ミオパチー??


僕がかかって生まれたと言われる「先天性ミオパチー」について少し紹介しておきたい。
とは言っても専門的なことは分からないので、自分の症状はこうだ、というお話…。
「先天性」とは産まれる前から発症していたと思われる病気を指す言葉で、産まれてから発症すれば「後天性」(たいていの病気はそうなのでこの言葉は特に付けない)。

生まれた時、僕は3000gを超える大きめの赤ちゃんだった。
普通、赤ちゃんは生まれる瞬間、両手を精いっぱい「グー」にして出てくるが、僕の場合は力なく「パー」で出てきたそうだ。
産まれた病院に母の知り合いの看護婦がいて、僕をひと目見るなり「この子、少しおかしいよ」と言ったとか…。

3〜4歳の頃までは何かをつかんでヒザで立つことができた。伝え歩きの記憶がある。
両手を後ろに突いて身体を支えたり、今では信じられないポーズをとることも、まだできた。
しかし、成長と共にヒジやヒザの関節、背骨などが曲がりだし、「ピンッ」とは伸びなくなっていった。
いつも身体や手足を曲げてると楽で気持ちよかった。伸びるところまで伸ばして座っていても痛みというほどのものは無いのだが“何か”が変なのだ。落ち着かないというか。
やはり筋肉が常に縮まろうとしていたのかもしれない。

子供の頃は身体中の関節が異常に柔らかかった。関節を包む袋が弱いのだとか…。指の関節などは後ろに曲げると手の甲についてしまう。グニャグニャな手足だった。
拘縮する筋肉と柔らかすぎて強い力に耐えられない関節…。これで身体を支えるのはちと無理。

僕の病気はよく「筋ジストロフィ」と間違えられる。同じ神経筋疾患で親せきみたいなものらしい。
自分でもつい数年前までは「筋ジス」の一種だと思っていた。
しかし病状が進んだため勤めていた職場を辞めようかと悩んでいた頃、これからのこともあるのでこの際自分の病気についてもう少しハッキリさせておこうと思い「筋ジス」の権威、国立刀根山病院を受診したところ、副院長に最初の問診だけで「まず『ミオパチー』の症状に最も近いですね」と言われた。

「ミオパチー」、生まれて初めて聞く病名だった…。

最終的には「筋生検」という検査をしなければ診断を確定させることはできない。しかし「筋生検」は筋肉の一部を切り取るというリスクの大きな検査で結果が出るまでに数ヶ月以上かかり、またこの年齢では検査をしても100%診断できる保証はなく、第一「ミオパチー」だと分かっても決定的な治療法は何もないという。
…僕はこの検査を断わった。

「筋ジス」も「ミオパチー」もいろんなタイプがあることが分かっているが、最も患者数の多い筋ジス「デュシェンヌ型」と比べると「ミオパチー」は病気の進行がずっと遅い。
どちらも大きくは「神経筋疾患」という分類に入るそうだが、「ミオパチー」は脳や脊髄などの神経系統には異常が無く、筋肉の細胞そのものに欠陥が見つかる病気だ。
結果、「力はとても弱いが、一応、自分の意思どおりに身体は動く…」という感じになる。ここが脊髄損傷や小児マヒなどとの違いで、筋肉が緊張・痙攣したり、自分の意思とは違う動きをする…ということはない。皮膚感覚もある。むしろ人より敏感かもしれない。
しかしどんなに頑張っても筋肉には力が入らない。「緊張」の反対で「弛緩(しかん)」となる。
手足や指先に比べて首・背筋・腹筋など体幹の方により強く症状が出るのが僕のタイプの特徴。

「力が弱い」という感覚は案外、分かってもらえないようだ。昔はよく「そんなに手足が動くのにどうして歩けないの?」と聞かれた。
かっちゃん流の表現をすると、例えば普通の人が3kgの荷物の入ったカバンを持ち上げようとする時、腕には
「ギュウゥゥゥゥッ!!」
と力が入り、カバンが持ち上がる。しかし僕が持ち上げようとすると、腕の筋肉は
「キュッ…」
としか動いてくれない。どんなに「ウ〜〜〜ンッ…!!」と頑張っても最初の
「キュッ…」だけで筋肉の収縮が止まる。…カバンは持ち上がらない。
でも何も持たずに腕だけならある程度は動く…とまあ、こんな感じ。

負荷(=重力やその他の抵抗)さえ無ければほぼリアルタイムに身体は動く。
職場では電卓を打つのも遅い方ではなかった。しかし電卓を手元に引き寄せたり、片付けようとして持ち上げたりする時には息切れするほど力を使った。
楽器のキーボードもゆっくりなら弾ける。でも鍵盤の角に指が引っかかるだけで大きな抵抗になる。鍵盤自体も重たい。これがピアノになるとさらに鉛のように重たい。指先の握力が2〜3kg(成人男性の10〜20分の1)しかないので…。

