コロッケとバームクーヘン
この二つ、かっちゃんの大好物。
好き嫌いはともかくとして、この二つを見るといつも
「平和だなぁ〜…」
としみじみ思う。この二つ以外ではこの感情は湧かない。似たような食べ物は他にもあるがコロッケとバームクーヘン以外ではだめなのだ。なにか違うのだ。どうしてか。
もちろんこの二つが同じ皿に同時に乗るというシチュエーションは普段まず考えられないので、それぞれ単独で出された場合についてである。
まずコロッケ。
これはちょっと小腹が空いた時のおやつにもなるし、ご飯のおかずにもなる万能食だ。
学生時代の寒かった冬の日お腹空かして学校から帰っても家が留守で中に入れなかった時、車いす飛ばして近所の惣菜屋さんでひとつ60円のコロッケを揚げてもらい家の玄関まで来て手でつかんで食べた。メチャクチャおいしかった。
コロッケは栄養価も高く、歯の弱ったじいちゃんばあちゃんから離乳食が始まった赤ちゃんまで誰でも食べてる人気者だ。
なのに…である。
コロッケ本人はいつ見ても“のほほ〜ん”とした、まぁ〜るい顔でマイペースだ。これほどみんなに愛されてるのに本人はいつも無邪気で無頓着。グルメだの何だのと世の中がどんなに騒がしくなっても誰にも媚びずにコロッケを続けてる。大人なのか子どもなのか、何を考えてるのかも分からない顔して、でもいつも愛おしいくらいまぁ〜るい。
完全な“まる”ではなく、ちょうどいい感じの楕円、そして厚み。まさに“癒し系”の顔だ。
名前もいい。これがいくら親せきでも「牛コロッケ」や「カニクリームコロッケ」だと、また違う。
「牛…」は名前からして少しエラそうだ。平和じゃない。「カニ…」は少し軟弱すぎる。名前も派手すぎる。やっぱり平和じゃない。
四文字のただのコロッケ…。この意味不明な、でも歯切れのある語感がいい。子供でもすぐ覚えられる。
このコロッケがお皿の上でおとなしく天井を見上げてるのを見ると、本当に「お前って、平和だなぁ〜…」といつも思う。
次にバームクーヘン。
これはコロッケに比べると一見、少し品があるように見える。名前も上品だ。でもやっぱり無邪気…。
味はチョコレートのようにしつこくない甘さで、コーヒー、紅茶、緑茶、なんでも合う。あのレコード盤のような溝からして手間ひまかかって生まれて来たろうに、やっぱり丸〜い姿をしている。
そしてあの大きな「穴」がいい。愛嬌がある。
どこを切ってもしっかりある「溝」と「穴」…。もう健気(けなげ)でさえある。こんなに個性豊かな存在なのにその要素はすべて“丸”…。ロールケーキのような中途半端な主張ではなく、誰に対してもいつも穏やかに“丸”…。
でもやっぱり本人は何に気を使うでもなく皿の上で口をポカ〜ンと開けている。
毎日爆弾が落ちているような世界ではこんな風貌はきっと生まれないだろう。
このキャラ、心の底から「どっから見ても平和だなぁ〜…」と思う。
文章だけではなかなか伝えられないこの特別な想い、わかっていただけるだろうか…。