釣話−3  

 2012.2.12 釣り総合情報サイト「Fish/up」 http://fishup.net/ に、新しいコラムが掲載されました。

□ 自転車 <2012.5.21>
 十勝地方は昨年(2011年)9月に台風による大雨で全ての河川が大増水し、ほとんどの河川で形状が大きく変わってしまいました。釣れるポイントがリセットされた状況です。そこで今年は春先から各河川でポイントを探す釣りを続けています。好ポイントがあっても我慢して早めに釣りを切り上げて、どんどん川を進んで新たなポイントを探しています。結果として遡行距離が非常に長くなります。そんな時に役に立っているのが自転車です。昔から長い距離を釣る時には自転車を利用しています。私のスタイルは、退渓地点に車を置いてから自転車で入渓地点まで移動し、自転車を置いて釣りを始め、退渓地点まで釣ったら、駐車しておいた車で入渓地点まで戻って自転車を回収します。このスタイルにしたのは、元気なうちに体力を使うことを終えて、後は楽をしようとした考えが第一です。また、過去に退渓地点に自転車を置いていて場所が分からなくなって困りはてた経験も影響しています。自動車の大きさならめったに見失うことはありません。この自転車ですが、整備もしないでずいぶん長い間使っていたので、とうとう壊れてしまいました。自転車屋に持っていったところ、チェーンやタイヤ交換など修理にかなりの金額が掛かるといわれたので、思い切って新品を購入しました。通信販売でメーカーは無名ですが、20インチ・折りたたみ式・シマノ製6段変速ギヤ・後輪サスペンション搭載で見た目も良く、壊れた自転車に比べると月とスッポンの感があります。ただし思いのほか安かったので少なからず心配もあります。まだ届いていませんが非常に楽しみにしています。


□ シイ十勝川がない <2012.2.3>

 十勝川は上流の新得町のトムラウシ付近で、シイ十勝川とトムラウシ川に分かれます。子供の頃からそのように教えられて自分でも地図で確認しているので疑うことはありませんでした。2011年の初夏に書店へ立ち寄った時でした。文芸書を見た後に真夏にシイ十勝川へ釣りに行こうと決めていたので地図を見に行きました。適当に地図を手に取りシイ十勝川のページを見ていると、川の名前がシイ十勝川でなく十勝川になっていることに気が付きました。川の名前が正確でない地図はまれにあるので、いつもなら間違っているなと思って気に留めなかったと思います。しかしその時は何故か別の地図も見ることにしました。すると、その地図もシイ十勝川でなく十勝川になっています。これはおかしいと思って置いてある全ての地図を調べました。12冊中の7冊がシイ十勝川で5冊が十勝川でした。これは本格的におかしいと思い家に帰ってインターネットで調べました。すると、国土地理院、マピオン、Yahoo、Google全ての地図が十勝川になっていました。この時点でシイ十勝川は十勝川に名前が変わったのだと思いました。すぐに、「いつから」という疑問が湧き起こりました。興味があることは徹底して調べる性格です。いつ名前が変わったのかを知るために調べることにしました。地元の新得町役場を始めに、国土地理院、国土交通省、北海道開発局まで問い合わせることになりました。結果は、昭和41年の河川法の改正でシイ十勝川は十勝川に名前が変わったと知らされました。昭和41年といえば45年も昔の話で、私がシイ十勝川を知るずっと前のことです。何か気が抜けてしまい、何故今でも地図にシイ十勝川の表記が残っているのかまでは調べる気になりませんでした。シイ十勝川は私にとってたいへん思い入れの深い川です。魚が釣れる標高まで全区間を釣ると決意して、たいへんな苦労をして達成しました。たくさん魚を釣りましたが、恐ろしい思いも怪我もたくさんしています。思い起こせば、十勝を代表する大河川が、十勝川の名前で源流がないのは残念だと考えたこともあるので、シイ十勝川ではなく十勝川の方が気持はすっきりします。しかし、何十年も親しんできた川が、いきなりそのような名前の川はないと言われると寂しくてたまりません。私はこだわりを持って、これからもシイ十勝川と呼びたいと思います。あの川を知る多くの釣り人はシイ十勝川と呼んでいるのが現実です。

□ 茶路川の異変 <2012.1.22>
 茶路川を初めて訪れてからすでに30年近くになります。私にとっては、80cm以上のアメマスを、ルアー、フライ、ミャク釣りのそれぞれで初めて釣った川であり、3釣法全てで釣っている唯一の川です。当時は邪道扱いされがちだったフライのルースニング+エッグフライで、人目を気にしながら釣っていたことも思い出に残ります。毎年、楽しく釣りができて魚に感動した川ですが、2010年の秋に変化がありました。毎年最盛期にはアメマスは随所ですごい数で群れをなして泳いでいる姿を見ることができましたが、その数があまりに少な過ぎました。河口から上流の二股まで確認しましたが、アメマスが群れで溜まっている箇所の数も、一つの群れの魚の数も驚くほどの少なさで、私の印象では例年の半分にも満たな状況でした。原因は何か、道東自動車道の工事、毎年起こる台風直撃での大増水、海水温の上昇などいろいろと考えたものです。そして2011年の秋を迎えました。アメマスは2010年と同じくまったく少ない残念な状況でした。2年間も続くと異変としか考えられません。北海道の太平洋岸全域のサケは2010年から2年間で大不漁が続いています。十勝の秋サケ定置網漁は、例年1万トン以上の水揚げですが、2011年は過去30年間で最低の4031トンになっています。アメマスとサケに因果関係があるかどうかは分かりませんが、時期が同じというのは何かがあるように感じます。サケは人工的に毎年孵化させて相当な数を放流しており、不漁の原因は関係機関で調査が行われるので復活の可能性があります。しかし、茶路川のアメマスはそうはいきません。自然に任せるしかありませんが、たいへん心配しています。


