世界怪魚釣行記 TOP  タイ釣行3&4編
タイ釣行1&2編 2001・2002年
アメージングフィッシングinタイランド Part1
1mを超えるジャイアントスネークヘッドを追い、タイの西の果て、ミャンマーとの国境に付近に位置するカオレムダムに潜入! そして、そこで偶然出会ったタイ人アングラー達、彼らに連れられバラマンディに初挑戦! でも、バラって野池で釣るもんなの?
Khaoleam Dam(SangkhiaBuri)
カオレムダム(サンクラブリー)

 タイの首都バンコクから西に350km。世界自然遺産のジャングルから流れる水がせき止められた巨大人造湖(南北約50km)。北西に位置するサンクラブリーは小さな町だが、タイの釣り人なら誰もがあこがれるシャドー釣りの聖地。また個人旅行者向けのガイドブックにも載っており、ゲストハウスが結構ある。旅的フィッシャーマンにはうってつけの湖。

タイ釣行1 2001年

 2001年秋モンゴル釣行を終えた俺は、陸路で中国・ラオスを抜けタイにたどり着いた。ここには東南アジア最強の怪魚ジャイアントスネークヘッド(現地名プラァシャドー、以下シャドーと表記)が棲んでいる。俺がこの魚と初めて出会ったのはチェンマイ、当時親しくしていたタイ人と行ったダムで釣ったものだ。40cmの小物だったが、引きの強さとスピード、そしてなによりバズベイトによく反応するという習性に興味をもった。その友人が口癖のように言っていた 「カンチャナブリーの奥にあるカオレムダムには1mを超すシャドーがいる」 という言葉はいつも頭の片隅に残っていた。そこで今回旅のラストをここでおくるべく、遥々やってきたという訳。

 カンチャナブリーからオンボロバスに揺られること5時間あまり、急勾配が続く山道を抜けサンクラブリーという町についた。メーターを超える巨大なシャドーがここにいる、そう考えると胸の高鳴りを抑えることができなかった。しかし、そんなドキドキとは裏腹に第一回カオレム釣行は「情けなく悲しいもの」であった。実はお金が無かったのだ!タイに入った直後無一文になった俺は、バックパッカーにとって最大の屈辱となる資金送金を日本からうけた。それで帰りの飛行機のチケットは買えたが、残ったお金は約9000円。これで6日間シャドーハントを行わなければならない。1日わずか1500円。これではボートマンも雇えない。ここまで来てオカッパリ…?

 貧乏フィッシャーマンの俺は初日、オカッパリからシャドーハンティングをはじめた。しかしここは東南アジア、湖のほとりは水上家屋でうめ尽くされ、ポイントが無かった。周辺をウロウロすること30分、それでもなんとか35cmの子シャドーとストライプスネークヘッド(現地名プラァ チョーン)を釣ることができた。ちなみにポイントは町民水泳場わきの水草地帯、子供が近くでバシャバシャやっていた…。タックルはリールがアンタレス、ロッドが中国で買った折りたたみ式鯉竿スピニング用(旅の途中でメインロッドを無くしてしまい、しょうがなく使っているもの)。投げづらく普段とは比べ物にならないほどヘボいキャストだが気にはしなかった、釣りができるだけまだマシだから…。
 翌日、
大物求めてボートをかりる。しかし、1時間50バーツ(約150円)という安さに騙され乗りこんだのはオンボロボート。おまけに固定式オールはなく、代わりに渡されたのはカヌー用パドル。向かい風が強く、漕いでも漕いでも先に進まず、たどり着いたのは前日と同じ水泳場わきのポイント。こんなことなら歩いたほうが良かったと思ったが、バズベイトを結び早速キャストを開始すると突然「ボォーン」、ブルーカラーに輝くグットサイズがヒットした。61cmとシャドーとしてはまだまだであるが、その美しさと力強さに目がウルウル!
手コギボートで釣った61cm。写真では分りずらいが珍しい「水色ボディ」が美しい!

