テレビゲーム.txt
数年前に弟がプレイステーションを買った。弟は馬を育てるソフトや野球ものを買ってきて毎晩楽しんでいた。
僕も何度か野球で弟と対戦したことがある。しかし野球系はどうも苦手だ。反射神経は悪い方ではないと自分では思っているのだが、やはり筋肉系の障害を持つとこういうタイプのゲームではウルトラハンディになる。ヒドイ時には“40対0”で弟に負けた。ひどい監督に使われたピッチャーがカワイソウだった。頭の周りを☆が幾つも回って疲労で倒れそうなのに最後まで投げさせた。ゴメンね…。
その後弟が結婚して所帯を持つため家を出たので、プレステはしばらく僕のものになった。
僕はこういうものに超ハマリやすい。それが分かっているので弟が買ってくれた将棋ソフト以外にほとんど手をつけなかった。
が、ある日テレビで「スーパーロボット大戦α」のCMを見てどうしてもやりたくなり、「この一本だけ」のつもりでソフトを買ってきた。
これがめっちゃ、オモシロかった…。もう、とんでもなくオモシロかった…。
いわゆる「戦術型」と言われるタイプのゲームだが、子供の頃テレビで夢中になったロボットたちがこれでもかと登場し、番組の垣根を越えてバトルロイヤルを繰り広げる。野球のオールスター戦などはるかに超える夢の対決を自分で操れるのだ。
必殺技の段には懐かしの「決めゼリフ」まで喋ってくれる。「水戸黄門」や「遠山の金さん」の決めゼリフに人々がシビレるように、ロボットたちの決めゼリフもまた僕らの世代にはナミダものなのだ。
ロボットたちの作戦の指揮官は僕である。全ては僕の指揮にかかっている。何度もつまづきながらより強い敵を倒すコツを少しずつ覚えていく。
ストーリーもよくできている。誰がこんなストーリーを考えたんだろう…。とにかく上手くできている。
やがて僕の頭の中はゲームのことでいっぱいになっていった。
飯の時も風呂の時もトイレの時もベッドに入ってからも次の戦いの戦略が頭をよぎる。思いついたアイデアはメモに書いておく。休みの日にはそれを試してみる。まだ勤めていた頃だったので次の休みが待ち遠しかった。もちろん休みの日には一日中ゲーム…。
ただでさえ体の障害が進行してきたのでそろそろ仕事を辞めようかと思ってた時期、休みの日にまでゲームで疲れを溜め込んでしまい…。
とうとう体を壊して入院してシマッタのだ。(アホとしか言いようがない…)
入院中にいろんなことを反省した。
病室で毎日規則正しい生活をする中、自分がゲームの為にどれほどムチャな生活をして疲れ切っていたかにやっと気付いた。
しかしゲームはまだすべてをクリアしていない…。
「家に帰ればまたムチャをするかも知れないが、逆に病室の中なら節度を保てるはず。ゲームをクリアするなら今しかない。クリアしたらもうゲームはやめよう…」
そう考えた僕は親父に頼んで病室にプレステを持ってきてもらった。そして退院するまでに全ステージをクリアした…。
今プレステは再び弟の手元にある。僕は完全に“足を洗った”。
よく中高生がゲームソフトを万引きしたりソフト代欲しさに事件を起こす話を聞くが、それもわからなくない。大の大人がこれほど夢中になるのだ。この類のゲームの楽しさを知ってしまった子供たちにブレーキをかけろと言っても無理だろう。
ウチの近所にも中学生の一人息子が部屋にこもってゲームばかりしていることに、たいそう心を痛めている夫婦がいる。
これははっきり言って“麻薬”だ。
一度“中毒”になったら抜け切るのは至難の業…。
できれば子供たちには少なくとも学校卒業くらいまでは、こんなモノさせたくないなぁ…と思う。
最低でも小学生のうちは禁止…。
難しいテレビゲームは一見、頭の発達には良さそうだが生理学的には全然頭は働いていないことが判っているらしい。それどころかゲーム時間の多い子は想像力や表現力、理解力が低下していることも…。
でもテレビゲームは今や世界の一大産業。子供たちの「なりたい職業」の中に「ゲームクリエイター」が入ってくる時代だ。もし僕が総理大臣とか大統領になって“未成年のゲーム禁止令”なんて出したら、た〜くさんの「ゲームクリエイター」たちが職を失い、子供たちの夢まで奪ってしまう。
どうしたらいいんだろう…。
この章だけは最後まで“オチ”が思い浮かばないまま書き進めている…。
本当に、どうしたらいいんだろう…。