アルバムレビュー
華原朋美


「LOVE BRACE」 (1996.6.3) ★★★☆
1.LOVE BRACE [overture] 2.Just a real love night 3.keep your self alive[more rock] 4.Living on…! 5.I BELIEVE[album earth mix] 6.summer visit 7.MOONLIGHT 8.I'm proud[full version] 9.Somebody loves you 10.LOVE BRACE 11.I BELIEVE [play piano]

  まさに小室サウンドのオイシイところだけを抽出して 作られたと言っても過言ではないアルバム。力入りまくり。シングル4曲のほかにも 冒頭「Just a real love night」「Living on…!」「summer visit」「Somebody loves you」と、 おいおい少しほかの人に分けてやれよ、ってぐらいの楽曲が並ぶ。 これだけ力を入れてもらえるってのはやっぱ正妻の特権ですな。 そんな小室の寵愛を受け、トモちゃんも非常に伸び伸びと、楽しそうに歌っております。

  コンセプトはもう、ズバリ小室とトモちゃんのラブストーリーでしょうなあ。 「Just a real love night」で出会って、つらつら惚気つつ「MOONLIGHT」で一旦オトし、「I'm proud」がクライマックス。 「Somebody loves〜」でめでたしめでたし、「LOVE BRACE」がエンディングロールと。 まあ、かなり臆面ないし、ブックレットに2人のいちゃついてる写真とかまであって、 おいおい、って感じだけど(笑)、いいんです。これはそういうコンセプトのアルバムなんだから、 とことん徹底した方がいい。「MOOLIGHT」「Somebody loves〜」辺りの歌詞はさすがに馬鹿っぽい 感じだけどね(笑)。でも、繰り返すけど、「そういうコンセプトのアルバム」なんで、OKです。

  で、冒頭にも書いたけど、楽曲の方はほんとに小室サウンドの粋を結集、 って感じです。あまりに完璧すぎて、シングルの「I BELIEVE」は地味なリアレンジで実験しちゃうという余裕も。 同時期に出たglobeの1stもそういう所があったけど、あっちの方はもうちょっと小室自身の 野心を感じるというか。このアルバムはもっと、「トモちゃんのために」という献身的なものを 感じます。一言で言うと「愛」、ですかねぇ(笑)。「I'm proud」なんて名曲も、 「どういう曲ならトモちゃんが輝けるか」っていう一心で生まれた曲ではないかと思える。 このアルバムとglobeの「globe」、安室の「SWEET 19 BLUES」って全部同じ96年に出たんだけど、 なんかもう3種の神器っていうか、よくわからんけどそんな感じで、今思うと凄いです。


「storytelling」 (1997.7.24) ★★
1.save your dream[album mix] 2.Every morning 3.afraid of tonight 4.たのしく たのしく やさしくね[album version] 5.You just gonna sing a song 6.I wanna go 7.LOVE IS ALL MUSIC[new mix] 8.storytelling [instrumental] 9.Hate tell a lie[album mix] 10.You don't give up 11.afraid of tonight [TK mix] 12.たのしく たのしく やさしくね [TK remix]

cover   小室哲哉という人は、飽きやすい人だ。それはTMネットワーク時代から脈々と続く 彼の傾向で、実際TMのアルバムは、ダンスだったり歌モノだったりロックだったりハウスだったりと、 一作リリースするごとにまるで作風が変わっていたものだった。それはプロデュース業を始めてからも 変わらないようで、担当するアーティストのほとんどにおいて、最初のうちは異様に力入ってるのに、 いきなり実験に走ってダメダメになり、最終的には斬り捨てる、 みたいな事になっている(globeと安室は例外)。 その典型的な例が、このアルバムです(笑)。

  めちゃめちゃ力入ってた名曲揃いの1st「LOVE BRACE」に比べて、このアルバムは あまりにもお座なりな作りに思える。だいたい、インストとかリミックスとか既発シングルとか繋ぎ的な 「afraid of tonight」抜いたら新曲4曲しかないし。てか、 曲数以前に楽曲のクオリティが、どうにも。トモちゃん、歌が急激に 下手になってないか、これ?それとも「たのしく たのしく やさしくね」みたいな、どう歌っても下手に しか歌えないような怪作を歌わせる小室が悪いのか。どうも、この後に出たこれまた奇怪なデジロック ナンバー「tumblin' dice」なんかを聴くに、やはり責任の所在は小室にあるような気がする(笑)。 とどめのように謎のレゲエナンバー「daily news」を歌わせられるトモちゃんの悲壮な姿は、 はっきり言って見てられなかったぞ。

  かろうじて「save your dream」「YOU DON'T GIVE UP」ぐらいかな、好きなのは。 「save your〜」辺りは、前作「LOVE BRACE」の後に出た最初の新曲だったんで、まだ力入ってるかな と思う。まんまアラニス・モリセットな「Hate tell a lie」も、サウンドやメロは悪くないけど いかんせん歌詞が意味不明すぎ。「ほら そこの飲んだくれ 飲みすぎなあの子を助けて」とか。わけわかめ。 「Hate get pill」って何??クスリを飲むな、ってこと(おいおい)? 「たのしくたのしく〜」も前述したとおり歌いだしからいきなり転調する文句無しの怪作だし、「LOVE IS ALL〜」も 壮大っぽい管弦オケに乗せて突如サビが「♪ララララー」になってしまう問題作だ。

