全般性不安障害(GAD)・パニック障害(PD)
■■■   発病年齢   ■■■
強迫神経症や普通神経質は思春期から20代で発病する者が多いのですが、不安神経症は、30代、40代で発病する人の割合が高くなります。

■■■   病前性格   ■■■
病前性格は、神経質の他に、社交的で面倒見のいい人が多いのが特徴です。

■■■   症 状   ■■■
突然起こる不安・恐怖発作が中心症状です。それに、心臓が急にドキドキする、発狂恐怖、呼吸困難、身体の痛み、手足の冷汗、脱力などが加わり、それによって発作のタイプが違ってきます。

発作が起こると強烈な不安・恐怖を我慢できず、救急車で病院を受診することがよくあります。病院に着いた頃には、発作はよくなっていることがほとんどです。検査を受けても何の異常も見つかりません。心電図で、治療の必要のない不整脈を指摘されることもありますが、発作の原因になるものではありません。不安発作は、一過性のもので、何の後遺症もなく治まります。
 
発作を繰り返しているうちに、発作が起きたらどうしようかという予期不安のために、単独で外出できなくなったり、1人でいるのが困難になったりします。飛行機、新幹線、急行電車など、発作が起きたときにすぐに病院に行くことができない状況が、特に苦手です。外を走る電車には乗れるが地下鉄がだめ、空いている電車はいいが満員電車には乗れないなどという人もいます。

乗り物が恐いのではなく、乗っているときに起こるかも知れない不安発作を恐れているのです。発作によって他人に迷惑をかけることを恐れる人もいます。
 
不安発作を恐れて逃避行動を繰り返しているうちに、外出できる範囲はどんどん狭くなっていき、家から一歩も出られなくなることもあります。しかし、そのために心身に障害を来すということはありません。
 
しかし発作を恐れてやるべきことをやらなくなったり、電車で行けるのにタクシーを使ったりするようになると、実害が出てきます。発作そのものは恐れることはありませんが、日常生活に支障が出るのは問題です。


■■■   なぜ発作が起きるのか   ■■■
パニック発作を起こして病院で検査してもらっても、どこも異常がないと言われます。悪いところがないのにどうして苦しくなるのでしょうか。それは、ものの考え方や行動の仕方が原因です。
めまいがする、急に不安になる、脈が速くなるなどのことは、健康な人でもよくあることです。普通は、誰でもあることだと思って気にとめません。
 
しかし心配性で、病気ではないかと気にしやすい傾向のある人は、些細な不調でも、病気のせいではないかと気にします。病気だと思うと、よけいに不安になります。不安になれば、注意は身体のことに集中します。そして身体の症状を敏感にとらえ、さらに不安が大きくなるという悪循環に陥るのです。森田先生はこのことを、精神交互作用と名付けました。
 
不安が強くなると、病人としての行動を始めます。救急車で病院を受診する、脈拍数や血圧を頻繁に測る、発作が起こりやすいと思う所へは行かないようにするなどのことです。
誰にでもあることを、病気ではないかと誤って考え、身体や心の状態に注意を集中して不安を増大し、病人らしく行動することが、症状を長引かせる大きな要因です。


■■■   治し方   ■■■
治すためにどうすればよいかは、どうして発作が起こるようになったのかを考えれば分かります。一言で言えば、病人らしくせず、健康な人間として行動することです。


1.健康とは何か
健康とは、何の不快感、不安もない状態ではありません。気分爽快で何の不安もなく、身体にもエネルギーが満ちていて、少々のことでは疲れを感じないで、活動的で動き回っている。こんな状態が理想だと思うかも知れませんが、躁病という病気に罹っていることが多いのです。
 
健康な人でも、頭が重かったり、胃の具合が悪く感じたり、肩こりがしたりすることはあります。身体の不具合を感じることはあっても、こんなものだと思って暮らしているのです。精神的にも、不安や心配事を抱えているのが普通です。一寸先は闇というように、誰もが将来の保証のない所で暮らしているのです。
 
ある程度の不具合や不快感を感じながら、たいした支障もなく生活が出来ている。これが健康というものです。


2.不安から逃げないこと
発作が起きないようにとばかり考えて、発作が起きやすい状況を避けて生活していると、いつまでも治らないで、何年も苦しむことになります。
 
森田先生は、数年来心悸亢進発作で悩まされていた女性患者に対して、次のように言っています。「今夜臥褥するときに、その発作が最も起こりやすいという横臥位を執り、自分から進んでその発作を起こし、しかもその位置のままで苦痛を忍耐し、かつ発作の起こり方から、その全経過を熱心に詳細に観察するようにして下さい。そうすれば私は、あなたのその体験によって、将来けっして発作の起こらない法をお教えする。もしこのために、今夜いかに激しい苦痛があって、徹夜するようなことがあったとしても、長い年数の苦痛と不安を取り除くことができれば、充分それを忍耐する価値のあることである」(「新版・神経質の本態と療法」より)
 
