子供の頃なりたかったもの
小さい頃、家に一冊の絵本があった。タイトルは確か“ぼくのゆめ_わたしのゆめ”…。
文字も少しは書いてあったが、あまりはっきりとは覚えていない。
当時の子供たちが憧れそうないろんな職業を紹介した本だった。
絵本の中には制服姿の警察官や消防署員がいたような気がする。
他に飛行機のパイロットや電車の運転手、お医者さんや野球の選手なんかもいたかな。
今と違ってまだサッカー選手はいなかったはず…。
女の子の職業としては看護婦さんやスチュワーデス、そして職業ではないが綺麗な花嫁さんの絵もあったと記憶している。
男女の職種に対する区別がなくなりつつある今、「看護婦」や「スチュワーデス」という言葉は公には使われなくなってきたが、絵本の中には「制服」や「衣装」に対する子供たちのホンワカとした夢があった。
ところで、今の子供たちはどんな職業に憧れているのだろう。
僕たちの頃まではまだ、例えば王選手(現・監督)に憧れたり、テレビで見るような俳優や人気歌手になりたいという想いは普通にあったような気がする。
もちろん華やかなスポーツ選手やタレントに対する憧れは今もあるのだろうけど、その一方でおよそ夢と呼ぶには寂しすぎる将来像を口にする子供たちもチラホラいるようだ。
例えば「将来なりたい職業は?」と聞かれて「政治家」とか「実業家」「サラリーマン」などと答える子はまだいい。
それはそれで立派な職業…。
しかし中には「お金持ち」、さらには「勝ち組」なんていう答えもあるらしい(オイオイ…)。
最初は笑い話かと思ったが、決してそうでもなさそうなのがチョト寂しい。
またIT関連をはじめとした職種の多様化を反映して、僕らの頃にはなかった新しい職業に憧れる子供たちも増えている。時代とともに子供の“夢”も確実に変わっていくようだ。
ここで、ある大手保険会社が最近行った「子供たちのなりたい職業」に関する調査結果を少し紹介…。
それによると、小学生の男子ではやはり野球・サッカーなどの「スポーツ選手」がトップに来ている。
また、ほぼ並んで「調理師・料理店」「医者・歯医者」なども高い人気があるようだ。
近年、子供たちの“料理熱”には目を見張るものがあるが、やはり職業としてもかなり注目されているのが分かる。
以下、「サラリーマン」「ゲームクリエイター・ゲームデザイナー」「大工」「研究者・科学者」そして「コンピュータープログラマー・SE」などが続いていた。
「サラリーマン」は自分の親の影響だろうか。
「大工」も「研究者・科学者」も昔からポピュラー。
そして「ゲーム○○○」や「コンピューター○○○」なんていう仕事がスッと子供たちの口から出てくるところがいかにも時代…。
他、20位以内には「会社の社長」なんてのもランクイン。
さて、小学生の女子ではどうか…。
1位は「花屋・パン屋などのお店屋さん」、2位が「幼稚園の先生」、3位「美容師・ファッションデザイナー」…。
どれも女の子らしい感じはするが、やはり「お店屋さん」の人気はめちゃくちゃ高そうだ。
以下、「芸能人(タレント・歌手・声優など)」「マンガ家・イラストレーター」「看護師」と続く。
10位以下では「スチュワーデス(フライトアテンダント)」そして、連日メディアで持てはやされる女子アナ人気を受けてか「アナウンサー・キャスター」がランクイン。
他、20位までを見渡すと「OL(サラリーマン)」「トリマー」「犬の訓練士・調教師」「水泳選手」などが目を引いた。
こうやって子供たちのなりたい職業を一斉に並べてみると、結構「時代が変わってもやっぱ皆いろんな夢持ってんじゃん…」なんて少し嬉しくなったり…。
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ま、よその子の話はこれくらいにしておいて…。
僕が小さい頃、最初になりたいと思ったのは「医者」だった。その思い自体は今もある。
しかし子供の頃に医者になりたいと思った理由は今のそれとは全く違い、ただ生き物の身体の仕組みにすンごく興味があったからというだけのものだった。
小さい頃から動物や昆虫の解剖図鑑を開いては命の不思議に想像力を膨らませた。
新聞などに連載される「健康相談」などのコーナーで、どんな病気になると身体のどの器官がどんなふうに変化し、そこへ薬がどんな仕組みで効いて…なんていう記事を見つけるともう夢中で読み、「きょうの健康」などのテレビ番組も食い入るように見た。
たまに道路でネコなどが車に轢かれて死んでたりすると、わざわざ近づいていって、飛び出してる内臓を観察したりしたこともある。
普通なら気持ち悪くて誰も見たがらない光景…。もちろん僕も気持ちは悪い。気持ちは悪いがしかし、それ以上に興味が勝ってしまう。
「へぇ〜、こんな色してるんだ…」とか。
そしてそんなものを見た後、フツーに家でご飯が食べれたりする。
ここだけを見れば医者になる素質は十分だったんだけどなぁ…!?
