世界怪魚釣行記TOP  モンゴル釣行3
モンゴル釣行2 2002年8月
そして怪物は横たわり、俺は狼のように吠えた! Part2
蒙古へ再び出撃! 湖畔で暮らす遊牧民のゲルに泊まり大物パイクを狙う。そして、さらなる大物を求めチョロート川の奥地へ潜入!
「Access to Mongolia(ロシア経由)
日本→ロシア→モンゴル(海・陸路の旅)

富山県伏木港からウラジオストック行きの乗客船ルーシー号が出ている(所要2泊3日)。そこからシベリア鉄道でイルクーツクまで行き(3泊4日)、汽車を乗り換えウランバートル着(2泊3日)。なおロシアは自由旅行ができないため交通手段や宿泊は日本の旅行会社を通して予約しなくてはならない。費用はVISA代込みで12万円ほどで苦労の割りに値段は安くない。他のルートよりも時間と費用が多くかかってしまうため、どうしても「シベリア鉄道に乗りたい&バイカル湖を見たい人」以外には勧められない。

 マウンテンバイクを押して峠の頂上についた。ここを下ればテルヒーンツァガーン湖、眼下には昨年デビッド達と過ごした美しい湖が広がっている。今年もここから俺の長い夏休みが始まるのだ!
 日本で一日12h働きお金を貯め、ロシア行きの船に乗った。連夜船上で繰り広げられたウォッカの乾杯。そして二日酔いで乗りこんだシベリア鉄道。アムール川を横切り、バイカル湖を眺め5泊6日、ウランバートルに到着。乗合バスに乗りこむが途中で降ろされ、仕方なくマウンテンバイクを組み立てここまで来た。この湖のパイクを皮切りに、タイメン・ジャイアントスネークヘッド・コブラスネークヘッド・バラマンディ、怪魚と闘うアジア横断の旅は続く。俺は旅の始まりに景気をつけようとペダルを思いっきりこぎ、フルスピードで坂を下る。テルヒーンツァガーン湖はもう目の前まで迫っていた。

 早速キャンプで働くモンゴル人「アイッタ」が漕ぐボートで湖にでた。聞くところによると、沖に水草でできた島があり、その周りに張った刺し網には連日10匹以上のパイクが掛かるという。ロシア製の無骨なボートで進むこと30分、その島が見えてきた。なるほど見るからに良さげなポイントだ。ディープとシャローが混在し水草が豊富、小魚もたくさん泳いでいる。俺は期待に胸を膨らませキャストを開始した。
 
昨年活躍したサクラマス用のスプーンを投げ水草の際を狙う。直ぐにロッドが 「ガクッ」 と引きこまれる。今年はギャフを自作してきたためランディングに慌てることはない。近くまで寄せ下アゴに突き刺す。80cmの良型のパイクだ。気をよくして際どい所に強気でキャスト続ける。「グゥン」 まただ!と思った瞬間ラインが切れた。PE40lbラインを巻いたアンタレスにタックルを変え、再度キャスト。またまた 「グゥ〜ン」 今度はかなりの大物だ。しかし数秒のファイトののちロッドが軽くなる。たぶんパイクの鋭い牙にラインが擦れたのだろう。タイメンに用意してきた80lbに巻き代え先端をダブルラインにした。これでどうだ! 飛距離は出ないが、切れるもんなら切ってみろ!
 
ラインを変えてからはまさに爆釣。水深わずか50cm、水草でできた通路にミノーを通すと引き波を立ててパイクが追う。アタックも激しく 「ドッパーン」 といった感じ。3時間あまりで88・80・80・78・75・74・68cm! アイッタも淡々と80cmクラスを釣りあげていた。太陽が西の山に沈む頃、大興奮でその日の釣りを終えた。
  この日釣ったパイクはキャンプのレストランに寄付した。その後、俺の食事はもちろんタダになったが、しばらくパイク料理が続くのは当然だった…。「肉が食いたいよー!」
ノーザンパイクの80cmアップ連発に喜ぶ俺達!俺が持っているのがこの日最大の88cm。そして左隅に写るのが「アイッタ」。

