
■回文(かいぶん)……………上から読んでも下から読んでも同じ文章
■童話集『斉藤さんの小さなお話』 作者:女優・斉藤由貴さん
■童話『くろいミツバチ・ナナとミニのおはなし』 作者:わたしです。
■童話『ママとあたしとウメボシと』 作者:わたしです。
■童話『クシュンな恐怖』 作者:わたしです。
■童話『アゴンを倒せ』 作者:わたしです。
■童話『海の栗』 作者:わたしです。
■童話『シロをさがして』 作者:わたしです。
■童話『ブルースカイを求めて』 作者:☆ちあき☆さん
■童話『ポケポケ物語』 作者:☆ちあき☆さん
■童話『天国の郵便局』 作者:さえさん
■童話『だいっきらい!』 作者:さえさん
■童話『あやめ記念日』 作者:ありすさん
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あなたは、「回文(かいぶん)」って知っていますか?
上から読んでも、下から読んでも、同じ意味のある文章になるものです。
例えば、下のものがあります。
◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎
3文字: さかさ〜逆さ
とまと〜トマト
5文字: しんぶんし〜新聞紙
たうえうた〜田植え歌
わにのにわ〜ワニの庭
にわのわに〜庭のワニ、二羽のワニ
きいろいき〜黄色い木
かいといか〜貝とイカ
7文字: たけやぶやけた〜竹やぶ焼けた
このこねこのこ〜この子、ネコの子
きぬたのたぬき〜砧(地名)のタヌキ
8文字: ねつきいいきつね〜寝付きいいキツネ
9文字: じいさんてんさいじ〜じいさん、天才児
11文字:このらいおんおいらのこ〜このライオン、おいらの子
13文字:かさとたいつについたとさか〜カサとタイツに、ついたトサカ
31文字:ながきよのとおのねぶりのみなめざめなみのりぶねのおとのよきかな
〜長き世の「とおのねぶりの(?)」皆目覚め、波乗り船の音のよきかな
◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎―――◎
あなたも、考えてみませんか??
(おわり)
あたいのなまえは、すうじの 32とかいてミニ。 ミツバチの おんなのこ。
まわりのみんなは、きれいなキイロいカラダだけど、あたいは うまれつきクロい。
そして、みんなより カラダが ふたまわりくらい ちいさい。
だから、むかしから いじめられていた。
ほんとうは あたいくらいの わかいミツバチは、すのなかで おしごとをする。
やるのは、あかちゃんのおせわや、おそうじ。
だけど、じぶんより カラダのおおきな あかちゃんじゃ、おせわなんて できない。
また、おそうじをしていても、まわりのみんなは、いじわるして じゃまばかりする。
あたいはくやしくて、まけないように がんばってきたけれど、どうしようもなかった。
だから、じょおうさまに おねがいして、はなのミツやカフンをあつめる おしごとに
かえてもらっんだ。
この おしごとは、ふつう おばあさんミツバチがやっている。
じぶんのカラダの はんぶんぐらいの おもたいミツやカフンをあつめて すにはこぶ。
これを 1にちに なんじゅっかいも くりかえす。 とても たいへんな おしごと。
そして、すのそとは きけんなテキが たくさんいて、いつ しぬのか わからない。
だから、わかいミツバチたちは このおしごとを やりたがらない。
しかたないので、おばあさんミツバチたちが このおしごとを やっている。
でも、かえってこれない おばあさんミツバチが、まいにち かならず いる。
しぜんに しんでしまったり、ほかのどうぶつに たべられたり、しているそうだ。
じょおうさまは、ビックリされたけど あたいの ねがいを かなえてくださった。
このおしごとは とてもつらいけど、あたいは きにいっている。
そとを とんでいるときは、ひとりになれる からだ。
また、おばあさんミツバチのなかには しんせつな なかまも すこし いる。
そりゃあ、いじわるな ミツバチも いるけど。
あたいは カラダがちいさいから、いちどに たくさん はこべない。
だから、なんかいも なんかいも でかけて、みんなに まけないように がんばった。
あさから ばんまで やすまずに、まっクロに ひやけして はたらいた。
……もとから クロいから わからないけどね。
◆ ◆ ◆
そんな あるひ、あたいは みょうな ものを みた。
「はなびらが かぜにふかれて とんでいるのかな?」と、さいしょは おもった。
でも よくみると ちがった。 あたいと よくにた クロくて ちいさいミツバチだ。
でも あたまに シロい はなびらの おうかんを かぶっている。
おまけに、シロい はなびらの スカートを はいている。
「あんな おおきな ものを ヒラヒラさせて、とびにくいんじゃ ないのかな?」
あたいには、なぜ そんな かっこうを するのか よくわからない。
しばらく じっ〜〜と みていたが、がまんしきれずに あたいは こえをかけた。
「よう、あたいは ミニって いうんだ。 ちょっと はなしを させてくれよ。」
すると、そのヒラヒラは こちらを ちょっとみると、あわてて にげた。
でも ちいさなこえで「げっ、ふりょうだ!」といったのが きこえた。
「あいつだって、ヒラヒラじゃないか!」あたいは、くやしかった。
◆ ◆ ◆
それから おしごとの とちゅうで、そのヒラヒラを なんどか みかけた。
でも、このまえのことが あるので、こえをかけるのは やめておいた。
そらから ずっと、あめのひも かぜのひも あいかわらず ヒラヒラ していた。
あついひも、さむいひも、やっぱり ヒラヒラ していた。
「これは まわりで いじわるしている ミツバチたちより、こんじょうが あるかも。
いじわるする あいつらは、いつも なかまと いっしょにいる。
でも、あのヒラヒラは、いつも ひとりで とんでいる。
おなじ わかくて クロい ミツバチ という みかけだけでなく、かんがえかたも
あたいと にているかも しれないなぁ。」
そうおもうと、あたいは あのヒラヒラと ともだちに なりたくなった。
◆ ◆ ◆
あるひ、ヒラヒラに こえを かける チャンスが ついに きた!