 そして翌々日、とうとう俺はシャドーハントの秘密兵器を見つけた! 場所は宿から歩いて3分の所にある「ミソンパンラフトハウス」という釣り宿(ここの主人Mrサンゴップは釣り人から最も尊敬を集め、いわば「タイの村田基」といった存在。今まで数々のビックシャドーを仕留め、4年前には9kgという超ランカーを手にしたそうだ)。ここを訪れた俺はボートガイド1日1500バーツ(4500円)という値段に目が飛び出し、スワンボート(1時間40バーツ)をかりて釣りを開始した。手が自由になって良いだろうと思われたこのボート、実際湖にでると真直ぐ泳がない。おまけに風が吹くとクルクル回転し方向が定まらない。しかし、手漕ぎボートより移動力があり、水上家屋地帯から抜け出すことができた。それから俺は毎日のようにスワンで湖に出撃するのであった。 そんな風変わりな日本人をサンゴップはいつも笑顔で迎えてくれた。
 
そして、最終日。いつものようにスワンボートで漕ぎ出すが、太陽が容赦無く俺を照りつける。しかし少数民族の子供達が 「キャーキャー」 声援を送ってくれるので楽しい。今日は遠出してみようと思い、湖にそそぐソンガリア川を遡った。ボートは風にあおられ操作が困難だったが、ワンドの入り口が岬状になり、アシが生い茂るポイントにたどり着いた。「水通しが良く、水草がからみ、なおかつ深場に隣接する」というシャドーにとって絶好のポイント。バズを何度か通したその時、「ボォーン」と何かが飛び出した。大きくアワせると魚は力強くロッドを引きこんだ。その引きにスワンはクルクル踊り、俺は「アン ドォー トローワ」と掛け声をかけながらファイト。何度かの引きこみに耐え、ハンドキャッチしたのは63cmのグットサイズ。腹から背中にかけてバイオレットカラーが美しかった。
(左写真)スワン号と俺。タイ国最強の釣り宿ミソンパンラフトハウスにて。
(右写真)
スワンでとった63cm!たぶんIGFAスワンボートクラス世界記録?(笑)

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タイ釣行2 2002年(スネークヘッド編)
 2002年11月、約1年ぶりに訪れたカオレムダムは何一つ変わっていなかった。ただ一つ俺の懐具合を除いては…。前年金欠のため満足な釣りができなかった俺は、この年もモンゴル・中国・ラオスを旅してタイにやって来た。もう一度怪魚シャドーと闘うためだ。節約に努めたこの旅、お金はまだたくさん残っている。これでボートマンを雇い釣りに集中することができる。今回は前年のような情けない思いはしないだろう、そしてモンスターに会える、そう思っていた…。

 
しかし実際ボートガイドを雇ってみたがいまいちパッとしない。50cm程度ならポツポツ釣れてくるが、モンスターの気配は無かった。これではスワンと変わらない釣果。ガイドは「増水期の今はオフシーズンで大物は釣れない!」と言うばかり、確かに釣り人の姿はどこにも無かった。しかし俺にはやつのポイント選択が気にいらなかった。魚が方々に散る増水期はポイントの絞りこみが不可欠だが、やつは適当に船を進めていく。また諦めも早く、すぐに時期の悪さを口にする。俺は「駄目なときでもそれなりの釣りを組み立てる」、それがプロだと思っている。釣りに妥協を許さない俺はタイ人ガイドに愛想を尽かし、再びスワンで湖に漕ぎ出した。
 