□ 嫌な気分
 ある方から、札幌市近郊の川で偶然出会った釣り人が私のことを知っていて、「山口は釣れなかったポイントではうっぷん晴らしに川に石を投げて立ち去り、釣れたポイントではもう釣れないように川に石を投げてから移動する」と言っていたと知らせてくれました。バカバカしくてまともに取り合う気にもなりません。私は矜持を持って釣りしていますから、もちろんそのような人間性に欠ける行為は絶対にしません。さらに、音の速さは空気中では毎秒340mですが水中では毎秒1500mと非常に速く、水中の音は空気中に比べて弱まりにくく遠くまで伝わる性質だと知っているので、川に石を投げて音を立てるような、釣りに不利になる愚かな行為は絶対にしません。どこでこのような根拠のない言われ様になったのかと思いますが、「釣れない時は地団太を踏んで川に石を投げてしまいたいくらいに悔しい」と話をしたこともあるので、それが原因なのかも知れません。今後は言動には十分に注意したいと反省しています。ある方からは、「一芸に秀でて頭角を現すと、あらぬそしりを受けるようになることは世の常です」と過分な言葉をいただきましたが、誹謗中傷は耳に入ってしまうと腹立たしく気分が良いものではありません。

□ ミノーーの速度と移動距離
 北海道の川は魚が多いので、ルアーフィッシングのミノーイングでは、「ただ巻き」でもある程度の釣果が望めます。しかし、トゥイッチング、ジャーキング、ストップ&ゴーなどのアクションを駆使することで釣果が上がることは言うまでもありません。特に、警戒心が強い大物を狙う場合にアクションが必要であり、その効果は絶大です。アクションの習得はそう難しいものではありません。多彩なアクションを身に付ければさらに釣果が上がります。しかし、アクションの動きだけを習得して、そこから先にある技術の進化を考えていない方が多くいます。アクションと付随している重要な要因も見失っています。さらに多くの魚、さらに大きな魚を釣りたければ、ミノーの速度と一回のアクションで移動させるミノーの距離を考える必要があります。これらは、リールのハンドルを回す速度と、ロッドの先端を動かす速度と、ロッドの先端を動かす距離で決定されます。問題は、「その時」の魚が反応しやすいミノーの速度と移動距離を出しているかどうかです。これがたいへん難しいところです。「その時」とは、魚の種類による運動能力の違いと、魚の活性状態に大きく関係しています。たとえば、運動能力の低い魚や低活性の魚に対し、ミノーを速く動かして一回のアクションで長い距離を動かしてしまうと、魚が興味を示さないか、ミノーを追いかけきれない状態になって、結果的に釣れない状況になります。速度や移動距離は、実際の川ではアドバイスできますが、状況次第なので数値で表わすことは非常に難しいことです。ミノーイング
では、自分の中で確立した定義に基づいて、ミノーの速度と移動距離を調整して釣っています。ハンドルの回転速度、ロッドの移動速度、ロッドの移動距離の3動作を、単独や各動作を組み合わせて、工夫して釣ることをお奨めします。釣った実績を伴った経験から体得することが大切です。

□ 十勝川の特徴

 十勝地方は10月の下旬から気温が一気に下がり始め、11月中旬から最低気温が連日で零下になると、水温が下がってほとんどの河川でニジマス釣りは終わりを迎えます。その中で、気温が高い冬なら12月中旬までニジマスが釣れるのが、十勝川の佐幌川合流から札内川合流の区間です。昔ならイトウの良い時期ですが、現在の十勝川のイトウは絶滅寸前の悲しい状況で、わずかに生息はしているものの、狙って釣るには厳し過ぎます。この区間で冬までニジマスが釣れる要因には、水温と魚の移動が大きく影響しています。佐幌川合流の上流に屈足ダムがあります。屈足ダムに貯水された水は、低気温の影響をあまり受けないで、同位置の河川に比べると水温が2〜3℃高い状態で下流へ放水されています。この水温の高さと十勝川の水量の多さがニジマスの活性をささえています。次に、この区間にはニジマスが多く棲息する、佐幌川、美生川、然別川、音更川、札内川などの支流がいくつも流入しています。各支流は十勝川本流に比べて水温の低下が速く、真冬にはわずかな流れを残した程度で川は凍りつきます。各支流の下流域に生息するニジマスは水温の低下に伴って水温の高い十勝川へ移動します。実は、佐幌川合流から札内川合流の区間で、ニジマスの数が一番多くなるのは晩秋からの時期になります。数は多いですが、さすがにニジマスが反応する限界近くの水温なので、たくさん釣れるわけではありません。しかし、水温が低い分小さい魚の反応が鈍いので大物の期待が高まります。ニジマスは流れの緩やかな深場におり、広い十勝川でもポイントが見つけやすいことも有利です。晩秋から冬にかけても、ニジマスを釣りたい方にはお奨めします。ただし、まずは寒さと戦わなければなりません。


□ 大増水 
 2011年9月1日から6日にかけて、北海道の西側を台風12号が通過し、5日からは東側を通過する台風13号も加わって、北海道は東西を台風に挟まれてしまい、各地で記録的は大雨が降り、十勝地方もほとんどの川が大増水しました。中でも音更川は、下流の一部の堤防が決壊するほど水位が上がり、上士幌町の糠平ダムからの放水量は1981年以来30年ぶりの高水準を記録しました。川はここまで増水してしまうと、破壊されてしまいます。流れている川の位置自体が完全に変わってしまうことがあります。流れている位置に変化が無くても、カーブの度合い、深さ、川底の形状や底質などが変化することもあります。最悪なのは、長時間にわたって大量の水が流れることにより、川が直線化して、川底が平坦になってしまうことです。川底が荒らされて水生昆虫や水生植物の生息も心配されます。国土交通省「川の防災情報」の観測点で川底の高さが変化すると、今まで判断できた水深が全く分からなくなります。音更川に限らず大増水した川は、増水が治まった後にポイントを確認するために釣り回るしかありません。ダメになったポイント、生き残ったポイント、新たにできたポイント、いろいろあるでしょう。自然には勝てないと諦めるしかありませんが、できるだけ川が破壊されていないことを願っています。