ヒラヒラが、おとした はなびらを、あたいが ひろったんだ。
あたいは、いっしょけんめいに おいかけて、ついに ヒラヒラに こえをかけた。
「はぁはぁ、おい、ちょっと まってくれよ。」
すると ヒラヒラは、たちどまって ゆっくりと ふりむいた。
「げっ、あのときの ふりょうだ!」
そういって、ヒラヒラは うしろに いっぽ にげようとした。
でも あたいは、にげるまえに ヒラヒラの みぎうでを つかまえた。
ちょっと ムカついた。 でも がまんして、ひろった はなびらを みせて、ニッコリ
わらいながら、あたいは いった。
「これ、あんたの だろう?」
すると、ヒラヒラは ビックリしたあと、ちょっとだけ ニッコリして いった。
「ええ、そうよ、ありがとう。」
そして、あたいから はなびらを うけとると、ヒラヒラは とびさろうとした。
「あたいの なまえは、ミニ。 すうじの 32とかいて ミニ。」
すると、ヒラヒラは ふりかえり、こういった。
「わたくしは、ナナです。 すうじの 7とかいて ナナですわ。 オホホホ。」
そういって、ヒラヒラ……いいや、ナナは わらいながら とびさった。
あたいは ナナが みえなくなるまで てをふって みおくった。
◆ ◆ ◆
つぎのひ、おしごとの とちゅうで、ナノハナに とまっている ナナがいた。
あいかわらず ひとりぼっちだ。
キイロい ナノハナと、ナナのつけている シロい はなびらは、どちらも キレイだ。
「よう、どうしたんだよ、ナナ。」あたいは しんぱいして こえをかけた。
するとナナは、あっけらかんと「なんだ ミニか。」といったあと、「なんにも ござい
ませんわよ。」と おすましした。
「こんな ところで ひとりで いるのに、なやみが ないわけ ないだろう?」
そういって あたいは、ナナの かおを じっとみて つづけた。
「なんなら あたいが、おまえの はなしを きくよ。」
すると、ナナは かおを すこし かたむけ、にっこり わらって こたえた。
「なまえしか しらない あなたに、おはなしする ことは ございません。」
あたいは、あきれて いった。
「ナナ、おまえ〜 せいかく わるいな。」
ナナは すかさず、「ねじまがって いま〜〜〜す。」とこたえた。
あたいが「おまえ、ともだち いないだろ?」 ナナが「はい。」
あたいが「おまえ、さびしく ないのか?」 ナナが「ま〜ったく。」
あたいは、だんだん ムカついた。 でも それよりも さびしく なってきた。
そして ちいさなこえで ポツリと いった。
「ナナ、よかったら あたいが ともだちに なっても いいよ。」
すると、ナナは「まにあって いま〜〜す。」と いって とびさった。
あたいは かなしくなって、チェっと したうち して、ナナを おいかけた。
すると、おどろいたことに あたいと おなじ すばこに はいっていった。
どうりで よく みかける はずだよな。
すばこの なかには たくさんの ミツバチが すんでいる。
そうはいっても いままで きがつかなかった あたいは、かなりの おバカさんだ。
トホホ。
◆ ◆ ◆
それから まいにち、ナナの へやに むりやり あそびにいって、むりやり はな
しをした。
おせっかいだと おもったけれど、ほっとけ なかったんだ。
すこしづつ なかよくなって おたがいのことを しりあえてきた。
まずは なまえのこと。
あたいの なまえは、カラダが ちいさいから、『ミニ』にしたそうだ。
「たくさん たべて、たくさん うんどうして、おおきく なってやるぞ〜〜!」とがん
ばったが、ぜんぜん おおきくなれない。 くやしいが、しかたがない。
まわりのみんなは、「カラダがクロいから、『クロ』にしよう。」といったそうだ。
だけど じょおうさまが はんたいして、『ミニ』という なまえに なったそうだ。
あたいは、じょうさまが だいすきで そんけいしている。
だから、あたいは このなまえが けっこう きにいっている。
『ナナ』のなまえは、「おまえは できそこないの『ハチ』だから、すうじの8から1ひ
いた7だ」と、みんなが つけたらしい。
ひどい はなしだ。
ふたりとも こどものころから、カラダがクロいことで いじめられていた。
あたいは くやしくって、ことばや たいどが らんぼうになった。
よわい あたいを まわりから かくすために。
でも、ナナは ほかのミツバチに できないことを やって、みかえしている そうだ。
ナナがきている シロい はなびらは、とても めずらしい『にじのはな』だそうだ。
なんでも、『にじのはな』のミツは、あたいたちが あつめている レンゲのミツの ひ
ゃくばいの かちが あるらしい。
『にじのはな』がさいている ばしょは、ナナしか しらない。
そして、もし ほかのミツバチが そこにいきたくても、けっして いきて かえれない
そうだ。
だから、ナナは ヒラヒラの かっこうをして、いつも あそんで いられるんだ。
◆ ◆ ◆
そんな あるひ、おそろしい じけんが おきた。
いつも いじわるをしている ミツバチが、こっそりと ナナのあとを おいかけた。
そして、『にじのはな』がさいている ひみつのばしょを しってしまった。
それだけならば、まだ よかった。
あたいたち ミツバチに とって いちばん おそろしい テキの『スズメバチ』が、い
じわるミツバチの あとを つけて、あたいたちの すばこまで やってきたのだ!
スズメバチは、あたいたち ミツバチを たべる。
あたいたちミツバチを ころしたあと、ススメバチは ミートボールやハンバーガーにす
るらしい。
なかには、『いきづくり』といって、いきたまま かじる ざんこくなスズメバチも い
ると きいたことがある。
たまたま すばこから がいしゅつしていた あたいとナナが かえってみると……
たくさんの なかまが すばこの まわりで ころされていた。
たいていは、どこかが かじられていた。
なかで ふるえている なかまに きくと、たった いっぴきの スズメバチがやったら
しい。
どうやら、さんざん なかまを ころして、たべたあと、おなかが いっぱいになって
どこかへ とんでいったらしい。
「きっと、スズメバチは なかまを つれて もどってくる。」
「おおぜいで こられたら、このすは ぜんめつだ!」
「はやく にげよう!」
「でも、たくさんの こどもを はこびきれない。 みんな たべられる!」
「せっかく、くろうして ためた ハチミツを このまま おいて にげるのか?」
まさに、ハチのすを つついたように、いきのこった さんせんびきの ミツバチが さ
わいでいる。
「しずかに なさい!」じょおうさまの すんだ きれいなこえで みんなは だま
った。
「わたしたちは、スズメバチと たたかいます!」
じょおうさまが キッパリと せんげんしました。
まわりの みんなは おどろいて「おおおお〜」と うなります。
「しかし じょおうさま、どうやって たたかうのですか?」いちばん としよりが た
づねます。
「たたかう ほうほうは、ナナとミニが しっています。 あのこたちは、わたしたち『
セイヨウミツバチ』とちがう 『ニホンミツバチ』の えいゆうの こどもです!」
そう じょおうさまが おっしゃると、みんなは あたいたちを みました。
「『にじのはな』のさいている ばしょには、スズメバチの おおきな すがあります。
ナナがなんかいも ちかづいたのに、スズメバチが おそわなかったのは、ナナが『ニ
ホンミツバチ』だからです。
スズメバチが ナナを おそれていたからです。」
おうじょさまの おことばの おかげで、いままで あたいたちを いじめていた
みんなの かおが、そんけいするように かわりました。
◆ ◆ ◆
それから スズメバチたちが ふたたび おそってくるまでの あいだに、あたいた
ちは さくせんを たてました。
いきのこった さんぜんびきの なかまを、さんじゅうぴきづつ ひゃっこの あつまり
にわけました。
そして ひとつのあつまりで いっぴきの スズメバチを かこんで、おしくらまんじゅ
うをします。
そして あたいたちが ハネを ふるわせて、ねつを だします。
スズメバチは あたいたち ミツバチよりも ねつに よわいので、こうすれば あつく
て しんでしまいます。
こうやって せんとうの スズメバチを たおせたら、たぶん あきらめるだろう。
……これが さくせんです。
だれも おしえて くれていないのに、あたいとナナは、この さくせんが あたまに
うかびました。
◆ ◆ ◆
そしてすぐに スズメバチたちが あたいたちを たべるために やってきました。
あたいたちは、『おしくらまんじゅう』さくせんを じっこうしました。
スズメバチたちが いっかいで あきらめるかと おもったけれど、あまかったです。
じゅっかい さくせんを くりかえして、やっと スズメバチたちは あきらめました。
たたかいが おわると、あたりには せんびきのスズメバチと ひゃっぴきのミツバ
チが しんでいました。
◆ ◆ ◆
いちにち かけて、ミツバチと スズメバチの おとむらいが おわりました。
みんなは、ひきとめて くれましたが、あたいとナナは たびに でることにしました。
あたいたちを うんでくれた 『ニホンミツバチ』の ほんとうの おやは、むかし
スズメバチと たたかって、しんで しまった そうです。
たまたま いきのこった あかちゃんだった あたいたちを、じょおうさまが ひろって
いままで そだててくれた そうです。
だから、あたいたちは ほんとうの かぞくを さがしに いくのでは ありません。
まだスズメバチと たたかうほうほうを しらない 『セイヨウミツバチ』たちに あっ
て、じぶんで みをまもれるように するために、あたいたちは たびだちました。
あたいたちは こうして、あちらこちらの のやまを いまも たびしています。
もしも、ヒラヒラの はなびらを つけた ミツバチと、ちいさくて ブンブンげんきな
クロい ミツバチが とんでいたら、それが あたいたちです。
あなたが ハチミツを なめるとき、あたいたちのことを おもいだして ほしいな。
それから スズメバチを キライに ならないでね。
スズメバチも、ミツバチも、そして あなたも、みんな いっしょけんめいに いきて
いるのだから。
みんな ほかの いきものから いのちをもらって、まいにち いきて いるのだから。
……これで、ナナとミニの ものがたりを おわります……
(終わり)
「また、こんな悪い点数を取って。 もっと、勉強しなさい!」
また、ママに怒られた。今度のテストは、み〜んな、悪かったのに。
あたしは、だまって晩ご飯を食べる。
「ママが小学生だった頃、勉強も運動も、クラスで一番だったのよ。
なのに、なんであんたは…。」
ママは、お小言を言いながら、食べている。
娘のあたしが見ても、器用だと思う。
ふと、ママとあたしのハシが、テーブルの真ん中の、赤いウメボシが
2つ載ったお皿の上で、会っちゃった。
「このウメボシ、なんか変わってるね?」
ママは「となりのおばあちゃんがくれた100年前のモノだって…」
と答えた。
ふたりは、ウメボシに目がない。
次の瞬間、ふたりは大いなる期待と共に、ウメボシを食べた!…それ
が失敗だった。
クラクラと激しいめまいがして、あたしは気を失った。
あたしが目を覚ましたとき、あたしはママになっていた。ママは、あ
たしになっていた。
どうして??あたしに聞かれても、小さいから分かりません!!