この患者さんは直ちに教えられたとおりに実行しましたが、発作を起こすことはできず、5分もしないうちに眠ってしまいました。このときから不安発作に対する不安は、全くなくなってしまいました。不安神経症はこのように、瞬時にして心構えを体得して治ることもよくあります。
 
私の所に来られた女性は、心悸亢進発作のために電車に乗ることができず、初回の時には夫と一緒でした。「主人と一緒なら、不安もなくどこにでも行くことができます」と言っていました。私は、どうして症状が固定してどうすれば解決するのかを説明したあとで、「解決するためには、1人で電車に乗ることが大事です」と言いました。そしてその方は、1人で帰ることにしたのです。家に着いたらすぐに電話が来て、「発作も起きずに帰り着きました。私の心構えが間違っていたことがよく分かりました。もう心配ないと思います」とのことでした。
 
発作から逃げるのではなく、必要があれば、発作に向かって突入していくのです。そうすると、発作は逃げていってしまいます。


3.発作のやり過ごし方
発作が起こってきたときには、どうすればいいでしょうか。
不安・恐怖の発作は一過性で、時間が経てば跡形もなく消えて、何の害も及ぼしません。ただ一時的にこわい思いをするだけのことです。
 
発作が起こってきたときは、このことを頭に置いておけばよいのです。台風が過ぎ去るのを待つように、発作をやり過ごすことです。この経験を何度か繰り返していくうちに、発作は起こっても何事もなく消えてしまうこと、こわいものではないことが体験的に分かってきます。 1人で電車に乗った場合などは、恐怖感が強く、逃げ出したい衝動に駆られます。このとき忍耐して最後まで続けることが大事です。「あるがまま、あるがまま」と言い聞かせながら耐えたという人や、「この発作は何事もなく消えてしまう」ということを念じ続けた人もいます。初めのうちはかなりの我慢が必要な人もいます。これは自分1人でやらなければなりません。
 
やがて不安が起こっても動揺することはなくなります。さらに進むと、不安発作のことなどは考えなくなってきます。発作に注意を集中して、そのことばかり考えていることがばかばかしくなってくるのです。どうしてあんなつまらないことで悩んでいたのだろうと、思うようになるのです。

職場まで電車で行きたいという気を起こせば、車内で発作が起こったらどうしようかという心配も出てきます。目的を達成したいという気持ちと不安とが戦うのです。

目的を達成するための行動を続けるのか、不安に基づいて逃げてしまうのか、どちらをとるのかがとても大事です。目的意識に固執して目的達成のための行動をすればよくなっていくし、不安発作を起こさないようにと逃げの行動を続けていると、よくなることはありません。


4.不安発作のあるなしにこだわらない
どうなれば治るのですかと聞かれることがよくあります。治るということは、何の不安も心配もなく外出できるようになることではありません。それを目指してしまうと、精神交互作用を起こして、逆に不安は強くなります。治るとは、不安に対する心構えが変わることです。
 全く安全に外出できる保証などどこにもありません。急病で倒れるかも知れないし、事故に遭うかも知れません。人間として生きる限り、完全な安心などどこにもありません。
不安がいつもあるところで、目標達成を目指して行動していのです。

不安なままでいることと、不安であることで悩むこととの間には、大きな違いがあります。例えば、耳が痛くなるような寒さの中を歩くのは、つらいものです。このときは、ただ寒い思いをしているだけです。寒く感じている自分について、悩んだりはしません。
外出時に不安になったときも、これと同じです。ただ不安なままに先に進んでいけばよいのです。不安はあってはいけない、発作を起こさないようにしなければと思うとき、不安であることが悩みになります。不安と戦わず、ただ感じるままにしていれば、悩みにはなりません。

不安はあってもなくてもよい、それよりもはるかに大事なことは目的を達成することだという心構えができたときが治ったということです。治ったからといって、何の不安もない境地に達するわけではありません。不安が起こっても、それをあるがままに受け入れて、不安と戦わなくなるだけのことです。
 
そうなると不安が起こっても、不安でいるだけで、不安だからと言って動揺することはありません。
 
 
 
