いい感じに熟して食い頃だぜ

リボーンの17歳の誕生日。
山本は上機嫌でリボーンの部屋の扉をノックした。



絶賛成長期中のリボーンはここ二年で急激に身長が伸びた。
さすがに山本までとはいかないが、既にツナの身長を抜かしている。
現在は獄寺を抜かそうと毎日カルシウムを摂取しているようだ。
もちろんリボーンの口から聞いたわけではなく、リボーンを身近で見ている山本の推測なのだが、
とりあえず毎日の牛乳の摂取量から察するに間違ってはいないだろう。
すらりと伸びたしなやか手足。
これから完成される伸びやかな肉体は、まだ十分に少年と言える筋肉の付き方をしている。
かための黒髪の下には始終不機嫌そうな眼差し。
満面の笑顔でも浮かべれば、百人中全員が振り向くだろう硬質な美しさを持った少年。
下手に悪い虫がつくと困るので、この不機嫌顔には山本は大賛成だった。
近づく男も女もこの鋭利な刃物のような鋭い眼差しで遠ざけてくれるとなお良い。

「機嫌悪そうだな。リボーンのための誕生日パーティーだったんだろ」
今の今までボンゴレの幹部連中に捕まって、バースディパーティーに強制参加させられていたらしい。
リボーンからほのかに酒とタバコと甘いケーキの匂いがする。
山本はリボーンのバースディパーティーには仕事の都合で間に合わなかった。
「本番は明日のツナのパーティーだ。俺のは前夜祭みてぇなもんだ。
飲んで騒ぎたい理由に人を使うんじゃねぇぞ」
「そういうなよ。みんなリボーンの成長は嬉しいんだぜ。
大体、誕生日でなきゃリボーンはそういう席に滅多に参加しないだろ」
「面倒だ」
「素直じゃねぇな。成長をまわりの人間に喜ばれて照れくさいだけのくせに」
リボーンはツナに『あの生意気な赤ん坊が大きくなったね」と子供扱いされることを嫌う。
もちろん、アルコバレーノのリボーンを子供扱いする人間は限られている。
そんな怖い者知らずな人物はツナと山本しかいない。
精神的には大人のリボーンだ。肉体年齢が若いことで、侮られるのがひどく不愉快らしい。
「ツナにだって悪気はないんだぜ」
「あいつは俺が不機嫌になるとわかっていてしつこく言いやがる。どこが悪気がねぇんだ?」
鋭い眼光で睨まれて、山本は苦笑する。
「不機嫌になるリボーンが可愛くて仕方ないんだろ。俺だってそういう時のリボーンは可愛いと思うし」

リボーンは無言で山本を睨み付ける。

あ〜その目が俺にはやばいっていい加減に理解してくんねぇかな。

怒りに染まった鋭い眼差しは艶っぽい。
そんな目で睨まれるとゾクゾクとした快感に似た震えが背筋を走って、嬉しくなってくるのだ。
怒りのせいでうっすらと頬が染まるのも反則技のひとつだとも山本は思う。
色気が倍増だ。
普段のリボーンの鉄面皮も自分の前では崩れて感情豊かになる。
その特別だという優越感と悦びに、衝動的に真正面から抱きつきたい衝動に駆られるが、
そんなことをすれば殴られるのは経験済みである。
色々と脳裏に浮かぶイケナイ考えを顔に出さずに、山本は人懐っこく爽やかに笑った。

「怒るなよ。パーティーに間に合わなかったのは仕方ないだろ。俺がいなくて寂しかったのはわかるけど」
「寝言は寝ながら言え」
一刀両断の言葉だが、この程度のことで落ち込む山本ではなかった。
「俺だってバースディーケーキのロウソクを吹き消すリボーンを見たかったんだぜ」
「見なくていい」
「どうせハルにお願いされて、嫌々ながら吹き消したんだろ?」
にやにや笑いながら言うと、さらにリボーンの機嫌は低下していく。
イタリアの男は女性に優しい。まして昔からの知り合いのハルにねだられては、リボーンも無視することができない。
ちなみにリボーンが嫌々ロウソクを吹き消すのは毎年恒例行事になっており、
ツナが発案した『ハルのおねだり大作戦』が現在連勝中のようだ。
「今年は見逃したか。すっげえ残念だ」
「山本は俺に殺されたいのか?」
ゴリッと顎先に冷たい塊を押し付けられた。黒光りする鉄の塊に山本は苦笑する。
「悪かった。ちょいからかい過ぎた」
さすがに誕生日を祝いに来て、門前払いをされるのは遠慮したいので、山本は話題を変える。
「なかに入れてくれ」