◆ ◆ ◆
次の日、ママはあたしとして学校に行くことに、あたしはママとして
お家に居ることになった。
朝ごはんをあたしは初めて作ったけれど、散々な目に会った。ごはん
はガジガジ、おみそしるはしょっぱい。目玉焼きはまっ黒。お料理って
こんなに難しいのか…。
結局、ママもあたしも、朝ごはんはあきらめた。お昼までもつか、心
配だ。
ママは、うらましそうな顔をして、学校に出かけた。
それから、あたしは、たまっていた洗濯物を片付けようとした。でも、
慣れない事は、やっぱりやらない方がいい。お気に入りのセーターは小
さくちぢみ、白いブラウスはピンクに染まった。…こりゃ、もう着れな
いなぁ。
お掃除していて、ハタキをかけていると、花びんが落ちてわれちゃっ
た。片付けているはずが、どんどん部屋が散らかっていく。
ふだんなら、ママはおせんべを食べながらテレビを寝転んで見ている
時間なのに。
「こんな筈じゃなかったよ〜!!」
あたしは、お昼ごはんのカップラーメンを食べながら、天に向かって、
叫んでいた。
◆ ◆ ◆
その頃、ママは学校で大活躍(?)だった。
理科の授業では、先生の「氷が溶けたら何になりますか?」という質
問に、「春になる」と答え、笑われた。
算数の授業では、教科書を忘れて、ろうかに立たされていた。
体育の鉄棒では、逆上がりが一回も出来なかった。跳び箱は、5段積
んであるところへ、体当たりしていた。
給食の時間には、おかずのカレーをひとりで3杯もお代わりして、み
んなが目を丸くしたんだって!!
今ママはあたしなんだから、もっとちゃんとしてよ…真相を仲良しの
ちぃちゃんから聞いて、あたしは思ったもんだった。
◆ ◆ ◆
その夜、ふたりとも、疲れきってフラフラだった。
晩ご飯は、なんとカップラーメンだけ!
あたしが出来るのは、コレだけ。だから仕方が無い。
ふたりは、黙ってズルズルと食べていた。
ふと、また、ふたりのハシが昨日の残りのウメボシの上でぶつかった。
「ひょっとして、これのせい?」
「まさかね?あはは」
そう言って、ふたり同時にウメボシをかじった。
「き、来た〜〜!」
またまた、クラクラと激しいめまいがして、あたしは気を失った。
目が覚めると、あたしはあたしに、ママはママに、戻っていた。
「ラッキー〜〜!!」ふたりとも手をとりあって喜んだが、そう世の
中は甘くなかったのだ。
ママとあたしは、おなかを壊し、一週間入院したのである。100年
前のウメボシ、恐るべし!
◆ ◆ ◆
退院後、ママとあたしは、前より仲良くなった。お互いに相手の苦労
が分かったからだった。
仲良く晩ご飯を食べていると、玄関のチャイムが鳴った。
ママが話しているが、となりのおばあちゃんらしい。
「100年前のフナズシが出てきたけど、食べないかい?」
かんべんしてくれ〜〜!!あたしは心の中で叫んだ。
(おわり)
だから、あたしは春がきらいなんだ。
商店街を歩くと、春を喜ぶ、明るいウキウキするような歌ばかり、かかっている。
街を歩く人はみんな、ニコニコと笑っている。
青い空にヒバリは声高く飛んでいる。
昔いた『美空ひばり』という大歌手の芸名に、ピッタリな景色だ。
咲き誇るサクラは、あたしも、キレイと思う。
何も無ければ、あたしだって、春は好きだ。
そう、あれさえ無ければ・・・。
あたしは、花粉症なのだ。
◆ ◆ ◆
「花粉症なんて、めずらしくないよ。」
そう思うあなたは、わかっちゃいない。
花粉症は、時に人を死に追いやるのだ。
クシャミをした途端に、肋骨を骨折した…クシャミをした途端に、ハンドルを切りそこね
交通事故を起こす…そんなことじゃなの。
あたしのクシャミは、周りに恐怖を与えるの。
◆ ◆ ◆
この前、公園でクシャミをすると、散歩していた犬がみんな立ち止まり、いきなり「ウ
オオオォ〜〜ン」と遠吠えを始めちゃった。
その時はあまり気にしなかったけど、夕方「クシュン」とクシャミをすると、飛んでい
たコウモリがクルクル回り始め、地面に落ちちゃった。んんん??
で、先週の日曜日、水族館のイルカの水槽の前で、クシャミをすると、イルカが水槽の
壁にぶつかっちゃった。ホントに痛そうだったよ。あれれ???
そして、昨日、クシャミしたら、お家の窓ガラスが、みんな、割れちゃった!
軽く、可愛く、「クシュン」とクシャミしただけなのに。
何か変だと、ようやく、あたしは気づいた。
◆ ◆ ◆
「花粉症ですね。」待合室で散々待たされて、診察が終わった後、お医者はそう言った。
「えっ?」あたしは耳を疑った。
「ただの、普通の花粉症です。」お医者は、あたしの目をみつめ、ダメ押しをした。
「あの〜〜、クシャミをしたら、犬が遠吠えしたり、コウモリが落ちたり、イルカがぶつ
かったり、ガラスが割れたりしたんですけど…」あたしは、すがるようにお医者に言った。
「たまたま、でしょ。ノドがはれているから、トローチを出しますね。」お医者は、あたし
に背中を向け、カルテに何か書きながら、そう言った。
あたしは、納得できなかったが、病院を後にした。
◆ ◆ ◆
あたしの友だちに、物知りがいるので、相談した。彼は、あたしの話を聞き終わると、
しばらく考えていたが、一枚のDVDをPS2にセットした。
「えっ、なんか分かったの?」あたしの言葉をさえぎって、彼はリモコンを操作している。
「まっ、コレを見て。」彼は、テレビの画面を指差す。
あたしは身体を、思いっきり乗り出して見る。テレビに映っているのは……。
「このツバサのある三角頭の、何?」あたしは、聞いた。
「怪獣、ギャオス。キミは、もうすぐ、こうなる!」そう彼が言い終わる前に、あたしは
彼の肩をつかまえて、揺さぶっていた!「な・ん・で、あたしが、怪獣になるのよ!」
◆ ◆ ◆
しばらくして、やっと、あたしの気持ちが、落ち着いた。
「超音波って、知ってる?」彼が、今度は慎重に言葉を選びながら、説明を始める。
あたしは、横に首を振った。
「耳に聞こえない、高い音のことさ。犬やコウモリやイルカは、超音波を使って、生きて
いる。キミは、クシャミの時に、超音波を出しているんだ。その超音波が、犬たちをおか
しくしたんだろう。」
すかさず、あたしは、「人間も、超音波?を出せるの?」と聞いた。
「普通は出せない。花粉症で、ノドがはれたことが原因かもしれない。」彼はそう言った。
「…で、なんで、あたしがさっきの怪獣になるの?」
彼はもう一回、テレビを指差した。ちょうど怪獣の口から出た光線が、飛んでいる飛行機
を、2つに切り裂いたところだ。
「ギャオスは、超音波を光線みたいにして、なんでも切り裂けるんだ。ガラスが割れたの
は、広くばらけたからだろう。もし、一箇所に固まって出たら……」
「そうなったら……」ふたりのノドが、ゴクリと鳴った。
「キミの前にある物は、何でもまっぷたつ!」
彼の言葉に、あたしはクラクラとめまいを感じた。
◆ ◆ ◆
『クシャミが出来ない!!!』『どうしたらいいの??』あたしの頭の中は、グルグル回
る。
目をつぶって考えていた彼が、あたしの目を見て、力強く、でも、優しく言った。
「ノドのハレを治せば、落ち着くさ。」
…この時ほど、彼がたくましく見えたことは今まで無かった。
◆ ◆ ◆
それから、ふたりで、ノドのはれを治す方法を調べた。その結果、ハチミツと果物のカ
リンやキンカンがノドにいいと分かった。
もちろん、お医者にもらったトローチは、今もなめている。でも、ノドは痛いまま。
あいにく、あたしの家にも、彼の家にも、ハチミツが無かった。
近所のスーパーに買いに行くしかない。
あたしは、サングラスとマスクをしっかりかけ、彼にお礼を言って、外に出た。
我ながら、あやしい格好だ。
…なんで、彼と行かなかったのか、ですか?