 ニジマスの実績
 「東北海道を釣り歩く」 http://www3.ocn.ne.jp/~ryushi/ で、ニジマスの実績を紹介されてから質問や問合せを多くいただいています。良い機会と思い、この際ニジマスの実績を公表します。2011年8月17日現在、北海道でニジマスは80cm以上を10匹、70cm台を22匹釣り上げています。最大は85cmです。80cm以上はミャク釣りで4匹、ルアーで5匹(内1匹は湖ボートトローリング)、フライで1匹です。70cm台は3釣法同じ程度の割合で釣っています。60cm台は数えたことはありませんが、毎年数匹は釣っていますので、釣り歴からかなりの数になると思います。70cm以上はほとんどを川で釣っています。学生の頃から20年位は完全な大物志向で、大物ばかりを追い求めて北海道の各地を釣り回りました。イトウ1m以上、ニジマス・ブラウントラウト・アメマス80cm以上を各魚種2匹以上釣ると決めた目標を達成してから、大物志向の熱はしばらくは冷めていました。しかしそれはほんの少しの期間だけでした。今でも大物を釣りたい衝動が沸々と湧き起こります。多分一生冷めることはないのだと思います。釣る場所の魚は全部釣りたいという気持ちも一生冷めないと思います。

 ケガ
 2011年7月、十勝川上流域で川岸の崖を登ろうとして、久し振りに滑り落ちました。その際、木の枝で顔に4箇所のキズを作り、キズが治るまで見栄えの悪い思いをしています。今まで、上流域や源流域の釣りが好きで危険な場所へも多く行き、それなりにケガをしてきました。骨折して入院するまでには至っていませんが、打撲や捻挫はそこそこに、切り傷は1回に数針の程度ですが合計で30針ほど縫っています。自分ではこの程度のケガで済んでいることを幸運だと思っています。今までのケガで一番の思い出はシイ十勝川でのことです。随分前になりましたが、今でも鮮明に憶えています。単独で釣りに行き川を遡行していると、深い淵の両側に崖がそびえ、北海道で函(はこ)と呼ぶゴルジュが現れました。高い崖ですが幅は狭いので、迂回するのは面倒だと思って崖をよく見ると、水面から4m程の高さに段差があり、それを足場にして進めると思ってしまいました。今考えるとまったく無謀な判断でした。ゆっくり慎重に進みましたが、結局は足場が崩れて深い淵へ落下してしまいました。水中への落下に慣れていたせいか、じたばたしないで足が着く下流まで流されてから立ち上がりました。意外に冷静だったなと、ほっとした瞬間に左肘に激痛が走りました。シャツが肘から手首まで裂けていて血がにじんでいます。腕まくりして確かめると、ざっくりと深い傷がありました。崖から落下した時に岩の先でえぐったものでした。すぐにタオルで止血しましたが、止血の仕方が悪いのか、思ったより傷が深いのか、血は全く止まらずにタオルはどんどん赤く染まっていきます。すると、源流域でたった一人でのこの状況に、急に強い恐怖心が襲ってきました。もう釣りどころではなく、たいへんだと思う気持ち以上に、大袈裟にも出血多量で死ぬかもしれないと思いました。その後は、とにかく必死で川を下り車まで戻って病院へ直行しました。不思議なことですが、川を下っている時にはケガの痛さは全く感じませんでした。再び痛さを感じ始めたのは、車を走らせてもう大丈夫と安心して、やっと気持ちが落ち着いてきた頃からでした。

 朝錬の時期
 新緑の6月を迎えると、十勝地方の平野部の川は本格的な釣りシーズンに入ります。その代表であるニジマスは、豊富なエサを食べて冬に失った体力を完全に回復し、水温の上昇と共に一気に活性が高まります。釣法を問わずに良く釣れる時期です。しかし、最高の時期は長くは続きません。地元はもちろん道内各地からニジマスを狙って釣り人が集まり、ニジマスは徐々にスレてしまい、釣り場は荒れてしまいます。さらに、人口の多い帯広市や音更町から近い川では、時期的な要因で釣れない状況が見られます。2011年の夏至は6月22日で、帯広市の日の出は3時48分、日の入は19時10分でした。夏至の時期は、朝は4時頃から釣りができて、夕方は19時頃まで釣りができます。平日でも仕事前や仕事が終わった後に釣りができます。特に朝は、2〜3時間釣りをして、家に帰って身支度を整えてから仕事へ向かう時間が十分にあります。この平日仕事前の早朝の釣りを、運動部出身の釣り人の仲間内では早朝練習を縮めて朝錬と呼んでいます。実際に釣っている人にとっては本番であり練習ではありませんが、体育会系の人間にとっては、朝練と呼ぶほうがしっくりきます。そういえば、平日夕方の釣りを夕錬とは呼びません。夕方は部活動を行う基本的な時間帯で、わざわざ夕の字は付けません。近くの川へ釣りの練習に行くことがあります。誰にも邪魔されないように平日の早朝や夕方を選んでいますが、釣り人をよく見かけます。頑張っている釣り人は結構いるものです。当然、朝も夕方も入渓されている区間はなかなか釣れません。

□ 小さな講習会
 一年に数回ですが道内の釣りクラブやサークルから釣り講習の依頼があります。メンバーが10名以下で比較的新しく設立された小さな団体からの依頼がほとんどです。小さな団体の講習会では、いつも釣りに行く仲間でお互いに気兼ねがないので、協力し合いながらスムーズに講習が進む良い面があります。しかし、緊張感や集中力がなくなってしまい、講習に悪影響を及ぼす傾向が出やすい面もあります。そこで、小さな団体の講習会では教え方を工夫しています。一つのポイントを一人で釣って、その釣りを全員が見るスタイルで講習を進めます。次のポイントでは釣り人が交代し、それを全員が行っていきます。釣っている人は、みんなが見ているので、適度な緊張感を持って真剣に釣りをしてくれます。見ている人は、自分と他人の釣りを比較させて、じっくり観察し考えることが勉強になります。そして、ポイント毎に釣れた場合も釣れない場合も、何故そうなったかを解説しアドバイスを行います。参加者の中でキャスティング技術が低いなど問題になる人がいた場合は、その人だけ別のメニューを組んで講習を進めることもあります。初めて会う人ばかりで、性格などは全くわからないで教えていますが、少しでも釣りが上手になってほしいと思っています。