  「Every morning」は序盤はなんか良さげに始まるが、最後まで聴くと「メロ2つだけかよ!」と 三村風に突っ込みたくなる1曲。 「You just gonna sing〜」も、「あなたはあなたの好きな歌を歌ってほしい」とか「あなたは電車の中で 大声で叫んでみたい」(??)とか、小室から華原へのメッセージと思われる歌詞を華原が歌っているので ごっちゃごちゃ。これまたわけわかめ。 極め付けが「I wanna go」で、サビでいきなりボーカルがデジタル・ボイス処理されてしまう! おいおい、お前はトモちゃんの声に惚れ込んだんちゃうんかい。

  かように奇作・怪作揃いの本作。手抜き?枯渇?飽きた?それとも嫌がらせ? もし僕がキャピキャピの(死語)女性ボーカリストだったら、 こんな移り気なプロデューサーに運命を委ねたくないなあ、と思い耽ってしまうアルバム。 で、おまけにというかトドメにというか、歌詞カードに、全然本編と関係ないポエムが載ってんのよ。「あなたはきっと天才。」とか、「あなたの演出を願って脚本、書いてる。」 とか。なんか漫画雑誌とかエロ本のグラビアに取って付けたように載ってるポエムみたいっす。 もう文句の付け所のない奇作。裏ジャケの、ラブラブな小室と華原の写真がなんとも切ないです。


「nine cubes」 (1998.11.26) ★☆
1.daily news 2.needs somebody's love 3.あなたについて 4.here we are(album version) 5.さがしもの 6.winding road 7.storytelling 8.tumblin’dice(album version) 9.waiting for your smile 10.sagashimono(Reprise)

cover   嗚呼、ついにこの伝説の奇盤を紹介しなければならないのか!って、誰に頼まれたわけじゃないけど。 J-POPの怪盤史(そんなのあるのか)に残る怪盤中の怪盤、紹介しないわけにはいきますまい。

  ど頭、歌い出しからいきなり「このごろ地球の上にいるって感じて」と斜め上かつシュートな歌詞を振り下ろされる 謎レゲエ「daily news」で嫌な予感漂うが、なによりトモちゃんの歌えてなさ加減に愕然、戦慄! この歌えてなさは何故?これがOKテイクとはにわかに信じがたく、間違ってデモテイクとかブートレグが流出、流通してしまった のではないかとさえ思わせる。後半のファルセットはまさに衝撃、腰が抜け膝が笑う。小室の歌詞も、メロディの継ぎ目や整合性を 無視してダラダラとどうでもいいかつラリった日本語を垂れ流し続ける。ブレイクザルール!

  そしてこれが冒頭「daily news」に止まらず全編通してこうである。「here we are」なんか 歌詞と歌唱がちゃんとしてれば結構いいバラードになりそうだったのに、盛り上げ部「♪UH〜見つけた〜」の衝撃歌唱 が全てを破壊する。パンク・イズ・ノット・デッド!続く「さがしもの」とかもそうだけど、本作のボーカルは なんか首をギリギリ絞め上げられながらそれでも歌い続けているような感じの発声でなんだか怖い。 「夜明けも夕暮れも関係なかった あなたを守っていく事には 周りも誰でも捨ててもよかった」なんて歌詞も、 小室からのメッセージかと思うとかなり怖い。そう、当時の2人の関係を思い起こし、重ね合わせると、 「needs sombody's love」の「ビルの屋上の角に立ち いろいろ想像して怖かった」とか、 前作の歌詞カードに載っていたグラビア風謎ポエム(「あなたの演出を願って脚本、書いてる」云々)に無理矢理無茶苦茶なメロディを付けた 「Storytelling」とかいちいち怖くてガクガクブルブルです。ホラーです。

  終盤8曲目に収められた狂乱デジロック「tumblin' dice」は、まさに本作のクライマックスと呼ぶに相応しい 狂った仕上がり。メロと歌詞の整合性、歌いやすさなど眼中にない小室、 「この頃TVがおもしろい(中略)外へ出るのはやっぱりやめよ〜かな(中略)公園をやっぱり歩こう」 「ダイスをころがして 1から6を願って(中略)1は煙突 2はアヒルで 3はなんだったっけ?」 などと完全にラリっていてヤバすぎる。トモちゃんの歌唱もヤケクソに弾けていて、もはやこれは絶叫。魂が叫んでいる! 後半、転調後の歌唱など圧巻すぎて言葉を失ってしまう。最後リフレインがフェイドアウトしていくところなど、 「太陽にほえろ」の松田優作の殉職シーンのような壮絶さすら!その後終曲「waiting for your smile」では一転、 まったりしたアコースティック曲に乗せ、魂が抜けたようなトモちゃんがウィスパー気味に歌う。昇天? 最後は小室のピアノがレクイエムのように響いて終わります。怖すぎる!

  というわけでどうでしょうか、J-POP史に残る伝説の怪盤、少しは聴きたくなっていただけたでしょうか。今すぐブックオフに走ってください。 (記・05.5.27)


その他のアルバム
「kahala compilation」(1999.2.10)
「One Fine Day」(1999.11.25)
「Best Selection」(2001.9.27)
「Love Again」(2001.11.27)
「Natural Breeze 〜KAHARA BEST 1998-2002〜」(2002.7.17)



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