うっかり、巻き添えにしたくないからよ。
◆ ◆ ◆
注意しないと、あたりは花粉が飛び交っている。杉やヒノキがある山の風上になるよう
に、道を選んでいるが、気が抜けない。
じりじりと進んでいくと、いきなり、おばちゃんが家の玄関先から水をまいた!
「ああぁ、危ない!」とっさに避けたからよかったが、水をかぶっていたら、おばちゃん
は、まっぷたつになっていた。
あたしは、無い胸をなでおろした。
工事現場に差し掛かった時、おじさんたちのたき火の真っ黒い煙が、急にあたしの方へ
来た!とっさに、しゃがんだからよかったけど、下手したら、あのビルはまっぷたつ!
…おお、怖い。
もうすぐスーパーへ着くと思ったその時、何だか騒がしい家があった。すると、玄関か
ら、ラーメンどんぶりを持った男の人が飛び出した。で、ちょうど、あたしの目の前を、
何かが横切り、男の人に命中した。何だろうと確かめると、こしょう入れだった。ちょっ
と遅かったからよかったけど、もし当たっていたら…もう考えるのは止めた!!
ここからスーパーは、もうちょっと。
あたしはいっきにダッシュした。
◆ ◆ ◆
ぐぃい〜〜ん。スーパー入り口の自動ドアが閉まると、あたしはハァハァと、一所懸命
に息が静まるのを待った。
お店に居た周りの人たちが、あたしを見てクスクス笑っている。…恥ずかしい。
でも、ようやく、ここまで来たんだ。
あたしは、ハチミツの棚を探しながら、「もう少しだよ」と自分で励ました。
ようやく棚を見つけたが、あたしは困った。
「なんで、こんなに種類があるの?どれを選べばいいの?」泣きたくなるのを、ぐっとこ
らえ、あたしは品定めを始めた。
「レンゲ蜜、アカシア蜜、…どれがいいのかな??」値段ラベルと、お財布の中身を見比
べて、適当に選んだ。…結局、一番安いのしか買えなかった。トホホ。
◆ ◆ ◆
あたしは、家までの道を、用心深く帰った。
もし、途中でクシャミして、周りを破壊したら、今までの苦労がフイになる。
あんなに遠く感じたのは、初めてだったよ。
◆ ◆ ◆
やっとお家にたどりつくと、おかあさんにホットケーキを焼いてもらった。2枚重ねた
上に、バターを乗せ、買ってきたばかりのハチミツをたっぷりかけた。ナイフで切って、
白い湯気が出ているのを、フォークで口に入れると、自然にニッコリと笑った。
「おいしいね。」いっしょに食べている、おかあさんも、いっしょに、笑っている。
キンカンやカリンが無かったので、ハチミツレモンを作って飲んだ。ちょっと酸っぱい
けど、ホットケーキを食べて口に残っていたバターを優しく溶かしてくれる。今までの心
と身体の疲れも、解かしてくれるようだ。
◆ ◆ ◆
次の朝、少し冷え込んでいたので、学校に行く途中、クシャミした。でも、もう、何も
起こらなかった。
あれから、色々考えた。そして気づいたことがある。ひと月前、あたしは、おかあさん
とひどいケンカをして、泣きながら寝た。
そして、朝目覚めると、花粉症がひどくなり、不思議な現象が起き始めた。それから、おか
あさんとも、あまり話さなかった。
あの超音波は、あたしの心だったのかもしれないなぁ…。
でも、昨日、おかあさんと仲直り出来た。あたしの買ってきたハチミツのおかげで。
「今日は、あたしがおやつを作ろう。」
サクラの花を見ながら、あたしは、そう思った。
(おわり)
◆あらすじ◆
地球に迫る大隕石。それはカマキリ型の宇宙怪獣『アゴン』の繭
だった。岡山県の牛窓に着水した繭から生まれた等身大のおびただ
しい『兵隊アゴン』の群れが、霧の中で住民を切り裂き、食べる。
危険を予告する小人たちと現場へ急行した主人公たちは、『兵隊
アゴン』と竹やぶで対決する。彼らの活躍で倒し方が分かり、自衛
隊の力で、『兵隊アゴン』は全滅できた。
しかし、その時、マユの中から巨大な『女王アゴン』が羽化して
きた。
『女王アゴン』には自衛隊のどんな攻撃も通用しない!
その時、小人たちの祈りによって、彼らの守り神であるスズメバ
チの怪獣『ベスパル』が飛来した。カマを振り上げる『アゴン』と
毒針で戦う『ベスパル』。戦いは地上だけでなく、はるか成層圏ま
で。『アゴン』のわずかな隙を見つけて、放たれた『ベスパル』の
蟻酸が勝負を決めた。
満身創痍の『ベスパル』は、空を見上げ、迫り来る第2第3のマ
ユを撃退するため、宇宙に向けて飛び立った。
〜「怪獣映画」のパターン〜
このアイデアは、「ゴジラVSデストロイア」や「ガメラ2レギオ
ン襲来」より前にあったんだけど。登場怪獣は、『アゴン』に対し
東宝の蛾怪獣『モスラ』と大映の亀怪獣『ガメラ』の連合だったけ
ど。
◆登場人物◆
芹沢真菜 (26):九州大学で講師をしている昆虫学者。
専門はカマキリ。
蜂谷慎吾と遠距離恋愛中。
蜂谷慎吾 (35):大阪の出版社に勤める記者。
超常現象に興味を持っている。
ベスパル(?) :『アゴン』の脅威を警告する双子の巫女たち。
見た目は15歳くらいの少女に見える。
白川由貴(18) :ペンションの一人娘。
『恐怖の夜』唯一の生き残り。
◆本文◆
それは静かに地球に近づいていた。
中におびただしい生命を眠らせて。今迫り来る危機に気づいていたのは、まだごく一部の
人だけだった。
◆ ◆ ◆
芹沢真菜は、その日新幹線の中で、遅い朝食としてサンドイッチを摂っていた。遠距離
恋愛の相手と3ヶ月ぶりのデートなので気合を入れて出てきた。
「あと大阪まで1時間か。」何度時計を見たことだろう。車窓から光る瀬戸内海の景色を
見ながら、うとうとしてきた。
◆ ◆ ◆
大阪に着くと、真菜はデートの相手である蜂谷慎吾と無事に逢えた。二人は腕を組んで
心斎橋を歩いていると、人だかりがある。
近づくと、人の輪の中で、巫女風の白い服を着た少女が二人、必死に訴えている。
「空から『アゴン』が近づいています!」
「『アゴン』は、今晩来ます!」
そこで聴衆から野次が飛ぶ。「来たらどうなるんだ!」
「たくさんの人が死にます!」すると聴衆はあざけり笑った。バカにする者、相手にしな
者、あわれんだ顔をする者たちばかりで、だれも取り合わない。
やがて、人の輪が崩れ、泣き崩れる、そっくりな顔の二人の少女だけが残された。
真菜はいたたまれなくなり、少女たちに声をかけ、慎吾と4人で近所の喫茶店に入った。
◆ ◆ ◆
飲み物を手短に注文すると、慎吾は記者の本領を発揮して、少女たちに事情を確認した。
彼女たちはある民族の巫女で、ベスパルと名乗った。少女たちは『アゴン』という人類の
天敵が空から来ることを、この1週間、人が集まる場所で、日本人に警告していたらしい。
だが、誰も話を聞いてくれなかったのだ。
最初、あまりにも突拍子が無い話で、信じられない慎吾と真菜だった。でも、ベスパル
の二人の真剣な瞳から、ただ事でないと感じた。「何か証拠は無いんですか?」真菜の問
いに「では、お二人とも目を閉じてください」とベスパルの二人が答えた。