 川の中を静かに歩くこと
 源流や渓流の釣りで、絶対にしてはいけないことは、川の中を乱暴にバシャバシャ歩くことです。魚に警戒されることはもちろんですが、最悪の場合、魚はその場から移動していなくなります。釣り講習や初心者の釣りガイドでは、釣りの基本として川の歩き方から教えています。困るのはベテラン相手に釣果を求める釣りガイドの時です。長年釣りを続けて来て、経験が豊富で技術が確かで相当な釣果をあげているにもかかわらず、川の中を静かに歩かない人がいます。今までどのような釣りをしてきたのかを疑いたくなうような残念な場面ですが、今更ながら川の歩き方を教えるのは、本人のプライドを傷つけるようで気が引けてしまい躊躇があります。しかし、私の助言がたとえ釣り人に嫌な思いをさせたとしても、釣りたい人には釣るために必要なことを、信念と勇気を持って伝えています。川の歩き方もそのひとつに過ぎません。釣れる事実が釣り人を納得させてくれると思います。助言しないで釣れないことは、職業釣り師としての務めを果たしていないことになります。そして何より、釣れない釣りに終わってしまった時に感じるあの失望や憂鬱を、味あわせたくはないし味わいたくもありません。私は釣れた時より釣れなかった時のことを良く考えます。釣れない要因に、川の歩き方やアプローチが間違っていることがあります。魚と対峙する前に勝負がついていたのでは、どうにもなりません。

 春が来る前のニジマス
 多くの釣り人は、十勝地方のニジマスの釣りシーズンの開始時期を、春が来て暖かくなって桜が咲く5月頃からと考えていると思います。平野部に位置する川では、それは認識不足であり、実際に違います。平野部では、川に張っていた氷が落ちて水温が5位に上がった頃から、周りの雪が融け出して低水温の雪解け水による増水が始まるまでの期間でニジマスが釣れます。今年(2011年)の十勝地方は、雪が少なかったので3月中旬頃からニジマスが釣れている川がいくつかあります。冬の間に食べることができなかったニジマスは、飢えているので低水温でも良く反応します。そして、低水温では小さい魚は動けずに反応が鈍いので、釣れるサイズは良型が期待できます。決して万全な体調ではなくファイトに物足りなさはあります。しかし、冬の間をずっとニジマス釣りを辛抱してきた釣り人にとっては、すばらしく楽しい釣りです。晴れた気温の高い日の昼頃が狙い時です。十勝地方以外でも北海道には春まで待たなくてもニジマスが釣れる川がたくさんあります。寒さに負けないで、寒さに惑わされないで、釣りに行きましょう。

□ 川の防災情報−2
 時々、十勝地方の川に釣りに行きたので、現在の川の水位を教えてほしいという問い合わせがあります。川はあまりに増水していれば釣り自体ができないし、あまりに減水していれば魚の活性が低くて釣るのが難しくなります。遠方から来る釣り人が、川の水位を知りたい気持ちが十分に理解できるので、分かる範囲で教えています。そして、問い合わせには必ず、私が行っている水位の確認方法を伝えています。川の水位は国土交通省のホームページの「リアルタイム川の防災情報」で確認することができます。URL http://www.river.go.jp/  
 実際に釣りに行って自分が体験した水位や、私のホームページの釣果情報の釣行日の水位を調べておいて、釣りに行く前日の水位と比較すれば、水位の状況が分かり、釣れるかどうかを判断するための重要な要素になります。ただし、濁りの程度がわからないのが欠点です。川の水位観測所に監視カメラが設置されていて、映像で確認できれば最高ですが、その情報を必要とするほとんどが釣り人だけでは、カメラの設置は到底無理な話です。濁りの程度は、その川の濁りの入り方や治まり方を何度か経験して予測するしかありません。

 放流
 もう10年以上経ちましたが、西暦2000年を記念して自然に関係する何かをしたいと思い、ニジマスの放流を行いました。放流先は、私にとって特別に苦労した思い出がある新得町トムラウシ周辺の十勝川上流域です。今までに他の川で数回行った放流と同じに、養殖魚を手に入れて放流するのではなく、自分で釣ったニジマスを放流する計画です。今回は100匹を放流することにしました。釣る川は然別川上流です。生息するニジマスのほとんどが天然魚で数が多く、トムラウシまでの距離が近くて移動時間が短くてすみます。ニジマスを傷つけないように、カエシを潰したハリを使ってミャク釣りで釣り、網に入れて川で生かしておきます。ニジマスの数が揃ったら、クーラーボックスを水槽の代わりにして、電池式の酸素ポンプで空気を補給し、魚を移して運びました。1回に25匹を4回に分けて放流しました。100匹の予定でしたが、結局、あと数日かけて合計200匹を放流しました。その後はずっと、十勝川上流のある流域でニジマスを釣ると、放流した魚の子孫と思われて、顔がほころび、いとおしい気分にひたれます。放流には苦労しましたが、一生続く思いを体験しています。

 不本意
 長年、釣りたい魚を決めて狙って釣りを続けています。そのせいか、狙っていなかった魚を偶然に釣ってしまった時は、うれしさや感動はありますが、その後に必ず本意ではない思いが頭をよぎります。特に、何回も経験した川で狙っていなかった魚の大物を釣った時は、その思いが増大します。その魚が釣れる可能性を予測できなかった事実を考えると、自分の釣りの精度の低さがあばかれたようで、素直に喜ぶことができません。また、偶然に釣った魚は、たとえ経験や知識や技術があったから釣れたとしても、それらに関係なく、その場にいれば誰もが釣れたのではないかと思ってしまいます。釣ったことに感謝して喜んでおしまいにしてしまえば良いのでしょうが、どうしてもそれができません。そこまでシビアに釣りをする必要は無いのかも知れません。しかし、自分の釣りへのこだわりがそれを許しません。これが自分の釣りのスタイルです。川の釣りは、魚、川、ポイントなどの全てを自分が選べる釣りです。妥協せずにどのような状況にも対応できるように努めています。それがかなわなかった時、自分は今まで何を考えて釣ってきたのかと思い情けなくなります。

□ イクラの開発

 2000年に、川釣り用のイクラをアメリカのメーカーから輸入している会社から、イクラの調査と新商品開発への協力の依頼がありました。内容は、当時販売されていた数種類のイクラを使って釣りをして、ニジマス、ヤマメ、オショロコマの3魚種を対象に、それぞれのイクラの釣れ方に順番を付けます。そして、その結果からより釣れるイクラとはどういうものなのかを考えていくものでした。私一人では判断がかたよってはいけないので、延べ10人ほどの釣り人に協力してもらいました。イクラは商品により、色、粒の大きさ、匂い、硬さ、オイルの量、味付けがそれぞれ異なります。調査が進むと、それぞれのイクラの効果と共に、エサ持ちのなどの使いやすさの評価も加わって、魚種別にランキングがはっきりしていきました。そして、調査結果から対象魚全てに効果があるイクラの特徴をまとめました。翌年にはメーカーが数種類の試作品を完成させました。今度は、試作品を使って釣り、短所や長所の結果と改良点をまとめて最終報告としました。さらに、商品の信頼性や販売力が向上するように、どのサケの卵なのか、対象魚の種類、何粒入っているのか、匂いや硬さはどの程度なのかを瓶のラベルに記載するように進言しました。その結果完成したのが、ATLAS・SILVER HARD・シルバーサーモンイクラです。今でもイクラで釣りをしてアタリがいまいちの時は、当時を思い出して、もっと釣れるイクラはないかと考えることがあります。