 ツーリストキャンプでは毎日宴会が続き楽しかった。しかしモンゴリアンホモに襲われかけるという事件が発生し、俺は友人ミャグマのゲルに泊まることにした。ミャグマは昨年チョロート川に行く時馬を貸りた遊牧民で、湖畔の高台に住んでいる。彼の家族は妻と息子2人、娘2人。6人が小さなゲルに暮らしているため、足の踏み場もない。そこへ近所のおっさんや通りすがりの人が訪れるため、ワイワイガヤガヤ、プライバシーの欠片もない。しかし近頃、居間に集まって家族だんらんの時を過ごすことのなくなった俺にとって、その空間は楽しく懐かしいものだった。
 ミャグマ家の隣には弟のダンバーが住んでいる。彼には10歳の息子(バイラー)と5歳になる娘(ホングラー)がいて、俺が釣りに出かけると必ずピョコピョコあとをついてきた。特にバイラーは口から生まれたのか? と思うほどうるさく、気が散ってしょうがない。おまけにロッドを貸すと直ぐにバックラッシュ、ラインをいくら駄目にされたかわからない。二人がいる日はあまり釣れない。そこで俺はこっそりゲルをでる。しかし後ろから 「タケー!タケー!」 と呼ぶ声がする、そんな毎日だった。

 この日も逃亡に失敗し、二人は俺の周りで 「キャッキャッ」 と騒ぐ。いくらモンゴルでもこれでは魚が逃げてしまう。今日はボウズかと諦めかけたその時、「ゴゴーン」と大きなアタリ、シーバスロッドが大きくしなった。ドラグは悲鳴をあげ、二人も悲鳴をあげながら俺に声援をおくる。慌てふためきながらも二人に笑顔で応えると、急に疫病神が天使に見えてきた。そして、騒ぎ疲れた二人がおとなしくなった頃、パイクも疲れ果て足元に寄ってきた。5分ぐらいのファイトの末あがってきたのは90cmジャスト、グットサイズのパイクだった。

 
明日、ミャグマのバイクでチョロート川に向かう。この湖もこの日が最後。いい思い出ができた。バイラー&ホングラー、そしてこの湖で出会ったすべての人々、「また会おう!」 そして 「バイルッタ!」(ありがとう)。
(左写真)90cmジャストのノーザンパイク!ヒットルアーはスミスのスプーン「ピュア16g」。左に写るのが「バイラー」、中央が「ホングラー」。 
(右写真)モンゴル人の家「ゲル」。一軒日本円で10万円なり!

 「ブロロロォォー」 ロシア製のオンボロバイクにまたがり、遊牧民のおやじ「ミャグマ」とチョロート川に向かっていた。日本から移動用に持ってきたマウンテンバイクはモンゴルの草原では通用せず、早々にお払い箱となった。やはり馬かと思ったが、去年の散々な経験がその考えを打ち消した。そこで物好きなミャグマがバイクをだしてくれたという訳だ。
 
しかしオフロード用とはいえ、でこぼこ道を行くバイクはひどく揺れ、すごいホコリをあげる。しかもテントに寝袋に炊事用具に釣り道具、荷物を満載に積んだため、後部席は座るスペースがほぼ無い状態。俺はケツを半分浮かせ、ミャグマの体にしがみつき、ただただチョロート川に着くことを祈った。さすがにバイクが野犬に追われることはなかったが、今年もやはりケツの皮がすりむけ、バイクの暴走に死を予感し…。太陽が西の空に沈む頃、やっとチョロート川にたどり着いた。馬であろうとバイクであろうと、ひたすら遠いチョロート川、ここが釣り人にとってアジア最後の楽園であり続けるのはそのためではないだろうか?

 今年は、前年115cmを釣った所から20kmほど下った「風の草原」地区からスタート。ここはモンゴルでタイメン釣りをする人なら誰もが知る大物ポイント。ここには前年世話になった釣り名人のおやじが住んでいる。彼が語るには100〜160cmのタイメンを生涯に300匹釣ったとのこと。また、1986年に日本人が尋ねてきて、彼の案内によって120cmの大物があがったらしい。その当時モンゴルは共産主義下にあり、日本人がここまでくることは稀。おそらく開高さんか、調査隊として先に乗りこんだ常見さん(バイト社オーナー)である可能性が高い(実際に二人とも近辺で120cmのタイメンを釣っている)。
 さて実釣のほうは完敗であった。やはり有名ポイントだけにタイメンはスレていた。この時、釣り人に会わなかったが、海外からのツアーフィッシャーマンがよく来るそうだ。3日間粘ったが、ミノーにスプーンにスイムベイト、何を投げても釣れるのはレノックとハイルスだけだった。しかし、釣り名人の息子に連れられて行った崖の上からは、流れの中で泳ぐメーターオーバーを何匹も見つけることができ、また夕日が沈む頃、深場からボォーっと浮いてきた130cmクラスには本当にどぎもを抜かれた。
(左写真)チョロート川「風の草原地区」。 130cmクラスが浮いてきたのは写真中央。
(右写真)釣り名人の息子(双子)と娘。この日釣ったレノックをこれから料理。