でも実のところ、子供の頃に抱いていたのは「医者」という職業に対する憧れではなく「医学」への興味と言った方が正しかった。
“将来の職業”として考えれば、やはり「ミュージシャン」への憧れの方が強かったかもしれない。
物心つき始めたころから、暇があれば家にあった鍵盤楽器にかじりつき、バンドで活動している未来の自分の姿を思い描いていた。
やがて手足が不自由な自分には少なくとも“プレイヤー”になるのは難しいと感じ始めると、今度は「『作曲家』になりたい…」「『音楽ミキサー』になりたい」、さらにそんな才能すら自分には無いことに気付いて「楽器店の兄ちゃんになりたい」「貸しスタジオのおじさんでもいい」…とこんな具合。
とにかく音楽機材に囲まれた環境で仕事をしたいと思っていたようだ。
こうして医者だのミュージシャンだのといろいろ夢を見ていた少年時代。
「作曲家」もそうだが基本的に「モノを創る仕事」が好きで、他にもその手の職業には一通り憧れた時期がある。
「映画監督」「SF作家」「特撮技術スタッフ」「画家」「陶芸家」「伝統工芸の職人」etc...
だいたいの傾向は分かっていただけるはず…。
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こんな感じの子供だったから「お店で商売」とか「会社で事務」系には全く興味がない人間だった。
しかしフタを開けてみると二十歳を過ぎて実際に就いた仕事はナント郵便局員…。
切手やハガキを売って「商売」をし、机に向かって「事務」を執ってるトコロじゃん!!。
しかも、実をいうと子供の頃「『公務員』にだけは絶対になりたくない」と思っていたのだ…。
もちろん理由はある。
身体が不自由で子供の頃から車いすに乗っていた僕は、よく周囲の大人たちから「かっちゃんなんか公務員にでもなれたら一番いいのに…」みたいなことを言われていた。
“この子には力仕事や身体を動かす仕事はできない。だから比較的、労働環境が整っている官公庁などで机に向かってできる仕事に就けたら…”
大人たちのそれが、僕の将来を本当に心配しての言葉だったと今は判る。
しかしミュージシャンがどーのこーのとフワフワしていた少年時代の僕には、周囲の“「車いす」→「公務員」”という発想が、例えば“「視覚障害者」→「マッサージ師」”と同じようにとても短絡的なアドバイスに思えたのだった。
「僕だって身体が不自由でもやりたいことがあるのに、なんで公務員なんだよぉ…!!」
そんな反発心が先の思いの根底にあった。
しかし、気が付けば天下無敵の(?)国家公務員を13年間務めることに…。人生、ホンマにわからんわ。
さて、一番最初に憧れた職業「医者」。
最初に「今もその思いはある」と書いたが、ただ生きものの身体に興味があっただけの少年時代とは動機が全く違う。
今は単に病気の治療だけでなく患者の思いを聞いて一緒に苦しみ、そして“希望”を与えられる、それが可能な医師という職業に強く憧れる。
もし今度生まれてきて医者になったとしたら、名もない片田舎の診療所で地元のじいちゃんばあちゃんたちと触れ合い、ワイワイ言いながら毎日誰かの役に立ってる…そんな人生もいいなぁ、なんて思ったり。
夢でメシは食えないけど、夢を見るのはタダだもんね〜☆