1人になった俺は、オフシーズンでは納得サイズにあたる60アップを釣り上げた。しかしスワンでは移動に時間がかかり、町から周囲1kmを探るのがやっと。「もっと奥地で思う存分釣りがしたい」と思うようになった俺は、湖畔で小さな食料品店を営むスッチャイというオッサンをボートマンとして雇った。やつは釣りのことは何も知らないがボート漕ぎの腕は一級品。おまけにタイ人には珍しく時間に正確だった。しかし、スッチャイと共に釣りを開始して1週間、苦戦が続いた。スッチャイが釣りを知らないということもあったが、旅人の俺が開拓するにはここはあまりに広すぎた。湖の地図を作りながら、まだ見ぬモンスターを夢見る日々が続いた。
 この日もそんな手探り状態、朝からソンガリア川を遡る。アタリは途絶え、持病の腱鞘炎のため手がしびれていた。スッチャイにマッサージをしてもらいながら、キャストを続けるが満身創痍の状態。しかし、川が大きくカーブするポイントにさしかかった時、岸際に生える立ち枝の脇から泡がたつのが見えた。何気なくバズベイトを通すと、いきなり「バフッ」、 何かが食ってきた。おもいっきりアワせ、強引に立ち枝の中からだす。しかしそいつは締めこんだドラグをズルズル引きだし暴れまわる。湖底への突っ込みを耐え浮かせると背中がバイオレットに輝くシャドーが現れた。しかしそいつはスッチャイの不器用なネットサバキを逃れ、船の周りをバシャバシャ泳ぎまわる。1分後なんとかネットにおさまり、船に横たわったのは69cm、グットサイズのシャドーだった。
(左写真)スワンボートでとった60cm。ソンガリア川にて。ルアーはゲイリーバズ改。
(右写真)スッチャイと共に捕った69cm

 カオレムで奮闘すること2週間。俺の観光ビザは残り5日となっていた。またシャドーハントの方もその後はイマイチ。62cmのまあまあサイズは出たが、モンスターは影を潜めていた。そこで俺は一度カンボジアに出国し、観光と釣りを楽しむことにした(2年前アンコールワットを訪れた俺はそのお堀で釣りを楽しんだ。雷魚のアタリがバコバコあり、その興奮をもう一度味わいたかったのだ)。朝早くバンコクを出て昼過ぎ国境についた。そこからはトラックの荷台に乗せられ、デコボコ道に揺られること8時間、シェムリアップ(アンコールワットがある町)についたのは夜8時だった。
 次の日、世界遺産アンコールワットには目もくれず、その遺跡を取り囲むお堀に出かけた。2年前と同様、水草が美味しそうに生えている。周りを見まわしても釣り人は全くいない(当然だが)。早速タックルをセットし、キャストを開始した。水草の際でフロッグをドックウォークさせると、1投目からあたりがあった。フッキングはしなかったが、その後も「バフッ」という捕食音は続く。しかしここに住む雷魚はストライプスネークヘッドといって、日本のそれとは異なりだいぶ小型。それだけになかなかのらない。しかし、大和魂を持つ俺はフロッグにこだわった。そして粘ること2日、小さいがクメール雷魚は俺の手に落ちた。「アンコールにおいて、フロッグで雷魚を釣った最初の人間だー!」と喜ぶ俺に、後ろで見学していたバイクタクシーの兄ちゃんは呆れ顔、たぶん心の中では「そんなやつお前だけだ!」とつぶやいていたに違いない。
(左写真)カンボジアが誇る世界遺産「アンコールワット」。
(右写真)小型のストライプスネークヘッド(現地名トライ プトー)。

 さて、カンボジアからタイに戻ってきた俺はすぐさまカオレムダムに引き返した。今回はシゲさんという日本人アングラーと一緒だ。彼はシャドーに魅せられタイに住みついた究極の雷魚マン、1ヶ月前にはタイ人のボートガイドの娘と結婚している。またシャドー釣りのHPを開設しており、いわばシャドーの日本人第一人者。彼のHPをよく眺めていた俺は一緒に釣りをするのが待ち遠しかった。しかし1つ不安があった。彼が嫁さんのノックを連れてきたことだ。俺の家には「女は釣りに連れていくな!」という家訓がある。女は釣りに行くと暑いだの汚いだの「ギャーギャー」騒いでロクなことがないからだ。
 
