Painting Data
Proserpine
1877
Oil on Canvas, 116.8 x 55.9cm
Private collection
  
Mark Harden's Artchive より拝借
Scan by Mark Harden
Artist Data
ROSSETTI, Dante Gabriel
1828-1882
English Painter
Pre-Raphaelism
* * *


  特に語る必要もないほどよく知られた、ロセッティの代表的な作品です。
  深緑の衣裳に身を包み、やはり深緑の神秘的な瞳で虚空を見つめる冥府の女王プロセルピナ。彼女の手に握られた石榴と背後の壁に這う蔦はいずれも死と再生の象徴であり、薫かれている香もまた名高いエレウシスの秘儀の暗示でしょう。これらのものに囲まれて女神は囚われの身を嘆き、地上への帰還を切望し、しかしどこかでそれを諦めた、複雑な翳を帯びる表情でひとり佇むのです。
  この絵のモデルは画家の愛した女性ジェーン・モリスです。1857年、芝居見物に出かけたオックスフォードの劇場で17歳のジェーン・バーデンと知り合ったロセッティは、貧しい馬丁の娘とも思えぬ上品で謎めいた美貌に心を奪われますが、彼には既にエリザベス・シッダルという婚約者がいました。ジェーンをモデルとして描きながらも深い交際をためらっている間に、同様にジェーンに惹かれた彼の親友ウィリアム・モリスが彼女と付き合い始め、1859年に2人は結婚。ロセッティもその翌年に10年という長い婚約期間を経てエリザベスと結婚しました。
  しかし、病弱な妻エリザベスは夫の女性関係や流産などの精神的・肉体的打撃に耐えられず、わずか2年後に死去してしまいます。その後、愛せない夫モリスとの不幸な結婚生活を送っていたジェーンとの恋が再燃し、ロセッティは再び彼女をモデルに絵を描き始めました。《プロセルピナ》もその1つで、現実のジェーンの憂いが冥王との望まぬ結婚に繋ぎ止められたプロセルピナの悲哀として見事に結実しています。冥府の女王の絵として見れば死と再生の象徴となる蔦は、ジェーンという1人の女性を描いた絵として見た場合「忘れられぬ想い」を暗示します。
  ところで、この《プロセルピナ》には油彩だけでも1874年作、1877年作、1882年作と少なくとも3つのヴァージョンがあり、これらは全体の構図はまったく同じながらサイズや多少のディテールにおいて異なっています。ここでご紹介しているのは個人的に最も美しいと思った1877年ヴァージョンですが、より有名なのはテート・ブリテンにおさめられた1874年ヴァージョンの方でしょう。それは125.1 x 61cmと3つの中で最も大きいサイズとなっています。
 
 
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