慎吾と真菜は、素直に目をつぶると、脳裏にある光景が浮かんだ。
漆黒の宇宙を地球に近づく不気味な隕石。
その隕石の内部には、おびただしい数の生命が感じられる。
目を開けた慎吾と真菜にベスパルの二人が宣言した。
「今のが、人類の天敵『アゴン』です!」
慎吾と真菜は、顔を見合わせて、つぶやいた。
「テレパシー?!」
◆ ◆ ◆
瀬戸内海沿岸のある町で、臨海学校を行っている。キャンプ・ファイヤーを囲む子供た
ちに、若い男の教師が怪談を話している。
「昔、この辺りで、平家と源氏という2つの武士の集団が戦争をし、多くの人が亡くなっ
たそうだ。それ以来、霧が深い夜は、死んだ侍たちの幽霊が出歩くようになったらしい。」
聞いていた子供たちは、ゴクリとツバを飲み込んだ。
「その幽霊たちは、ヨロイをガチャガチャ鳴らして、歩き回り、生きている人間を見つけ
ると、刀でバッサリ切り殺す…そうだ。
それ以来、霧の晩は、誰も出歩かなくなり、みんなはしっかり戸締りして眠るようになっ
た。」
ここで、教師は子供をひととおり見回して、パンと手を打ち、「さぁ、もう遅くなったか
ら、おしまいだ。火を消そう」と言って立ち上がった。
片づけをしている教師に、数人の子供が近づき、オドオドしながら聞いた。
「さっきの話は、ホントなの?」
◆ ◆ ◆
ベスパルの二人と慎吾と真菜は、新幹線を降り、JR岡山駅前に立っている。
知人を説得し仲間にしようとしたが、失敗し、慎吾と真菜は疲れている。
もうすっかり暗くなった空の一角を、ベスパルの二人がゆっくり指差し、静かに言った。
「来ます!」「『アゴン』です!」
慎吾と真菜が空を見上げると、上空から火の玉が接近し、ビルの上をかすめながら、瀬
戸内海の方へ飛び去った。
◆ ◆ ◆
瀬戸内海に着水する火の玉。普通なら着水の衝撃で、周囲に波が立つはずだが、音もほ
とんどなく、波は出なかった。ただ、火の玉の熱気で、周囲の海水は蒸発し、深い霧が広
がっていく。
◆ ◆ ◆
テレビ画面に、ニュース速報のテロップが流れる。『本日21:00頃、岡山県南部で
弱い地震が発生。震源は地表のごく近く。原因は隕石の落下と思われる。各地の震度は…』
◆ ◆ ◆
冷えて黒く変色した火の玉が、深い霧の中で、大きくヒビ割れた。その中に無数の赤い
光点が見える。
◆ ◆ ◆
慎吾の運転するレンタカーの後部座席で、ベスパルの二人はハッとして言った。
「今、『アゴン』が目覚めたようです!」
真菜は「残念、間に合わなかった」と舌打ちしたが、慎吾は黙ってアクセルを踏み込んだ。
◆ ◆ ◆
瀬戸内海が目の前に広がるペンション村の一角。このペンションも深い霧に包まれてい
る。ペンションの食堂で数名が談笑している。
「なんだか今晩は霧が深いね…」客の中年男性が、オーナーに話しかける。
「そうですね。でも、先ほどの天気予報では明日は晴れるそうですから、きっと大丈夫で
すよ。」ヒゲを生やしたオーナーは、ニッコリ笑って応えた。
「あっ、そうだ。とっておきのワインがありますが、召し上がりますか?まだ11時です
が、どうなさいます?」オーナー夫人が、客夫婦に問いかけると、「お願いします」と応
えた。オーナーはそばに居た若い娘に「由貴、すまないけど、例のワインをとって来て。」
と頼んだ。「はい、お父さん」と答え、そのオーナーの一人娘・由貴は立ち上がり、地下
の貯蔵庫に向かった。
しばらく楽しく歓談していた一同は、ふいに黙り込み、「何かガチャガチャ鳴っています
ね」と誰かがつぶやいた途端、電灯が消えて、あたりは暗闇に包まれた。
◆ ◆ ◆
臨海学校をやっていた子供たちのテント。
周囲から近づくガチャガチャという音に、子供たちは目覚め、不安げにしている。
「さっきの怪談は、ホントなの??」
暗闇の中で、抱き合って励ましあっている女の子もいる。
◆ ◆ ◆
ペンション地下のワイン貯蔵庫から、白川由貴が出ようとした時、電灯がすうっと消え
た。なんとか外に出ようとドアを押してみるが、防犯用の電子鍵がかかり、出られない。
何回かドアに体当たりしたが、ビクともしない。「開けて、開けて」と叫びながら、ドア
を激しくノックする。
その時、すさまじい悲鳴とともに、ガチャガチャという物音が近づいてくる。
おびえた白川由貴は、部屋の一番奥の物陰に隠れ、手で頭をおおい隠し、ガタガタと震え
ている。
◆ ◆ ◆
ペンション村の入り口にレンタカーを止めて、二人のベスパルと慎吾、真菜が降り立つ。
山を越えたら、海に面したペンション村が岬に沿って見えるはずだ。でも、深い霧の中で
街灯も消えているため、何も見えない。
4人は目が暗闇に慣れるまで、待った。
ベスパルは前方を指差し、「この先に『アゴン』はいます!」とつぶやく。暗闇の中で、
慎吾と真菜は、緊張した表情でトランクから用意した道具を取り出しながら、うなづいた。
◆ ◆ ◆
ペンション村へ続く道を、慎重に進む4人。
前方に、無数の赤い光点が見える。
「先ほどお話した方法で、お願いします。」
小声でベスパルが合図をすると、真菜はそばの竹やぶへ入っていった。残る3人は、息を
殺し、竹やぶの反対側の岩のかげに隠れた。
竹やぶの中でしゃがみこんでいた真菜は、決心して、懐中電灯をつけて立ち上がった。
ガチャガチャという音と共に、赤い光点が6つ近づいてきた。枯れた竹の葉が踏まれて出
す、カサカサという足音の3mくらい上に2個の赤い光点が浮かんでいる。やがて、霧の
中で昆虫のカマキリに似た『アゴン』の姿がぼんやり見えた。
3匹の『アゴン』がそこだけ明るくなっている真菜の周りを囲んでいる。
「今だ!」慎吾の合図で、『アゴン』たちの背後から、残りの3人が飛び出した。手に
は水中銃をみんな握っている。真菜が地面に身を投げて懐中電灯を消したのと同時に、3
人は引き金を引いた。
『アゴン』たちは、水中銃から撃たれたモリを避けようとしたが、周りの竹が邪魔して
うまく動けず、頭にモリを受け、死んでしまった。
パタパタと服に付いたホコリをはたいて、真菜が立ち上がり、ほっとため息をついた。
「なんとか、うまくいったわね。」
慎吾は「ああ、危なかったけどな」と死体からモリを抜きながら答えた。「竹やぶで動き
を封じて、2つの赤い点を撃てば、倒せるか…うまい手だ。」
真菜が不安げに、ベスパルたちに質問する。
「これを朝まで?あと4時間続けるの?」ベスパルの二人は小声で答える。「はい。『ア
ゴン』は、夜しか動けません。でも、この方法は今晩しか使えません。明日は身体も固く、
大きくなってしまいますので。」
「明日のことは、当局に協力を要請するしかない、か。そのためには証拠を残し、とにか
く生き残ることか…」慎吾は、暗闇の中でつぶやいた。
◆ ◆ ◆
やがて、夜が明け、日が昇ると、霧が晴れた。すると、ペンション村入り口の竹やぶの
そばに4人の勇者の姿が見えた。全員疲れきって、座りこんでいる。