しかし翌朝、そんな不安は吹き飛んだ。ノックは船に乗り込むと1人ウォークマンを耳にあて静かにしている。さすがシゲさんの妻、釣り師の妻たる者こうでなくてはいけない。そう感心していると、俺のバズベイトに突然のアタリがあった。ポイントはビークリー川の下流、俺が前から目をつけていた通称「一本木ポイント」だ。一度目のアタリでのらずに沈んだバズベイト、しかしアピールのために付けていたワームのテールがゆらゆら、ゆっくり巻きワームをスイミングさせるとシャドーはもう一度食ってきた。雷魚ロッドを曲げ、ドラグをズルズル引き出す激しいファイトの末、あがってきたのはバイオレットカラーが美しい66cm。この1匹は今後に期待をもたせた。
 
だがその後、3日間にわたる釣行は散々だった。翌日ミソンパンラフトハウスのガイドを雇うが、相変わらずの右往左往ぶりに狼狽し、ドラグの調整ミスで大物を2度バラし、攻めすぎたビークリー川は沈黙するばかり。やっと釣れたのがシゲさんの58cm・俺の55cm、モンスターには程遠いサイズだった。
背中がバイオレットに輝く66cm。

 しかし3日後、あれほど沈黙していたカオレムが蘇った。その朝スッチャイは用事があり、代わりに来た息子のルーチャイのボートでソンガリア川に向かう。その強面からは想像し難い丁寧なオールさばきに気分良くキャストを開始。その直後からバコバコアタリがあり、続くこと17回。そしてむかえたのは川が大きく曲がる通称「スーパーカーブ」。アシが生える岸際にゲーリーバズを投げると 「ボォーン」、61cmのバイオレット系シャドーが飛び出す。続いて300mほど上流の「木がオーバーハングする深場」、同じバズに食いついたのは背鰭に黒いドットマークが並ぶレアもの60cm。久しぶりの爆発を喜ぶ俺に、無口なルーチャイも笑顔で応えてくれた。
 
午後になり、用事を終えたスッチャイと共に再び出撃した。日差しが強かったが朝の好調は続き、遊び半分で使っていたライトタックルに55cmのシャドーがヒット。普段は軽く揚がってくるこのサイズも、14lbラインではヒヤヒヤドキドキを楽しめた。
 
そして、日が傾き始める5時過ぎ、ポイントはやはり「スーパーカーブ」だった。枯れアシの間を泳ぐバズに引き波を立て 「ボォ〜ン」 と出たのは、66cmのデブシャドー。先日ビークリーで釣った66cmとは段違いの太さ、スッチャイのネットを3度も逃れ、ボートの周りを暴れまくった。

 この日を最後に俺の旅は終わった。12月から1月にかけてカオレム最悪の時、やはりモンスターを手にすることはできなかった。しかし、ポイントを徹底的に絞り込むスタイルと俺の選んだポイントは、この時この場所で一番確かなものだったと思う。俺はそれを証明するために再びここを訪れるだろう。
(左写真)60cm。レアな「背鰭ドットマーク入りシャドー」。カオレムダムで釣った203匹の中で唯一。
(右写真)66cmのバイオレット系シャドー。ルアーはゲイリーバズ改+ズームのシングルテイルグラブ。このぐらいの頭の大きさになると「シャドー持ち」が辛くなってくる。

タイ釣行2 2002年(バラマンディ編)
 2002年11月、首都バンコクから東に向かうこと約70km、「チャーチャンサオ」という町にたどりついた。都心から高速を使ってわずか1時間という近距離にもかかわらず、ここはエビの養殖業が盛んな田舎町、そして神の魚「バラマンディ」がウジャウジャ生息している。俺がここを訪れたのはタイ人アングラー「ジャクリット」と「オーム」の誘いを受けて。奴らとは数週間前「カオレムダム」のホトリで偶然出会い、意気投合し酒を飲んだ仲。その時奴らが「俺の町にはバラがウジャウジャいるぜ!今度遊びに来ないか?」と誘ってくれた。バラを釣るためにオセアニア遠征を考えていた俺は、タイという身近な国で安上がりに目的を達成できるのはラッキーだと思い、その誘いに飛びついたのだ!