 ヒグマ
 北海道の川や湖で最も危険な野生動物はヒグマです。ほとんどの地域で、自治体の中心都市から車で30分も走るとヒグマの生息域に入ります。2010年6月5日に、十勝地方で山菜採りに行った女性がヒグマに襲われて亡くなりました。現場は帯広市の中心部から25kmほどしか離れていない雑木林でした。ヒグマ対策は、音を出して人間の存在を先に彼等に知らせることが最も重要です。昔から行っているのは、鈴を鳴らし、ホイッスルを吹き、爆竹を鳴らすことです。最近は携帯用防犯ブザーも利用しています。時々あの甲高い電子音を鳴らしています。特にヒグマが多い地域へ行く時は、襲われた時に生き残る最終手段として、ナタや熊撃退スプレーを携帯します。携帯すると丸腰よりはるかに安心感があります。しかし実際は、ものすごい恐怖の中で身長2m体重300kgに達するヒグマを相手に、ナタで立ち向かえるとは考えていません。熊撃退スプレーは噴射距離が5〜6mです。近寄ってくるヒグマとの距離を冷静に判断し、正確にヒグマの顔をめがけて噴射する自信はありません。ヒグマに襲われたら、まず命はないと考えています。

 体重を乗せる

 野球のピッチャーの投げるボールの球質に軽い重いがあることを、子供の頃に夢中で見たテレビアニメの巨人の星で初めて知りました。主人公の星飛雄馬は剛速球投手ながら、当たれば遠くまで飛んで行く軽い球質で挫折しますが、努力と根性で大リーグボールという魔球を身につけて活躍します。フライフィッシングでもある時期から、フライラインの質に軽い重いがあることを感じています。体重が乗った時のフライラインは風を切り裂いて勢いよく伸びて行きます。ラインスピードだけでは語れない何かがあります。そして、体重を乗せるためのキャスティング技術が確かに存在します。重要なのは体重移動と腕のストロークです。体重移動はテニスのフォアハンドが参考になります。腕のストロークは、変わった例えですが、演歌歌手の五木ひろしが歌う時に行うあの粘るような腕の振りが参考になります。フライラインに体重を乗せることができれば、フライフィッシングがいっそう楽しくなり、釣るための強力な武器になります。

 応急処置・ミャク釣り
・ ウェーダーやウェーディングシューズの底のフェルトが剥がれかけたら、自分が履いている靴下を脱いで、それらに履かせます。フェルトにはかないませんが意外に滑りません。一足分(2枚)を履かせても良いし、反足(1枚)を履かせてダメになったら交換してもOKです。耐久性に問題がありますが、その日の釣りくらいはもちます。

・ マルチレングスでない延べ竿を短くして使いたい時は、まとめた竿と延ばしている竿の接続部分がぐらつくので、ビニールテープを巻いて固定します。ビニールテープはあらかじめ竿に巻いておくと便利です。
・ 延べ竿の先を折ったら、予備のリリアンを用意しておいて、竿先に差し込んで瞬間接着剤で固定すればOKです。リリアンを持っていない時は、適当な長さに切ったミチイトを竿先に巻いてコブを作り瞬間接着剤で固定します。そのコブのすぐ下に仕掛けを結べばコブがあるのでスッポ抜けません。瞬間接着剤がなければ、コブ自体が竿先からスッポ抜けることがあるので、その場合はコブをできるだけ細長く作るしかありません。また、適当な長さに切ったミチイトの先を2重にして8の字結びを作ります。その部分をリリアンのように竿先から余しておいて、残りのミチイトを竿先に巻いて瞬間接着剤で固定してリリアンとして使います。これも瞬間接着剤がなければスッポ抜けることがあります。瞬間接着剤は必需品です。

・ 延べ竿を中間から折った時は竿をばらして処置します。竿先から4番目の節を折ったとします。4番目は折れたので5番目の先より細くてなりこのままでは抜けてしまいます。そこで、4番目を5番目の中に入れて折れた部分を5番目の下から出します。折れた部分の4〜5cm幅に、ミチイトを巻きつけて抜けないように太くしていきます。デコボコにならずに平行に巻くことが大切です。最初から何段も巻かずに、時々竿を伸ばして引っかかり具合を確認しながら調整して巻いていきます。力を入れても抜けない太さになったら、ほどけないようにしっかり留めて完成です。巻いたミチイトがずれそうなら瞬間接着剤で固めます。

 感覚
 随分前から、釣りをしている時に集中力がどんどん高まり感覚が研ぎ澄まされていくと、相反する2つの世界を経験しています。音が大きく聞こえる世界と音の無い世界です。両者ともに、その世界に入っている時は、その感覚を意識できていません。音が大きく聞こえる世界は、音が普通に戻った時に音が大きく聞こえた時間が確かにあったことを意識します。音の無い世界も、再び音が聞こえ始めた時に音の無い時間が確かにあったことを意識します。そして、どちらの世界も体験した後は、自然と一体になったようなとても静かな気持ちの良い感覚の中にいます。