竹やぶの中には、巨大なカマキリの姿をした『アゴン』の死体が100匹ほどころがって
いる。
「これで5分の1か…」慎吾は、死体の山を見ながら、つぶやいた。
◆ ◆ ◆
疲れた身体にムチ打って、4人は山道を下りペンション村に入り、携帯電話を使って警
察へ通報した。
となり町から来た警官と10分後に合流し、調べてみると、この岬周辺に居た住民と観
光客236人の内、生存者はペンションの一人娘の白川由貴だけだった。林間学校の子供
たちも犠牲になっていた。犠牲者はだいたい寝ている所を襲われ、身体を鋭い刃物で切ら
れて殺された後、血液を一滴残さず吸い取られていた。
2時間後に到着した県警や報道関係者に、慎吾は証人として、事情を説明した。
当初は信じてもらえなかったが、『アゴン』の死体を目の前にして、全員、ベスパルの
二人を信じた。
◆ ◆ ◆
『期限は日没まで』この合言葉で対策本部の全員が働いた。
岬の先端にある黒いひび割れた高さ100mもある大きなモノの中に、まだ400匹の『
アゴン』が居る。今は身長3mくらいだが、昨晩吸った人間の血液を栄養にして、今晩に
は5m以上に成長する。すると身体の表面が固くなり、いっさいの攻撃が効かなくなる。
核兵器さえも効かなくなるそうだ。そして7日間、毎晩人間の血液を吸うと、身長50m
まで成長し、タマゴを一匹で生んで増え始める。1回500個のタマゴを7日ごとに生ん
でいく……つまり1匹の『アゴン』がわずか1ヶ月で625億匹になるのである!そうな
る前に、人間は全員『アゴン』に殺されるだろう……
ベスパルの二人の言葉に、腰の重い政府も動き、自衛隊の出動が決定された。
◆ ◆ ◆
夕焼け空の中を、航空自衛隊の戦闘機F−15Jが20機、強力なナパーム弾を積んで、
『アゴン』の巣へ襲いかかった。ナパーム弾の9割は命中し、『アゴン』の巣は、激しく
燃え上がった。
ひび割れから逃げようとした、脱皮したばかりの5mくらいに大きくなった『アゴン』
も、炎に包まれ海に落ちていく。
対策本部の全員が、肩を叩き合って喜んでいる。ただ一人の生き残り、白川由貴は泣い
ている。
しかし、『アゴン』の巣に細かいヒビが入ると、突然爆発し、破片が取材していたヘリ
を直撃し墜落させた。
はっとする一同。ベスパルの方を振り向く。
「親の『アゴン』です。アレには、貴方たちでは手に負えません!」ベスパルの二人は、
一同に話した。
と同時に、巨大な巣を粉々にしながら、身長50mもある『アゴン』が飛び出した!
「あなたたちの誠意は、十分に見せて戴きました。わたしたちが参ります。」
ベスパルの二人は、飛び立った『アゴン』を見つめ、静かに宣言した。
◆ ◆ ◆
ベスパルの二人は、突然光り輝き、空に浮かぶと、細かい光の粒に分かれた。
そして光の粒は数を増やしながら、大きな雲の様に広がり、やがて何かの形を作り始め
た。
対策本部の全員は、あっけにとられている。
そして、光の雲は、何か虫の形になり始め、やがて実体になった。
「ハ…ハチ?」そう。真菜がつぶやいた通り、巨大なハチの姿に、ベスパルは変身した。
◆ ◆ ◆
飛び立った『アゴン』は、宇宙に逃げようとすごいスピードで上昇している。後から追
いかけている『ベスパル』は、それ以上のスピードを出している。
成層圏を抜けたところで、『ベスパル』は『アゴン』を追い越し、鋭い口で、『アゴン』
の目と目の間をかみ切る。
『アゴン』は地球に引き返し、地表に向かって逃げ始める。『ベスパル』もすごいスピ
ードで追いかける。
雲を突き抜け、地表に向かい、急降下する二匹。『アゴン』が、真下に向かうように、
口から酸を吐き、攻撃する『ベスパル』。
◆ ◆ ◆
夕日も沈み、うす暗くなりはじめた地表。
対策本部の全員が見守る中、二匹が上空から落ちてくる。
地表にぶつかる寸前で、二匹は宙返りをして、すっくと立つ。にらみ合う二匹。
「『アゴン』を照らせ!」対策本部からの指令で、強力なサーチライトの光が『アゴン』
の顔を照らす。『アゴン』は両手の巨大なカマで顔をおおい、光から逃げようとしている。
この『アゴン』のすきを『ベスパル』は待っていた。
『ベスパル』は、口から強力な酸を『アゴン』のカマに吐きかけると同時に、飛び掛っ
た。
酸で溶ける痛みにカマを下ろした『アゴン』の首筋に、『ベスパル』は鋭い口でかみつく。
同時に、『ベスパル』はお尻に隠していた必殺の毒針を、深く『アゴン』に突き刺す。
毒針から流れ込む毒の傷みに怒った『アゴン』は最後の力で、残ったカマを『ベスパル』
に打ち込む。
ゆっくりと倒れる二匹。すさまじい振動が起こる。
無言のまま、見守る対策本部の一同。
やがて、よろよろと、立ち上がる『ベスパル』。羽は折れ、身体はキズだらけである。
喜び叫ぶ、対策本部の一同。
◆ ◆ ◆
その時、慎吾や真菜の脳裏に、少女だったベスパルたちの声が交互に聞こえた。
「わたしたちは、行かなくてはなりません。」
「まだ多くの『アゴン』の巣が、地球に近づいています。」
「傷ついたわたしたちは負けるかも、しれません。」
「でも、あなた方は、知恵と勇気で、きっと勝てるでしょう。」
「それでは、みなさん、ごきげんよう!」
突然のことに、一同は呆然と『ベスパル』を見上げている。
と、『ベスパル』は宇宙に向かって、スウっと飛び立った。少しよろめきながら、でも
真っ直ぐ上昇し、どんどん小さくなる。
感極まり、手を振りながら走り出す、真菜と慎吾が叫ぶ。「さようなら!ありがとう!」
対策本部の一同の内、民間人はみな手を振っている。警察官や自衛官は、みな敬礼をして
いる。
『ベスパル』は上空で、一番星になった。
(おわり)
「まるちゃん、みっけ!」大きな声で妹のアカネが叫ぶ。
小さな潮溜まりにしゃがみこんで、何かをさがしていたと思ったら…。
ボクは、ドキドキしながら、アカネに声をかけた。
「アカネちゃん、ナニを見つけたの?」
アカネは、ニカっと笑いながら、ふり向いて言った。
「まるちゃん! かあいいよね。」
右手に下げた小さなバケツの中には、トゲトゲがたくさん生えた丸い物…ウニが入って
いた。
ボクは、「またか!」と頭を抱え込んだ。
◆ ◆ ◆
妹のアカネは3才。
こいつには、実に、困ったクセがある。
お散歩していて見つけた小さな生き物を、何でも持ち帰るのである。
そう、な〜〜んでも。
そして、いれものの中で、飼うんだ。
ほっとけば、何時間でも座り込んで、じ〜〜〜っと観察するのである。
ごはんも食べずに、じ〜〜〜っと。そりゃ、トイレは行くけどね。
ボクも生き物は好きだけど、こいつには負けてしまう。
チビのクセに、なかなか骨があるやつだ、と実は尊敬している。
◆ ◆ ◆
アカネのために、いっつも迷惑しているのは、ボクらのお母さん。
娘のアカネやボクは、生き物が大好きなのに、なぜか、この人は大嫌い。
ゴキブリはもちろん、大キライ。
だけど、なんで、あのカッコイイ、ダンゴムシの良さが分からないのかな?