 さて話は飛んでバラ釣行初日。ジャクリットの運転するピックアップトラックに乗って釣り場にむかった。何にもない田舎町を走ること5分、車は急に止まった。ジャクリットは「到着したよ!」 と一言。「え!?」 フロントガラス越しに見えるその光景に俺は驚いた。そこはメダカが泳いでいそうな小さな野池。周囲約30m、キャストをすると簡単に岸に届きそうなミニ野池、こんな所にあの怪魚バラが棲んでいるのだろうか?

 
クリスの説明によると、ここタイではバラはスーパーの食品コーナーに並ぶ身近な魚。この町では養殖業が盛んでいたる所に放流されている。そして、業者が養殖を止めた池では、土地の所有者が許可をすれば釣り放題という訳だ。
 
少しだけ失望する俺を尻目にジャクリットとオームはタックルの準備にとりかかった。しかしジャクリットのタックルを見て俺は再び驚いた。ウルトラライトのロッドに超小型リール、巻かれている5lbラインの先にはメップスアグリアの1番(スピナー)、まるで渓流の初心者のようなタックル。神の魚をこんなタックルで…? 大丈夫…?
 
釣りを開始して15分、隣から「タケェ!」と俺を呼ぶ声がした。振り向くとジャクリットのロッドが折れんばかりに曲がっていた。かなりのライトタックルを使っているとはいえ結構良いサイズ、ジャクリットの顔は真剣そのものだ。バラはジャンプを繰り返し、小さな池を縦横無尽に逃げ回る。しかしタイ人には珍しい繊細なロッドさばきにバラはクリスの手におさまった。少し黒ずんではいたが美しいバラ、初めて見る神の魚に感動しながらも、スピナーを持っていないことを悔やんだ。その後、クリスはルアー釣りにおいて激レア物のジャイアントグーラミ(現地名 プラァレッ)をゲット。地元民の強さをまざまざと見せつけた。この日、俺は日の入り間際に20cmのベイビーをゲット、小さいながら初めてのバラに酔いしれた。
(左写真)チャーチャンサオで釣具店を営むジャクリット。後ろに写るのが周囲30mの野池。
(右写真)ルアーではレアなジャイアントグーラミ(学名Osphronems goramy)にジャクリットも大喜び!
 ジャクリット家に居候して3日が過ぎた時、彼のコネでカジキ釣りの国際大会に出場することになった。舞台はタイ東部の港町「サッタッヒー」。この大会にはタイ・中国・日本・マレーシア・米国などからの参加者があり、中国釣具メーカー「VIVA」の主催だった。「ワールドカップ初出場だ!」と喜ぶ俺。しかし、レースが始まり船が海上に出たその時、ジャクリットが一言「タケのタックル忘れちゃった。えへ!」。タイ人らしい屈託のなさに怒りも沸いてこなかった俺は、終日イカ釣りを楽しむことになった…。一方、ジャクリットとオームのロッドにはバラクーダやカマスサワラ・エイなどが次々とヒット。俺も二人の休憩の合間にその引きを楽しんだ。そして大会開始から12時間後の夜明け頃、オームのロッドが突然ひん曲がった。巨体のオームが船べりにはりつけられる激しいファイトの末、釣れてきたのはこの大会の部門別優勝魚となったカマスサワラ(現地名 プラァ インシー)。ちなみに餌は俺が釣ったイカだった…。大喜びの俺達はビールで乾杯、朝から宴会が始まった。しかしその時、中国人の巧妙な罠にハマッていたことに俺達は気づいていなかった…。
  オームが受け取るはずだったトロフィー、なぜか同船していた中国人の手に渡った。なんと、中国主催の大会に中国人優勝者が欲しかったVIVAは、オームの釣った魚を中国人が釣ったものとして記録していたのだ。恐るべし中国人、底無しの名誉欲!一方オームは代わりに高価な釣具セットをもらいご満悦。名誉より実をとるタイ人気質をさらけ出した。それぞれのお国柄が色濃く出たこの大会、俺は非常に面白かった…。
(左写真)初めてのエギングは結構楽しかった。ボトムポンピングでタコも釣れたよ!
(右写真)
オームが釣ったメーターオーバーのプラァインシー(現地名)。