 パニック障害に見られる3つの症状
パニック発作
予期不安
広場恐怖
・ 動悸(心臓がドキドキする)
・ 呼吸困難
・ 発汗
・ めまい
・ ふるえ
・ しびれ
・ 恐怖感
・ 現実感の喪失

・ 「またあの発作が起きるのではないか」という強い不安感を抱く
予期不安がパニック発作を誘発することもある

パニック発作の起こった場所や状況に恐怖を感じて避けるようになる
・ 人ごみ、電車・バス、車、飛行機などを恐れる
・ 一人での外出が困難になることもある



 
   
パニック発作
 パニック発作とは、なんの前触れもなく動悸・呼吸困難・めまい・発汗・手足の震え・吐き気などの身体症状が、強い不安・恐怖とともにあらわれることをいいます。
 これらの症状は、突然起こって10分以内に頂点に達します。それほど長くは続かず、通常は20〜30分の間、長い方でも1時間以内にはおさまります。



予期不安
 パニック発作を経験した後に、「またあの発作が起こったらどうしよう」という強い不安を持つことを予期不安といいます。
 さらに、予期不安がパニック発作を誘発することがあります。パニック発作への不安(予期不安)で頭がいっぱいになり、思考が悪循環のループにおちいってしまうような場合です。
 具体的には、「また発作が起こったらどうしよう」→「でもきっと起こるんだろうな」→「なんだか不安でいっぱいになってきた」→「ああ、やっぱり発作が起こってしまった」という具合です。
 予期不安によるパニック発作の誘発は、パニック障害の特徴の一つです。



広場恐怖
 パニック発作が起こった場所や状況に対して不安を抱き、そのような場所や状況を避けるようになることを広場恐怖といいます。
 広場恐怖の対象となる場所や状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車やバス、車、飛行機、エレベーター、歯医者、美容室、映画館、会議室など、人ごみもしくは一人きりになる場所、逃げるに逃げられない状況が多いようです。
 ちなみに広場恐怖の「広場」とは、ギリシャ語で「市場」「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であって、「広い場所で恐怖を感じる症状」という意味ではありません。
 広場恐怖はパニック障害の症状のひとつではありますが、パニック発作・予期不安のようにかならず起こるわけではなく、パニック障害の患者さんでも広場恐怖の症状が現れない場合もあります。





不安障害(不安神経症)・パニック障害を考えてみる


 考えなくてはならないことは、長年月にわたり病院で薬のみを処方され、2時間待ちの3分間治療で、症状の根治は困難を極めるケースが多いということであります。確かに、多くの病院で治療に専念する医師には大いに敬意を表するところではありますが、単なる薬物投与だけでは限界がある症例が多々とあります。そこのところを十分に考え治療戦略を組み立てないと、私は考えます。

 さて、不安神経症というのは、森田先生は発作性神経症と言っていました。そして、一般に強い不安におそわれることが普通です。そのために救急車で運ばれたり、医師の所に飛び込んだり、医師の急速な往診を求めたりすることが多いものです。

不安神経症・パニック障害の人達は常に不安におおわれて、その不安の訴えには、現実の不安と、予期してそうなるのではないかという不安感があります。いろいろの身体症状を持ってる人達は一応身体的に精密検査をすることをお勧めします。心臓症状の人は心電図、胃腸症状の人は内視鏡検査、めまいの人は耳鼻の検査、頭痛発作の人は頭部MRIなど。不安神経症の症状は次のとおりです。


 発作的心臓症状(心悸亢進・期外収縮)      なんとない不安状態
 精神異常を起こすのではないかという不安      発作的めまい症状  
 外出不安                         呼吸困難感
 卒倒しそうな不安                    急性の不安発作
 尿意を催しそうな不安                  嘔吐しそうな不安

などがあります。  


この発作は突然起ることが多く、時間は数分間のものが普通であるが、中には長時間に至るものもある。
人によって程度の差はあるがこの際患者ははなはだしい不安に襲われ、今にも死ぬのではないか、心臓が止るのではないかという不安に襲われる。あるいは声を出して人を呼び、胸部を冷したり、医師を迎えて注射を要求したりする。

私(筆者)は、その昔、感冒症状とよく似た、だるい・歩行困難・微熱(37.4℃程度)・顔面蒼白・熱感・話すのもつらいなどがあった。又、時に、うつ状態とよく似た意欲の低下(今から思えば、恐怖のために起こる意欲の低下)などが見受けられた。

かかる患者はまた、口内乾操、頭内充血感、四肢の冷感あるいは熱感、脱力感、身体諸部位の脈動感(どきどき波打つ感じ)、めまい、卒倒感、心臓部の疼痛感、呼吸促迫あるいは浅表感、耳鳴、咽喉の統狭感(しめられる感じ)、精神が錯乱しそうな感じ等の何れかをともなうことが多い。