◆ ◆ ◆
こんなことが、あった。
アカネが、冬のある日、カマキリの卵のかたまりを、こっそりと拾ってきた。
お母さんには、ないしょで、ボクの勉強机の引き出しに、かくしたんだ。
何日たっても動かないので、いいかげんわすれていたら、春になって、中から小さいカマ
キリがウジャウジャ生まれた。
掃除をしようと引き出しを開けたお母さんは、ビックリして、気絶した。
目が覚めたお母さんは、なぜか、ボクをゲンコツでなぐった。
◆ ◆ ◆
また、こんなことが、あった。
アカネが、春のある日、水溜りからオタマジャクシをたくさん拾ってきた。
お母さんには、もちろん、ないしょで、洗面器に入れて、ボクの部屋の押入れに、かくし
たんだ。
この時は忘れずに、台所からだまって持ってきたケズリブシをあげてたよ。
「おお、脚が生えた! 手も出てきた!」とアカネと毎日観察してたんだ。
で、掃除をしようと押入れのフスマを開けたお母さんに、小さなカエルがたくさん飛びか
かり、…お母さんは、ビックリして、気絶した。
目が覚めたお母さんは、やっぱり、ボクをゲンコツでなぐった。
『お兄ちゃん』は損だと、ボクはようやく気付いた。
◆ ◆ ◆
今度お母さんが気絶したら、3回目…。
このままでは、ボクの頭は、ジャガイモみたいになるかも。
まずい、絶対に、まずい!
日傘の下でノホホンとしているお母さんに、どう言おうか……。
ボクは、必死になって考えているのに、アカネはノンキに鼻歌を唄っている。
ウニが入ったバケツを提(さ)げた右手はおとなしいけど、ボクとつないだ左手はブンブ
ン振っている。
ホントに楽しそうだ。
でも、どうしたらいいの?
ボクの心配をよそに、お母さんの日傘は目の前に近づいた。
◆ ◆ ◆
「ママ、まるちゃん、見つけたよ!」アカネが元気な声で、右手のバケツをお母さんに
見せた。
お母さんは、お昼寝していたみたいで、ゆっくりと身体を起こし、バケツをのぞいて、
つぶやいた。
「あら、おいしそうなウニね♪」
今度はアカネがビックリして、首を横にブルブル振りながら、バケツを自分の後ろに隠
した。「食べちゃダメ!」
お母さんは、ギョッとして、ボクをにらんで言った。「まさか、それを飼うの?」
ボクは力なく微笑んで言った。「そうみたいだね…。」
◆ ◆ ◆
アカネは、『さるかに合戦』の絵本で見た栗のイガとそっくりなウニを、『海の栗』と
呼んで、気に入ったそうだ。
お母さんは、アカネを何とか言いくるめようとしたが、失敗した。
知らなかったけど、お母さんの大好物はウニなんだ!
なんかうらめしそうにバケツを見ていたな。
でも、結局、アカネのウニは、あきらめて、ウチで飼うことになった。
◆ ◆ ◆
飼うのはいいけど、ウニってナニを食べるのか?
それを調べるため、ボクもお母さんも、大変だったよ。
やっと分かったのは、コンブとかの海藻を食べることだ。
お母さんは「このコンブはいいオダシのとれる高級品で高かったのよ」とかブツブツ言い
ながら、アカネに手渡した。
◆ ◆ ◆
2〜3日そうして、『まるちゃん』を飼っていたけど、なんだか元気が無くなった。
心なしか、色も少しうすくなり、イガイガの先も丸くなってきたようだ。
心配したボクはアカネを連れて、獣医さんへ行ってみた。
だけど、獣医さんは、「ウニのことは分かりません」と診察を断っちゃった。
どうしたら、いいのか分からない……ボクは1年分くらい必死に考えた。
かわいい妹のためだ。
そして、ひらめいた!
『ドロボウのことはケイサツに』…そうだ、専門家に聞こう!
ボクらは、……魚屋さんへ向かった。
◆ ◆ ◆
「ほう、活きがよくないねぇ。」魚屋のおじさんは、『まるちゃん』をちょっと見ると
そう言った。
「きっと海と違う場所に連れて行かれたから、元気を無くしたんだよ」おじさんは、アカ
ネにニカっと笑いかけると、やさしくそう言った。
アカネは、ほっとしたのか、おじさんにニカっと笑い返した。
……魚屋さんに持っていったら、料理されてしまうと心配した人がいたら、ごめんなさい。
さすが、男と男。おじさんは、アカネの様子を見て、すぐに分かってくれたんだよ。
◆ ◆ ◆
それから、アカネとボクは海へ行った。あの潮溜まりに。
バケツから、やさしく『まるちゃん』を取り出し、ボクはゆっくりと逃がした。
最初、『まるちゃん』はとまどっていたけど、やがてトゲトゲをゆっくり動かしながら
歩き始めた。
「もう、人間につかまるなよ」小声で言うボクに、『まるちゃん』はトゲを振って応え
てくれたようだ。
頭の上では、カモメがゆっくり鳴きながら飛んでいる。
しばらく潮溜まりを見つめていたが、そろそろヒザが痛くなってきた。
ゆっくり立ち上がりながら、「さぁ、アカネちゃん、帰ろうか?」と横を見たけど、妹
はいない。
キョロキョロ周りを見渡すと、少し離れた潮溜まりに妹がしゃがんでいる。
イヤな予感をこらえて妹に近づくと、アカネはニカっと笑いながら、バケツを見せてく
れた。「連れてかえろ〜」
中には……ナマコがいた。トホホ。
お母さんが気絶しても、お母さんがナマコを好きでも、ボクはアカネが好きだ。
(おわり)
「うわ〜ん」
お庭の片すみに作った小さなお墓の前で、
小学生くらいの小さな女の子が、
ひとりで、ずっと泣いています。
女の子の名前は、サナエ、です。
サナエが生まれた時に、やって来たイヌのシロが、
今朝、死んじゃったんです。
◆ ◆ ◆
サナエとシロは、
学校以外は、いつも一緒でした。
シロを毎日 お散歩に連れて行くのは、
もちろん サナエです。
お母さんに台所で包丁と火を使うことを許してもらってからは、
シロのごはんを作るのも サナエでした。
その代わりに サナエがつらい目にあった時、
サナエの ひみつの お話しを聞くのは シロでした。
だから、サナエと シロは 大切なおともだち でした。
◆ ◆ ◆
きのうの夜、急に具合が悪くなったシロ。
苦しそうにハアハアと息をしているシロに、
サナエが出来たことは、
シロの背中をさすりながら やさしく話しかけることだけでした。
一緒に見ていた お母さんたちは、
サナエに ねるように言いました。
でも 日曜日だったので、
ずっと 起きていることを、
サナエは 特別に ゆるしてもらえたのです。
むちゅうになって シロを看病していると、
時々 シロがサナエを やさしく 見つめてくれた気がしました。
でも、朝早く、シロは急に ブルブルと身体をふるわせた後、
動けなくなりました。
「シロ、シロ」と サナエが いくら話しかけても、
シロは ピクリとも動かず、
だんだん 冷たくなっていきました。
サナエのおかあさんたちは、
目と目で合図して、
シロを サナエから 離しました。
◆ ◆ ◆
シロの身体は、小さな木の箱にスッポリ入りました。
お庭でつんだ花を サナエが 涙をこらえながら入れた後、
シロはお墓の中に 行きました。
そして サナエは、
シロのお墓の前で、
朝から お昼すぎまで ずっと泣いていました。
おかあさんたちは そっとしてあげることにして、
家の中から サナエを 見守っています。
サナエは 泣きつかれて、
いつのまにか ねむってしまいました。
◆ ◆ ◆
サナエが 気づくと、
まわりは黒い霧でおおわれていました。
立ち上がってぐるりと見渡しましたが、
あんまり霧が 濃くて、なんにも見えません。
その時、遠くから 何か声が聞こえた気がしました。
「シロ、シロ?」
サナエは、足元だけをしっかり見て、
まっすぐ 声のした方向へ 歩き始めました。
一歩、一歩、
シロに会えることだけを信じて、
サナエは 歩きます。
床はデコボコしていて、何度もころびそうになりました。
でも、とにかく歩き続けていると、
急に前から風が吹いてきました。
あんまり風が強いので、
立ち止まり、腕で顔をかくしていました。
やっと風がやんだので、まわりを見ると、
霧はすっかり 無くなっています。
今まで歩いてきた方を 振り返ると、
細く長い道が一本伸びていて、
その両側は 黒くて深い深い 谷になっています。
「よく 落ちなかったなぁ…」
サナエは、下を見て、本当にこわくなりました。
その時、空の上の方が、白くピカリと光りました。
あんまり まぶしくて、
サナエは 気を失ってしまいました。
◆ ◆ ◆
サナエが 気づいて息をすると、
口からアブクがプクプクと出てきました。
いつの間にか、水の中にいました。
泳げないはずのサナエが、自由に泳いでいます。
よく見ると、サナエは 小さな赤いお魚に なっていました。
「シロ、シロはどこ?」
サナエが シロをさがしながら泳いでいると、
後ろから大きなカゲが 近づいています。
それは 大きな黒いお魚で 大きな口を開けて そっと 近づいています。
変な気がして 赤いお魚が ふりかえると、
目の前に 大きな口が せまっています!