 次に訪れたのが「オオカミ山」地区。「今年おまえがここに訪れた最初の外国人だ!」と言われたほどの秘境。山間に数軒のゲルが点在し、とてもヒッソリとしていた。近くの集落に暮らす遊牧民から馬を借り、川を渡って山を越え、ここに着いたときには夜の11時を過ぎていた。昨年とは比べものにならないほど乗馬は上達していたが、夜にガレ場の峠を越えなければならず、辛く恐ろしい道のりだった。
 途中、モンゴル人の釣りキチ少年バイラーと出会い、こいつも「タイメン捕獲隊」に参加することになった。バイラーのタックルはとてもシンプル。木に巻きつけた太すぎるナイロンライン(30号ぐらい?)、それに結ばれたネズミルアー(自作)、ただそれだけだ。しかしそのタックルで先月に140cmクラスの大物を仕留めたというから恐れ入る。自分とほぼ同じ大きさの魚を?たった一人で? 「釣りキチ三平」のような少年がここにいた。恐るべしモンゴル少年、そしてチョロート川!
 到着初日、川沿いの高台にテントを張り終え、深夜1時過ぎに釣りを開始した。途中ミャグマとバイラーは疲れて寝てしまったが、俺は朝の5時まで粘りファーストタイメンを釣り上げた。83cmと小ぶりだったが、ここまでの道のりが険しかっただけに感動につつまれる。

 
使用はライトな日本式雷魚用ライトタックル。ロッド=OFTの雷魚68、リール=シマノのコンクエスト201、ライン=PE80lb、ルアー=へドンのビックバド(ネズミに似せるため、ブレードを外してフェザーのしっぽをつけ改造)。急流の中層をゆっくりただ巻きしてる時に突然のアタック。80cmクラスにはヘビー過ぎるタックルであったため、あまり引きを楽しむことはできなかった。やはりタイメンは1mを超えてから本当のタイメンになるのだ!
(左写真)チョロート川「オオカミ山地区」。写真中央の岩脇から110cmのタイメンが飛び出した。
(右写真)83cmのファーストタイメン。小さいながら威風堂々!

 翌日は昼間の下見で数多くの大物を発見したポイントに移動。ビックバドを投げ続けること1時間、ピックアップ寸前に大型タイメンが 「ガバッ」 と飛び出した。その後はまるで夢の中の出来事のようではっきりしないが、記憶の断片をつなぎ合わせるとこうだ。

 
真夜中、突然牙をはやした巨大な顔が水中から現れるというホラーチックなアタックに始って、ヘビータックルを使う自信から強引に闘う。しかしタイメンは手がつけられないほど暴れ、ローリングジャンプと満月状態のロッドに弱気になる。なんとか岸まで寄せるが、タイメンの皮膚が硬すぎて自作ギャフが刺さらない。しかし最後はバイラーがえらをつかみ岸にあげる。横たわる大物を前に 「ウォー」 という叫び声をあげながら3人で抱き合う。110cm、推定13kg、メス。ついに怪物の女王様を釣りあげたぜ!
 
一方、フレッドアボガースト社のジッターバグ(ジョイント18g)を投げていたミャグマには7匹のレノックと73cmのタイメンが釣れた。さらに一度すごいアタリがあり、何もできないままバレてしまった。強気一辺倒のモンゴル人が 「タケー!タケー!」とビビリながら助けを呼ぶ姿は滑稽だったが、それほどの大物だったということだ。このポイントには何か得体の知れないものが確実に存在する! そう確信しながらも、体力も装備も限界にきていた俺達は次の日、岐路についた。
110cmのタイメン! 俺より大きな頭、そして拳が二つはいる口。魚という枠を超えたその存在感はまさに「鬼」のよう!