 訳の判らぬ国際大会から戻った俺は再び野池めぐりをはじめた。この時俺が思っていたのは 「ここまであまり良い釣果が得られなかったのは、バラムンディというイメージに捕われ過ぎた釣りを行なっていたからではないか?」 「野池のバラにはフローティングミノーを使った定番スタイルはあまり効かないのでは?」 ということ。俺はジャクリットの地元スタイルに、普段日本で行なっているスタイルをミックスしてみようと思った。

 
この日連れてきてもらったのはジャクリット家から1kmの所にある野池。ここはエビ養殖に使う水の貯水池、周囲500mと広く、中には12kgに成長するバラが棲んでいるらしい。そのスケールに反比例するかのように俺は先ずスピナーで釣りを開始した。
 
ブレードが回るか回らないかのスロースピードで引いてくると、ググッと魚の重みが伝わった。ライトタックルでその引きを存分楽しみ手にしたのはピンク色のカワイイ魚。クリスに尋ねると「プラァ タップティム」といって、ここらでは割と簡単に釣れてくる魚らしい。そして再びキャストすると「プラァ モーテー」というティラピアが釣れた。やはりスピナーは強し! この時、我が家に新たな家訓 「とにかく釣りたきゃ、スピナーを巻け!」 が加わることになった。
 続いて岸際に生い茂る水草の中にフロッグを投げ込む。ジャクリットによるとここにはストライプスネークヘッド(現地名 プラァ チョーン、以下チョーン)もたくさんいるらしい。キャスト開始直後からアタリがバコバコ、のることはなかったが池を一周すると17回もアタックがあった。そこでタイ製バズベイトプラグにルアーを変えると44cmのチョーンがヒット。なかなかのグットサイズに調子が乗る俺。また、このルアーにはバラも盛んにアタックし興奮の極みに…。
(左写真)ピンクカラーのプラァタップティム(現地名)。英名レッドデビル、学名Amphilophus labiatus。
(右写真)バラムンディ狙いのバイブレーションにきたプラァチョーンの40cm台。ここら辺ではグットサイズ!でもタイ人に食べられちゃった…。

 お次は本命バラムンディ。野池攻略のセオリーに従い岸際を徹底的に攻める。日本でシーバス釣りによく使うバイブレーション(マリアのマールアミーゴ14g)を岸と平行に引いてくると、型は小さいが元気の良いバラが頻繁にアタックしてくる。その中にはチョーンやルアーフィッシングでは結構レアなナマズ「プラァ コッ」がまじり、外道マニアの俺を喜ばせた。
 
その後数日間、俺は野池スタイルを貫き、徹底的に珍魚怪魚との闘いを楽しんだ。本場のバラ釣りとはあまりにかけ離れたセコイ釣り。結局釣り上げたバラは最大で40cmに留まった。しかし、まるで日本でバス釣りを行なっているような手軽さと、何が飛び出すか分らないドキドキを心から楽しんだ。

 
さて、彼らと共に過ごした1週間、タイ人の驚くべき習性に気づいてしまった。それは「タイ人の男は徹底的に働かない」ということ。エビの養殖製品を販売するジャクリット家、しかし働いてるのは女だけ。ジャクリットや父親は1日中釣りをしたりテレビを見たりブラブラしている。「俺のような遊び人には天国のような国だな、今度生まれ変わるならタイ人になろう!」 と思う俺だった…。タイという国は訪れる度に俺にささやく 「遊べ!遊べ!徹底的に…」、ここはアメージング タイランド!
(左写真)ルアーではレアなプラァコッゲーオ(現地名)。
(右写真)野池のバラムンディ40cm。このサイズはお子様、後ろに写る野池には10kgを超えるモンスターが。