の功績を称えて建てられたもので、レリーフ横のウェストン広場では毎年6月の第一土・日曜日にウェストン祭が開かれます。
大正池から河童橋にかけては上高地でも最も人の多いところです。9時を過ぎると大正池の前でバスから降ろされたツアー客が大挙して河童橋に向けて歩くので、この時間帯に田代池に向かうと人波に逆らって歩くことになって大変です。早起きして、人が多くなる前に行きましょう。よく写真で見るような大正池の朝靄は早朝しか見られません。上高地泊の場合、バスターミナルからタクシーを使うと時間を節約できます。
穂高神社奥宮(明神池はこの奥)
河童橋から小梨平を抜けて梓川左岸の道を歩きます。明神までは石も少なく歩きやすい道です。この道では夏はコマドリの声がよく聞かれ、さながら「コマドリ街道」といった趣です。近くで声がしたらじっと立ち止まって林の中を探してみましょう。運が良ければ姿を見せてくれるかもしれません(コマドリは地面に近い比較的下の方にいます)。1時間ほど歩くと明神館が見えてきます。
明神館の前にはベンチがあって休憩にはもってこい。中に食堂もあります。明神館の前を左に折れて梓側にかかる吊り橋を渡り、嘉門次小屋の前を過ぎると穂高神社奥宮。明神池はこの奥にあり、間近に見るには拝観料250円が必要です。
河童橋と明神の間では梓川右岸にも遊歩道があります。こちらは主に木道を歩くことになりますが、階段が多くて歩きにくいし、左岸の道に比べて観光客が多いので、あまりお勧めしません。
徳沢のニリンソウ
明神から先、徳沢まで行くと人の数はぐんと少なくなります。河童橋周辺の混雑に辟易したら、ここまで歩いてみてはいかがでしょう。明神から1時間、河童橋から2時間ほどです。徳沢キャンプ場の草地は休憩にもってこい。持ってきた弁当を広げるもよし、昼寝するのもよし。見上げる山の姿も河童橋からの眺めとはずいぶん異なり、前穂高岳や明神岳を間近に望みます。また、5月下旬〜6月上旬にはニリンソウが一面に咲いているのを見ることができます。
「氷壁の宿徳沢園」は井上靖の小説「氷壁」に登場することで有名。食堂・売店もあります。野沢菜チャーハン&生ビールがオススメ。