かかる場合の患者を見ると、顔色は蒼白で、呼吸は促迫(そくはく)し、脈拍は90以上150に達するものもある。

ひとたびこの発作を経験すると、患者は、再度の発作襲来を恐れて、常に不安の状態がつづき不安な不吉な連想に悩まされ、誰もいない所で発作が起ったら、電車の中で起ったら、歩行中に起ったらなどとそれからそれへと恐れて、ついに外出も困難になり、活動範囲は次第に狭められて、ついに我家より一歩も外に出られなくなる人もあり、中には寝たきりのようになる人もいる。

かかる人々はまた入浴を恐れることが多い。数ケ月間入浴せずにいる人もあり、風呂に入っても不安のためただちに飛びでて、温浴を楽しむなど思いもよらぬという風になることが多い。これは入浴による体温上昇のために、心臓の拍動が盛んになることを恐怖するためである。

また床屋・美容室に行くことを嫌う人も多い。これは、じっとして気を紛らすことがなく、不安に直面するので不安を強く感ずるためであろう。数回の発作を経験すると、もはや発作はほとんどなくなっていても、いつ起るかも知れぬという予期恐怖のために萎縮している人も多い。

本症が精神のからくりから起るということは、まず第一の発作の起った動機を見るとよく解るのである。

さて一度かかる発作を経験したものは、また起りはしないかという予期恐怖を持つようになり、ほとんど無意識的にも、不断に注意を発作に向けているという状態になる。それで何かの機会に前の恐ろしい発作の連想が浮び、はっとして胸の感じに異常を来すと、「来たな」という恐怖が卒然(そつぜん)として起り、俄(にわか)に心悸亢進がたかまってくる。

しかし患者はこの発作の恐しさに夢中になっているので、自分の心のからくりには少しも注意が向いていないのである。だから当人は、精神的条件から起るものとは自覚せず、何か心臓の病気であると思い込み、ますます発作に対する不安を持つようになるわけである。

パニック発作は次ぎの症状のうち、4つ以上(またはそれ以上)が突然に発現し、10分以内にその頂点に達すると言われています。

1.動悸・心悸亢進・心拍数の増加
2.発汗
3.身震いまたは震え
4.窒素感
5.胸痛または胸部不快感
6.吐き気または腹部の不快感
7.めまい感・ふらつく感じ・頭が軽くなる感じ・または気が遠くなる感じ
8.現実感喪失(現実でない感じ)・離人症状(自分から離れている)
9.コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
10.死ぬことに対する恐怖
11.異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
12.息切れ感または息苦しさ
13.冷汗または熱感



 
社会不安障害(SAD)・対人恐怖症

あがり症などの社会不安障害・社交不安障害(SAD)を発症している人は、あらゆる社交的場面や「人前で話す」「電話に出る」「注目を浴びる」などの状況で常に強い不安を感じています。

多くの人は、最初に不安を感じる状況でも時間とともに慣れ、不安感や恐怖感は徐々に薄れていくものですが、あがり症などのSAD(社会不安障害・社交不安障害)の患者さんはそうではありません。「他人は自分を見て笑っているかも」、そんな不安を強く感じ続けてしまうのです。

また、自らの著しい不安感が「人とは違う、この不安感や恐怖感は不合理なものだ」と認識していることはSADの患者さんに共通している点です。

やがて、だんだんと自分が恐怖を感じる場所に行くことを避けるようになります。どうしても出かけなければならない場合には、その場に赴く前から非常に強い不安を覚えることになり、今まで以上に周囲の目が気になるようになってしまいます。こうした強い不安感は、学校や職場での活動にも大きな影響を及ぼし、不登校や中退、退職といったケースに至ることも多く、生活に大きな支障をきたすようになってしまいます。

   

また、思春期前にSADを発症した場合は、自らの不安感を不合理であると認識できない場合があります。こうした子どもには、「よく知っている人の前では普通に振る舞えるが、よく知らない相手だと、大人だけではなく子ども同士のつき合いでも不安を感じている」「よく知らない相手と会う状況を避けたがる」等の症状が現れます。

SADは、比較的若いうちから発症する病気で10代半ばから発症するケースが多いとされています。症状が慢性化してくると、「うつ病」や「パニック障害」等、別の精神疾患の合併が問題となります。また不安な気持ちを回避するためにアルコールを多量に摂取するようになり「アルコール依存症」を引き起こすこともあるため、充分に注意することが必要です。



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