コワ〜イコワ〜イ経験


この国では毎日どこかで交通事故が起こり誰かが命を落としている。
実は僕もこれまでに二度、交通事故に遭った。
一度目はまだ近所の公園横の道路で三輪車に乗ってひとりで遊んでた頃のこと。あまりよく覚えていないが、まだ低かった子供の視線にトラックの左前輪があっという間に近づいてきた瞬間だけは脳裏に焼き付いている。まだ子供なのでトラックが近づいてきても撥ね飛ばされるまで“怖い”という感覚がなかった。
子供の記憶力とはスゴイもので、そのトラックのナンバーを僕が覚えていた(両親談)らしく、運転手はすぐに捕まった。自分でも信じられない。その頃の記憶力が今もあったら…と思う。
幸い、かすり傷で済んだ。

二度目の事故は十年ほど前のこと。
近所の先輩二人と近くにある集会所に行く途中、信号のない車道を電動車いすで渡ろうとした時だった。
夜の九時ごろ、それでも決して交通量の少なくない一車線道の前で左右確認をする。暗いが見通しは悪くなかった。
“よし、右からは来ない…。”
左からは遥か向こうから女の子のスクーターが一台近づいてくるだけだ。

“余裕でいける!!”

ゆっくり踏み出しながらもう一度右をチラっと確認して、一気に加速スタートを切ると同時に左からのスクーターに「アイコンタクト」を送った。
ところが遥か向こうだったスクーターの位置が次の瞬間、予想位置よりずっと近くなった…。

“は、早いッ!!…”

ケンシロウが聖帝サウザーと初めて対峙した時、次の瞬間のサウザーの踏み込みの早さに驚き、十字掌の一撃を食らうシーンがあったが、おそらくこういう気持ちだっただろう。
まるで3コマ漫画をみているようだった。
早いっ!!…と思った次の瞬間にはスクーターは僕の左脇まで来ていた。そして…。

一瞬の衝撃の後に続いて道路の溝をこする音、そして最後に僕の後ろでガシャーンという何かがぶつかった音がした。
気が付くと僕は車椅子のままさっきとは違う方向に向いていた…。

スクーターは左前方から来て車いすの左後輪に接触、そのままバランスを崩して道路の溝をこすった後、なにかにぶつかって転倒したらしい。
僕は転倒こそしなかったが、接触の衝撃でちょうどコマのように左に90°ほど回転した。
人を乗せると100kg近い重量になる電動車いすの向きが一瞬にして変わったのだ。そして平行に並んでた車椅子の後輪の左車軸(鉄製)が歪んでしまったため、道路の中央過ぎで動けなくなってしまった。
いっしょにいた先輩たちも顔が青ざめただろう。僕の無事を確かめた後、転倒した女の子の側へ駆け寄っていった。
僕は向きすら変えられない状態だったので後ろの女の子の様子はわからなかったが、すぐに立ち上がりしきりに謝っていたみたいだ。
静かな住宅街の中で衝撃音が大きかったため、あっという間に野次馬が取り囲んだ。

接触の瞬間、女の子は考え事をしていて僕の姿が見えていなかったというのだ。
空いていた夜の路を減速せずに近づいてきたのだから「早いっ!!」と感じるのも当たり前だった。怖かった。

先輩たちが気遣ったが女の子は何度も「自分は大丈夫です」と言ってまたスクーターで去っていった。しかしあのスピードで転倒したのだから無傷ではないかもしれない。せめて連絡先ぐらい聞いておくべきだったと後で先輩たちと話した。

僕はその後なんとか集会所まで連れて行ってもらったが、接触の瞬間から3時間くらいは胸の動悸が止まらなかった。
コンマ数秒の違いで“後部接触”で済んだが、僕のスタートがもう一瞬遅れていたらまともに“衝突”だった。無キズで済んだのが不思議だ。
何度思い出してもゾッとする、ホント…。

でも良い経験になった。
以来、信号のない道を渡る時はいつも“その光景”が頭をよぎり注意力が働く。
“自分は見えてても向こうは見えてないかもしれない…”
哺乳類等の高等動物は周囲にたくさんの生き物がいる中でも、自分を見つめる視線には敏感に反応するようにプログラムされているという。
だから相手が目を合わせるまでアイコンタクト(視線による合図)を送る。
目を合わせてくれるまで渡らない…。

ドライバーにも擬似的にこういうコワ〜イ経験をさせることで、より交通事故を減らすことはできないだろうか?などと考えたりもする。
ちなみに二度目の事故は警察にも届けていないので交通事故としてはカウントされていない。

あの時、あと一瞬遅れていたらこのホームページもなかったかも…。ゾーーーッ…。

 
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