 フライタイイング
 私がフライフィッシングを始めた1975年頃は、自分で巻いたフライで釣ってこそフライフィッシングの醍醐味があり、その感動は計り知れないと、洗脳されるように教えられていた時代でした。釣具店にもどこにも完成フライは売っていなくて、自分でフライを巻くしかない時代でもありました。タイイングツール、マテリアル、フックと教本を買い込んで、見よう見まねで一生懸命に巻きました。初めて巻いたフライで釣った時は感動はありました。しかし、その感動は想像していたような凄さは全くありませでした。当時から、釣ることが感動の全てで、釣りに至るまでの過程を忘れてしまう性格でした。世の中に反抗することが、自分を主張する手段だと考えていた年代でもあります。フライは必要だから巻くのであって、巻くこと自体が格別に楽しいと思っていませんでした。それでも、自分が思い描くフライを完成させる達成感と実際に釣る楽しみをたよりに、10年位は真剣にフライを巻き続けました。元来手先が器用なこともあり、釣れるフライを巻けるようになりました。その後、完成フライが釣具店の店頭に並び始め、国内や海外の通信販売やネット販売が増えて、安価で完成度の高いフライが容易に手に入るようになりました。サービスは充実し、希望するフライを作成してくれるまでになりました。私には良い時代が到来し、今ではフライを巻くことはめったにありません。また、釣ることよりもフライを巻くことに熱中している皆さんから、毎年フライが送られて来ます。北海道の天然魚に効果があるかどうか試してほしいと希望されます。当然試して、状況や意見を伝えています。すると、改良型が送られてきます。すばらしいフライに仕上がっています。最後に増田さんにお礼を申し上げます。長年にわたりフライを作成していただき、有難うございました。今まで使ったMSCの中で最高の釣果をもたらしてくれました。闘病中のためフライを作れないと連絡をいただきましたが、ご快方に向かわれることを願っています。

 川の防災情報
 川の水位や雨量を調べるために国土交通省のホームページの「リアルタイム川の防災情報」を利用しています。その中で、河川の水系名や河川名が間違っていることがあります。以前から気になっていたので、関係機関に問い合わせを行いました。今回は茶路川の件で、茶路川の水位を確認すると、表示される水系名と河川名が和天別になっています。2010年2月25日に国土交通省へはメールで、釧路土木現業所へは電話で問い合わせを行いました。お役所仕事で返事が来るまで時間が掛かるだろうと思っていたら、次の日に連絡がありました。迅速に対応してもらい、満更でもないなと感心しました。結果はやはり間違いでした。茶路川の他にも誤った表示があり、訂正すべく現在処理中なので、しばらくお待ちくださいとのことでした。訂正まではどれくらい時間が掛かるのでしょう。興味を持っています。

 ギリギリ
 ロッドやラインを、魚の大きさに対して弱いスペックにして釣ることが好きです。特にミャク釣りで、60cm以上の大物を相手に、竿やミチイトを、あえて釣り上げられるギリギリのスペックにして挑みます。気を抜けばすぐにやられてしまいます。魚を掛けた瞬間から背筋がぞくっとして、全身に冷や汗が流れ、魚の出方を予測しながら、常に魚の先手を取らなければならない状況に身をおいて、緊張感でアドレナリンを噛みしめながら、感性と技と経験を駆使してもなお、必死に動きまわらなければならない釣りです。一度経験したら、きっと病み付きになります。長くて強くしなやかな本流竿を使い、リールが存在しない、つまり魚との距離が決まっているミャク釣りでこそ最大の魅力を感じます。いろいろな釣りをしていますが、その釣りでこそ最大限に魅力を発する領域が確かに存在します。

 水の底
 私は釣りの道具を、釣り場に置き忘れたり、落として無くしてしまったことがめったにありません。しかしロッドやリールが川や湖に沈んでしまったことはあります。30年位前の話を含めて、今も強く印象に残っている出来事を少し紹介します。
・ 然別湖をゴムボートでトローリングしていた時です。2の湾から1の湾へ向かう途中で、ボートの方向を変えたとたんに強いアタリがありました。その時、ロッドとラインは角度がなく一直線の状態でした。あっと思った瞬間に、魚にロッドを水中へ持っていかれました。ロープでロッドとボートを結んでおかなかったことが悔やまれます。フェンウイックのロッドとアブ・カーディナルのリールが湖の底へ消えました。

・ 阿寒湖をプレジャーボートでトローリングしていた時です。ロッドを2本出していました。1本はロッドホルダーに固定し1本は手に持ってアクションを加えていました。ヤイタイ島付近で固定したロッドが根掛かりしたので、ボートを止めてからまず手に持っていたロッドのライン回収を始めました。その間もボートが移動し、根掛かりしたロッドが折れそうに曲がったので、ライン回収を途中でやめて、根掛かりしたロッドの対応を優先しました。すると、後ろでガタガタと音がしてバシャと音がしました。振り返ると、先ほどまで手に持っていたロッドが水上を走り、水中へ引き込まれていくのが見えました。途中で回収をやめたルアーに魚がヒットしていました。フェンウイックのロッドとアブ・アンバサダーのリールが湖の底へ消えました。
・ 糠平湖をカヌーに乗ってルアーで釣っていた時です。友人と二人でした。体を伸ばして休憩しようと思い、カヌーをめがね橋の近くに寄せました。私だけが岸にあがり、友人は再び湖へ漕ぎ出しました。のんびり湖を眺めながらタバコを吸った後にカヌーに目を向けたら、何とカヌーが転覆して友人がしがみついています。あわてました。友人はカヌーにしがみついたまま、足をバタつかせて何とか岸までたどり着きました。シェークスピアのロッドとミッチェルのリールが湖の底へ消えました。
・ 釧路の雪裡川を釧路川の合流までカヌーに乗ってルアーで釣った時です。友人と二人でした。雪裡川の支流にカヌーを浮かべてくだり、雪裡川に入って釣りを始めて間もなくのことでした。速い流れに乗ってしまい、まずいと思った先に大きな倒木がありました。避けようとしましたが、倒木にぶつかってあえなく転覆しました。私はカヌーにしがみつきながら岸にたどりつき、友人は泳いで岸にたどり着きました。二人とも必死でした。危うく命を落とすところでした。スミスのロッドとシマノのリールが川の底へ消えました。
以上の場所で、奇跡的にロッドやリールを釣った方がいたら連絡してください。引き取ってきっとお礼します。

