ブレイク後のスピッツだけを聴いていると分かりづらいが、実はスピッツは「出がブルーハーツ」である。
アマチュア時代にはブルーハーツをカバーしたり、パンクっぽい曲を演っていたそうである。そんな出自が最も色濃いのがこのファーストアルバムであり、
ディストーション・ギターの音とか、何曲かで散見されるスカっぽいリズムなど、なるほどパンクっぽい要素がちらほら。
しかし、楽曲自体は別にパンクのそれではなく、むしろU2やポリスあたりのギター・バンドを思わせる曲や、
翻ってフォークっぽい曲だったりするし、歌詞はなんだかフォークを下敷きにしながらも独特のシュールレアリズムが爆発している。そして、永遠の少年性とも
言うべきエバーグリーン感を醸し出す草野正宗のボーカル。一つ一つの要素を取り上げると、出がパンクとはあまり思えない、攻撃性のあまり感じられないものなのに、
全体としては、笑顔の裏にナイフを隠し持ったようなギリギリの危うさを感じさせる。いい意味で、どこかが破綻しているように思えるのだ。
それは取りも直さず、世界と断絶した位置から世界を傍観しているような、初期・草野正宗の毒性の強い歌詞に因るところが大きいのだが、
それをそのまま暴力的なサウンドで演るのではなく、フォーキーだったりポップなメロディに乗せて歌うことで独特のカラーを早くも築いている。
そういう意味では、音楽のジャンルとしてでなく、「意味として」パンクなアルバムだし、バンドである。そしてそんな精神性は、
最新作「三日月ロック」まで一貫している。スピッツのコアに触れるにはこのアルバムを聴くべし。
「ニノウデの世界」「月に帰る」「死神の岬へ」「トンビ飛べなかった」「夏の魔物」「うめぼし」「ヒバリのこころ」と、名曲揃い。
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