呼吸する筋肉も弱い。最後に計った肺活量は500cc台だったかな。成人男性の5〜6分の1ぐらい。
だから大きな声が出せない。思いっきり息を吸って「あーーーッ」と声を出し続けても3秒しか持たない。騒がしい人ごみでは隣の人にも声が届かない。
咳をするチカラも弱いのでタンが切れない。昔はよく気管支炎や肺炎を起こした。学校なんて数週間単位で休むのはザラだった。
10年ほど前、重い肺炎にかかり、肺の機能が落ちて頭に酸素が回らなくなり三日ほど意識を失った。気がつくと病院のベッドの上…。無意識のうちに看護師といろんな話をしてたらしいが、全く覚えていない。ホント、フシギ。
このままではあと二週間持たないと言われ、これからのことも考えて「気管切開」した。ノドに穴を開ける手術だ。
ノドに開いたこの穴、開けたままだとここから息が漏れて口から声が出ないので普段は白くて丸いフタで閉じてある。
この白いフタ、たまにアクセサリーと間違えられることも…。(^^;
この頃までまだ勤めていたが、これ以降ノドから突起した管のおかげでネクタイが締められなくなった。しかし、いつでもフタを外せば吸引器でタンが取れる。すぐに気管支炎を起こしてた頃と比べると今は風邪をひいてもずいぶんラクだ。

呼吸筋が弱いと普段から体の中に取り込む酸素が足りなくなるので8年ほど前から夜間だけ人工呼吸器を着けている。自力ではどんなに息を吸ってもお腹が膨らむことなんてなかった。初めて人工呼吸器を着けた時、肺の奥までグヮ〜〜ッと空気が入ってきてお腹が大きく膨らんだ。
「肺ってこんなに膨らむものなのか…」と驚いた。
今のところ昼間はまだ着けずに済んでいる。それだけでも有難い。

昔、プールの中では歩けた。今でもたぶん…。もちろん浮力があるためだ。
将来、温暖化で南極の氷が解けて街が水没し、人が皆「魚人間?」になったら僕も自由に歩ける…子供の頃はそんなことを想像した。
「ミオパチー」のもう一つの特徴が筋肉の拘縮。
拘縮というよりは、年齢に応じた成長をしない、ということらしい。
骨格はどんどん成長して大きくなるが、筋肉が成長しないので結果的に身体中の骨格や関節が未発達の筋肉に引っ張られて変形してくる。冒頭にも書いたとおりヒジもヒザも首も背骨も腰も、そして手首、足首、指先までが変形している。
だから、もし街が水没してアクアラングを着けて歩いたとしても直立ではなく、“内股の原始人”のような姿になる。たぶん。

首の筋がめちゃくちゃ張ってるので、うつむくことができない。
自分のヒザがやっと見える程度にしか下をむけないので、自分のオチ○チンなんて“生”で見たことがない。
首がうつむけないと字を書いたり本を読むのがこれまたツライ。顔は前を向いたまま目だけが下を見る姿勢…。
これで仕事をしてた頃はとても疲れた。散髪してもらうとき、床屋さんも大変だったろうな…。

身体各部の変形はナゼか左右対称にならないのだ。同じ病気なのだから右も左も同じように変形しそうだが、違う。
これも「ミオパチー」の特徴なのだろうか・・・。
左足は外側に開こうとするのに右足は内側に曲がる。左の肋骨は前に出てくるのに右はそうでもない。左腕は後ろには動きやすいが上には上がらない。逆に右腕は前には上がるが後ろには動きにくい。レントゲン写真で背骨を見るとびっくりするほど前後左右にネジれてる。まるで木の枝…それとも雑巾をギュッと搾ったような形…?
よくこんなんで無事に生きてるなぁ、と思う。
カレイやヒラメの気もちが良く分かるような…ウソ、やっぱり分からない。

実はこの病気、顔にも特徴が出るそうなのだ。特に「下アゴ」が未発達のまま下に伸びて面長ヅラになるという。
そうか、この病気でなければ僕ももう少しシマリのあるハンサムな顔だったのかも知れない…いや、そうに違いない。
そういうことにしておく…のダ。

最近困ってることが二つ…。
一つはヒジの拘縮。
リーチが短くなって、おしっこの時に手が下まで届きにくい。なんとしてもリハビリでこれ以上の萎縮は食い止めねば…。
もともと病気で腕が短い人と、ヒジが曲がってリーチが短い人とでは後者の方が不便だと思う。短くても真っ直ぐな腕はせまい場所にも入れるが、曲がった腕はせまい場所には入らない。

もう一つ、気に入らないのが「嚥下(えんげ)障害」…のどの筋肉が弱くなって食べ物がグィッと飲み込めなくなること。これが少しキツくなってきたかも。全く飲み込めないわけではないが、今まで以上に食べるのに時間がかかるようになった。
「誤嚥(ごえん)」(食べたものがきちんと食道に入らず気管や肺に入ったりすること)に気をつけないとまた肺炎になる。

もしかしたら同じ「ミオパチー」の人が読んでくれるかなぁ、とか、レアな病気の資料として何かの役に立つかも…と思ってここまで書いたけど、他人の病気の話なんて読んでても面白くないわね…(-_-;)
ということで、今日はここまで。…キ〜ン、コ〜ン、カ〜ン、コ〜〜ン♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

参考 仕事を辞める勇気
続・ミオパチー??


 
Katchan's Viewへ
 
次の章へ