 冬の変化
 長年書き綴っている釣り日記を読み返していると、十勝地方の冬がだんだん短くなり暖かくなっているのが分かります。10月を少し過ぎても、川でヤマメが普通に釣れるようになりました。11月初旬に上流域で、ドライフライにオショロコマが素直に反応してくることが多くなりました。平野部の川では、12月に入ってもニジマスが釣れることが多くなりました。十勝川河口では12月下旬にチカやキュウリの氷上釣りができましたが、ここ数年は結氷が遅れて1月上旬にやっと氷に乗れるかどうかという状況です。湖や沼の結氷が遅れて、ワカサギの氷上釣りの開幕が遅れ、終了時期は早まって釣れる期間が短くなっています。1月〜2月の厳寒期でも、川が凍らない区間が残りアメマスが狙いやすくなりました。雪解けと増水が早く治まって、春の釣りシーズンの開始が早まっています。個人的には、川や湖でサケ科の魚を狙う釣りが好きですから、良い傾向に推移しているといえます。しかし、あまりに変化が激しいと心配になります。

 熊よけスプレー
 2008年の夏に熊よけスプレーでちょっとした事件がありました。石狩川上流で釣りをしていて、ポイントを移動しようと車に戻り、ハッチバックを開けたとたん、薬臭いのに気がつきました。かるく刺激もありましたが、何の臭いかはさっぱりわかりません。変だと思いながら、釣具を透明なケースに入れようとしたら、ケースの内側の一部分がオレンジ色に染まっています。何だろうとケースの蓋を開けたとたんに、ものすごい刺激臭です。あわててケースを車から出して中を調べたら、熊よけスプレーの液体が全て噴射されていました。林道を移動中に、振動の影響でストッパーが外れて、スプレーの上に置いてあったウェーディングジャケットの重みで噴射スイッチが押されたようです。臭いと色の正体は、熊よけスプレーの唐辛子エキスでした。すぐにケースを川へ持って行って、唐辛子エキスが付いた全ての物を洗って、ゴミ袋を三重にして中に入れて密封しました。車に戻ると、少しケースを開けただけなのに、唐辛子エキスの刺激が残り、涙は出るは、鼻水は出るは、咳き込むはでたいへんな目に遭いました。幸い、車の臭いは窓を全開にして走ったら治まりましたが、手に付いた唐辛子エキスの影響で、手は痛いほどにヒリヒリして、この辛さは深夜まで続きました。これなら熊も確実に逃げるだろうと、その効果を自らが体験した訳です。もし、ケースの蓋がしっかり閉まっていなかったら、車はどうなっていたのかと思うとぞっとします。翌日、唐辛子エキスが付いた釣具を、キッチン用洗剤で洗うときれいに落ちました。しかし、ウェーディングジャケットだけは苦労しました。キッチン用洗剤で洗い、洗濯用洗剤で洗い、酸素系漂白剤につけても、オレンジ色と臭いが残ります。オレンジ色はジャケットの内側だったのでさほど気になりませんが、臭いは我慢ができません。いっそ捨ててしまおうかと思いましたが、考え直してクリーニング店に頼むことにしました。洗ってはみるけれど、上手く落ちるかどうかは分からないと言われ続けました。やっと5軒目で、いろんな方法で洗って上手く行かなかった場合は料金はいらないと言ってくれる店がありました。任せたところ、オレンジ色は薄くなり、臭いは完全にとれていました。まだ職人はいると感激し、その仕事ぶりに感謝しました。

 持ちすぎ
 物凄い数のルアーを持って釣りをしている人を見かけます。フィッシングベストやバッグはパンパンです。とても重そうですし、実際に重いでしょう。いつも思いますが、それだけの数のルアーを一日で使い切れるものでしょうか。私には無理ですし、何より不必要なルアーで重くなるのが嫌です。初心者なら、有効なルアーを選択することは難しいので、全てを持って釣りをするのはわかります。しかし、経験者は考えた方が良いと思います。対象魚と川の状況によって、明らかに不必要なルアーがあります。極端な例ですが、小渓流でヤマメを狙うのに25gのスプーンは使わないでしょう。対象魚と川の状況に合わせて、有効なルアーを選択すること、考えることは非常に重要です。ルアーに限らず、釣りは考えることが重要です。何も、徹底して必要と不必要に分けなさいとは言いません。もしかしたらと思えるルアーは持っていってください。分かっていながらも、全てを持って釣りたい方には迷惑な話でした。そういえば、物凄い数のフライを持って釣りをしている人もいます。

 信じない
 「魚がライズを繰り返している中、いろいろなフライを流しても全く無視されて、最後に結んだフライをあっさりくわえた、このフライはすばらしい」という話を聞きます。このような話で、はたしてフライの機能を何の疑いもなく信じても良いものでしょうか。ライズがあるということは、魚に食い気はあります。無視されたフライには、魚が気に入らない何かがあり、いろいろ試した結果、最後に魚の好みに合ったフライに行き着いたと理解することはできます。しかし、重要な要因が欠けています。まず。釣り人の技術と判断です。フライの落とし場所や流し方は最善だったのでしょうか。これを誤ると釣れるものが釣れなくなります。単にフライの選択順番を誤っただけではないでしょうか。次の要因は時間です。大概の場合、フライを無視され続けた時間が1時間以上もあります。それだけ経てば、気温・水温・光量など川の状況が変化します。最後のフライを流した時に、魚の活性が急にあがっていて、食ってきたのかも知れません。フライの機能だけを素直に信じられるほど、やさしい釣りをしてきていないので、疑い深くなってしまいました。ただし、このようなフライを知ると、どうしても試さずにはいられません。

 目を閉じる
 ミャク釣りで、目を閉じて仕掛けを流すことがあります。アタリが目印には出なかったけれど、絶対に何かがエサに触ったと感じた後に、その流れを狙う時はよく目を閉じます。川底をギリギリに流せていないと感じた時も目を閉じます。目を閉じると、暗闇の中で瞬時に手の感覚が研ぎ澄まされ、神経が集中するのを感じます。竿から伝わるかすかな振動を、少しも逃さずに捉えることができます。この技は、長い距離を流す本流竿の大物釣りには特に有効です。少々コツが必要ですが、習得は難しいものではありません。目を閉じてうつむきかげんに竿を構えてアタリを取ります。その格好は勝新太郎の座頭市が、仕込み杖をすっと目の辺りに持っていき、敵に対峙する姿をイメージしています。仕込み杖は下向き、竿は上向きですが、動きに何ら変わるところはありません。イメージできない方は、勝新太郎の座頭市シリーズを全て見てください。きっと、何かをつかめると思います。