現在、日付が変わるぎりぎりの時間である。

「それはなんの冗談だ」
ふとリボーンが告げる。
「それ?」
「山本の首に巻いてあるふざけた青いリボンだ」
「俺がリボーンの誕生日プレゼント」
「いらねえぞ」
間髪入れずの受け取り拒否だったが、リボーンは山本に背中を向けて室内へ入っていく。
入るなら好きにしろとのことらしい。
「本命は手に持ってるヤツだろ。それならもらってやる」
山本の左手には同じく青いリボンを巻いたワインの瓶がある。
希少価値の高い赤ワインで、以前からリボーンが飲みたがっていた物だ。
「本命は俺の方だけど」
「間に合ってる」
「ひでぇな。もう俺にあきたってことか?」
「三十代の男がわざとらしく泣きまねするんじゃねぇぞ」
露骨にリボーンはあきれたため息をつく。
「男は三十代から。いい感じに熟して食い頃だぜ」
「食いあきてるぞ」
痛恨の一撃。がっくりと山本はその場に膝をつく。
「おい。落ち込むなら俺の見えないところでやれ」
「冷たすぎるぜ。リボーン」
「でかい図体が部屋の中央にあると鬱陶しいぞ」
「そんな冷たいリボーンの態度が今じゃ癖になってやめられないけど」
「頭の病院に行っておけ」
すげなく言い捨てられるが、つれないリボーンの態度に本気で落ち込んでいるようでは、
リボーンとの付き合いは続けられない。恋人になってから、山本は日々打たれ強くなっていた。
「やばい。日付が変わっちまう。17歳の誕生日おめでとうさん。ワインと俺がプレゼントだ。受け取ってくれ」
両手を広げて、俺の胸に飛び込んでこいと言わんばかりの山本を、リボーンはとても冷ややかな態度で眺めていた。
部屋の中に広がる沈黙が山本には切ない。
やがてするりと山本の手からワインが抜き取られる。
「こいつは喜んで受け取っておく」
「俺は受け取り拒否なわけ?」
「山本はアホか」
ふと首に巻いてきた青い布がリボーンの指によって解かれた。
己の指に絡んだ柔らかな青いリボンにそっとリボーンはキスをした。
流れるような甘い仕草。魅入られるように山本はリボーンを見つめる。
いつものキスをする時の距離間。
間近にある唇にに刻まれたわずかな笑みが蠱惑的で息を飲む。
誘惑されているような錯覚に眩暈に似たものを覚えて、リボーンの体をかき抱きたい凶暴な気持ちが心の中に生まれた。
「リボ……」

「なんで今さら山本をプレゼントされなきゃならねぇんだ?」
「へ?」

「最初から俺のもんだろ」

囁かれた甘い言葉に、唇ではなく顎先に触れた柔らかい感触。
「三十代の男の熟して食い頃の手並みを見てやろうじゃねぇか」
「おまっ……なんつう誘い方すんだっ!」
真っ赤になって山本は脱力する。
「嬉しいだろ?」
にやりと壮絶にきれいで、そのくせ絶対になにか裏があるじゃないかと思わせる意味深長な笑みを浮かべる。
自分の腕で抱き潰してしまいたいと凶暴な思いが芽生えるほどに魅力的だ。
心に沸き上がった欲求のまま、山本はリボーンを抱き締めた。


「好きだぜ。リボーン。17歳の誕生日おめでとう」






















山本とリボーンが付き合いはじめると主導権は確実にリボーンが握ってると思われる
そして遠慮なくリボーンが山本を口説きそうな勢いがあるような気がする
なにせ精神的にはリボ山傾向が強いですから
山本のことを可愛いヤツだとリボーンが思っていれば良い
そんな妄想を塗り込めた(笑)17歳リボーンの誕生日です
もちろん山本もリボーンのことはめちゃくちゃ可愛いと思ってますよ


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ひたま