 南部熊鈴
 たいへん愛着のあった南部熊鈴の2連の鈴のひとつを失くしてしまいました。2007年の秋に、別寒辺牛川でホザキシモツケの密集地帯を通り抜けた際に、下の鈴が枝に絡み皮ごと引き千切れたようです。釣りが終わってから、失くしたことに初めて気がつきました。この鈴は、10年前に釣り雑誌の広告で見つけて一目ぼれして、すぐに日高の釣具店から取り寄せたものです。初めて持つ南部熊鈴でした。形状は幅1cm全長26cmの皮紐に上部はベルト通しの輪があり、下部に真ちゅう製の鈴が縦に2個付いています。手作りの趣きと音色が美しいすばらしい鈴でした。長年使ったことで皮は黒ずみ、所々にヒビが入って切れそうなことはわかっていました。皮の裏にもう一枚皮を張って補強しようかと思いました。しかし、数々の釣りの思い出が刻まれ、いい感じに古びたなんとも言えない雰囲気を壊したくはありませんでした。鈴がひとつになって使い続けるかどうか迷いましたが、結局は新しい鈴を買いました。すると南部熊鈴は驚くほど進化していました。革幅が4.2cmもあり全長は16cmです。これならめったなことでは引き千切れることはないでしょう。高級皮を使っていて色は黒を選びました。まるでバックナイフのケースのようです。鈴は2連で、真ちゅう製で大きさや形状はあまり変わりません。美しい音色は相変わらずですが音程が明らかに高くなっており、それぞれの鈴は音程が異なっています。確実に遠くまで響きそうな音です。ただし、ひとつだけ気に入らない点があります。ベルト通しがスナップで開閉しますが、ヤブ漕ぎが多いのでスナップが外れて失くす可能性があります。私にはしっかり固定してくれた方が安心です。先代の鈴を失くした時はたいへん落胆し、失くすくらいなら補強しておけば良かったとまで思っていましたが、今は2代目をたいへん気に入っています。先代は思い出として大切に保管しています。

 戒め
 魚がいれば釣れると思っている人がいます。魚がいても釣れない人がいます。釣れなければ魚がいないと思っている人がいます。少しやれば、すぐに釣りは上手になると思っている人がいます。レベルの基準がわからず、自分は釣りが上手だと勘違いしている人がいます。間違って釣れたのを、釣ったと勘違いしている人がいます。経験と技術は正比例すると思っている人がいます。なぜ釣れるのか、なぜ釣れないのかを考えない人がいます。魚の生態を学ばない人がいます。天候やフィールド状況を考えない人がいます。大物を1匹釣っただけで、大物釣りを語る人がいます。真の大物狙いを理解してくれない人がいます。技術がないのに理屈だけ一人前の人がいます。格好だけや道具だけ一人前の人がいます。平気でポイントに割り込む人がいます。平気でゴミを捨てる人がいます。釣りの奥深さを理解してくれない人がいます。これらは他人事ではなく、自分への戒めと思っています。

 十勝川のイトウ
 2007年の暮れに昔の十勝川を知る老釣師と酒を飲む機会があり、当然のようにイトウの話が出ました。ドジョウ引きで1m以上を釣った話からルアーフィッシングへの変遷など、自慢話を交えながら昔を懐かしんで大いに盛り上がりました。そう言えばもう10年近く十勝川でイトウを狙った釣りをしていません。年々棲息数が減少し今では絶滅寸前の状況です。稀に釣れたという話は聞いています。そこで、自分の目で確かめてやろうと思います。最悪の状況ですが、この冬から来春の雪解けまで、十勝川の新得町〜千代田堰堤の間でイトウを狙います。過去にイトウが釣れたポイントはわかっていますが、今はどうなっていることでしょう。まずはポイント探しから始めなければなりません。そこで協力者を求めています。積雪の中を川まで歩いて行きポイントを確認しなければなりません。厳寒の中で釣れない確率が非常に高い厳しい釣りになります。興味のある方は連絡をください。ずるい誘い文句ですが、イトウのポイントは即ち大物ニジマスのポイントでもあります。

 ゆっくりできない
 川原に車を止めてテーブルや椅子を出して、ゆっくりたたずんでいる釣り人をよく見かけます。コーヒーを沸かして飲んでいたり、食事を楽しんでいます。釣りを通して自然に親しむスタイルなのはよくわかりますが、私には無理です。随分前に一度コールマンの道具を買い込み、このスタイルを試みましましたが、どうしても馴染めませんでした。道具は家のどこかに埃を被って眠ったままです。特に一人で釣りに行った時は完全に自分が出ます。私はできれば一日中釣りをしていたいと思っています。ただ、集中や緊張がとけた時や疲れきった時は、仕方なく少し休憩を取ります。お腹が減っている時は、歩きながらおにぎりを食べています。時間がもったいなくてゆっくりできません。釣らなければならない魚やポイントが私を待っています。ゆっくりするのはもう少し年をとってからにします。まだまだ釣りたくてしょうがありません。

 山菜とキノコ
 山菜やキノコを採りに行くことはありませんが、川へ釣りに行って見つけると嬉しくなって採ってしまいます。知っている種類といえば、山菜はフキ、ヤチブキ、ワラビ、ギョウジャニンニク、ゼンマイ、コゴミ、ウド、タラの芽で、キノコはボリボリ(ナラタケ)と落葉キノコ(ハナイグチ)ぐらいなものです。キノコは知識がなく危ないので、はっきり分らなければ採りません。山菜で印象深いのは、ギョウジャニンニクを初めて見つけた時です。アイヌネギと呼んでいました。川近くの林の中に一面に生えていました。試しに茎を折って匂いを嗅いでみいたところ、あの独特のニンニク臭さがあり間違いないと思って沢山採りました。ビニール袋に入れて車のトランクで持ち帰りましたが、まさかあれほどトランクに匂いが付くとは思っていませんでした。しばらくの間なかなか匂いが取れなくて困りました。キノコで印象深いのはボリボリです。源流域で川に横たわった大きな倒木にびっしり生えているのを見つけました。菌が付いた木が倒れて流れ着いたようでした。もちろん採って持ち帰りました。歯ごたえといい味といい、今までで最高においしいボリボリでした。今でもあれを超えるボリボリには出会っていません。釣りに行って目的のポイントの近く車があると先を越されたかと思いがっかりします。しかし、それが山菜やキノコ採りだと分るとほっとします。