「だめだ!食べられる。 もう、シロに あえない…」
赤いお魚が あきらめて 目を閉じたとき、
急に ごばっザバッと すごい音がして、
黒いお魚は いなくなってしまいました。
赤いお魚は 知りませんでしたが、
黒いお魚は 白い海鳥がつかまえて食べてしまったのです。
赤いお魚は それからも 泳ぎ続けましたが、
とうとう つかれて グッタリと 目を閉じてしまいました。
◆ ◆ ◆
サナエが 気づくと、
まわりはホンワカと あたたかく、
何か あまいにおいがしています。
いつの間にか、春のお花畑にいました。
今度は 身体が軽くて フワフワとしています。
よく見ると、サナエは 小さな赤いちょうちょに なっていました。
「シロ、シロはどこ?」
サナエが シロをさがしながら飛んでいると、
後ろから大きなカゲが 近づいています。
それは 大きな黒いカエルで 大きな口を開けて そっと 近づいています。
変な気がして 赤いチョウチョが ふりかえると、
目の前に 長い舌の先が せまっていて、
遠くには 大きな口が 見えます!
「だめだ!食べられる。 もう、シロに あえない…」
赤いチョウチョが あきらめて 目を閉じたとき、
急に シャア〜〜ァ、バグっと すごい音がして、
黒いカエルは いなくなってしまいました。
赤いチョウチョは 知りませんでしたが、
黒いカエルは 真っ白のヘビがつかまえて食べてしまったのです。
赤いチョウチョは それからも 飛び続けましたが、
とうとう つかれて グッタリと 目を閉じてしまいました。
◆ ◆ ◆
サナエは、暗い闇の中で、考えました。
「黒い霧の中で、
深い谷から 助けてくれた あの白い光。
水の中で、
黒いお魚から 助けてくれた あの白い海鳥。
お花畑の中で、
黒いカエルから 助けてくれた あの白いヘビ。
あれは みんな シロじゃないか?
そうだ、シロは 今も いっしょ。
わたしは ひとりじゃない。」
そう 分かると、
サナエは もう さびしくありませんでした。
「いつまでも メソメソしていたら、
シロに 笑われるしね。
いつでも シロが 見守ってくれているからね。」
◆ ◆ ◆
サナエは 顔になにかが とまったので、
目がさめました。
見上げると 夕焼けの中に、
一匹の 赤トンボが 飛んでいます。
くうぅぅ〜ぅと おなかの虫が鳴きました。
サナエが シロのおはかを見ると、
小さな白い花が さいています。
「シロ、お花に なったんだね。」
サナエは、
目にたまった涙を 洋服のそでで ぬぐうと、
ニッコリほほえみ、
スカートについた ホコリを パンパンと はたき落として、
お家の中へ 入っていきます。
「ただいま!」
サナエが開けた お勝手口から、
サナエの大好きな カレーのにおいが してきました。
(おわり)
第一章 車の中で
「ばかね、そんな事もまちがえるなんて。」
「・・・っるせー!」
「では第2問!」
「もうやんねーよ。」
「なんでぇ?」
「いいだろ別に」
「あっ!分かったわ。また間違えるのが嫌なのねー?」
「ふん!」
言い合ってるのは、大崎 亜美と大崎 光の兄妹だった。
2人は別々に暮らしている。
父はいない。
母とも別に住んでいる。
では、2人は今日、なぜここに一緒にいるのか。
そして2人は一体ここで何をしているのか。
今日は、母の誕生日パーティーの日。
2人はこれに誘われたのだ。
では何をしてる?
少し前にもどってみよう。
「お兄ちゃん、クイズ大会でもやんない?」
「おっいいなー」
クイズ大会・・・?だそうだ。
兄の光は車を持っていないため妹の車できている。
だが、今は冬休み。道路は渋滞してる。
2人はたいくつだった。
2人の2つの謎はこんなわけだったのだ。
「ほら、動いたぞ。」
「あれ?」車はどんどん進む。
「あれれ?やったー!ぬけたぬけたー!」
どうやら渋滞の原因はトラックの故障だったようだ。
2人は喜んで再びスタートした。
隣の車の助手席からこちらを見ている、不思議な女の子には気づきもせ
ずに・・・。
(つづく)
わたしは夏美。
新人ポケモントレーナー。
わたしが集めているのは鳥タイプのポケモンで、
今、最高のパートナーは、キャモメの[キャメ。]である。
今まで、キャメと一緒に数々のトレーナーやジムリーダーをたおしてきた。
今、バッジは2つ。
カナズミのツツジとムロのトウキを倒してきた。
でも、キンセツのテッセンがどうも倒せない。
こっちは鳥タイプだから、電気タイプのわざなんかやられたらおしまいだ。
仕方なく、わたしは他のポケモンをつかまえることにした。
「ええと、何をつかまえようかしら・・・?」わたしは気がつくとどうくつに
いた。
「あら、いつのまに・・・?」と独り言をつぶやいてる時だった。
何かがわたしにぶつかってきた。「きゃっ!」見ると、マクノシタというポケ
モンだった。
「かわいい?」なかなか強そうだな。と思ってつかまえてみようと、ボール
をなげた。
すると・・・。「やったー!」何とか一発でつかまえたのだった。キャメも喜ん
でいる。
わたしはマクノシタに[マジンブ?]というニックネームをつけたのだった。
そして・・・。「テッセンさん、戦って下さい!」とわたしは頼んだ。
すると、「なんだぁ?またおまえか。ははははは。鳥ポケじゃ勝てないぞぉ?」
と言われてしまった。
でも、わたしはすぐに、「大丈夫よ。今度こそ。」と言ったのだった。
そして「そうにらむなよ。勝負してやるから。」と言ってもらえた。
さあ、いよいよ戦いが始まる・・・。
(おわり)
「どうして」
私は思った。大好きなお婆ちゃんが亡くなってしまった。
「もっといっしょにいたかった」
と私は一年たった今でも思っている。私はある日いいコトを思いついた。
「そうだ。お婆ちゃんに手紙を書こう!」
そう思って必死になって書いた。そして、やっと完成した。
「天国のお婆ちゃん行き」
華より
と書いた80¥切手をはりポストへ出した。そして数日がすぎた。
◆ ◆ ◆
「おや?これは下の国(この世の手紙ではないか」
天国郵便局員が言った。そう、ここは天国。華のおくった手紙は届いたのだ。
さっそく郵便局員はお婆ちゃんのトコへと手紙を届けた。
「おっ。ここだな。」
と局員が言った。
「あら。これは華ちゃんからじゃない。どうして届いたの?」
と言ったのである。
「それが・・・。私にもわからないのです。どうしてなのか・・」
ここは、天国。もちろん手紙など届くはずが無い。
だけれど華の気持ちが通じたのかとどいたのである。
「ホントうれしいわ・・・。でも・・。」
とお婆ちゃんは言った。天国は下の国に手紙を送ってはいけないのだった。
◆ ◆ ◆
そのころ華は・・・。
「届いたかな」
といつもポストを開けていた。でも、自分でも届くはずが無い、と分かっていたのだ。
その時だった。空の上から誰かの声がした。
「華ちゃん。どうもありがとう。幸せだったよ。だから華ちゃんも幸せでいてね」
と声がした。その声は確実にお婆ちゃんの声だった。私も言い返した。
「ずっと見守ってね。お婆ちゃんのコト本当に大好きだったよ。
これからも私のおばあちゃんでいてね」
そよ風がふきとても気持ち良い朝のことだった。
(おわり)
「なんでよ!」
私は、大好きな友達に、嘘をつかれた。
そのコの名前は、田口香里ちゃん。
香里ちゃんは、「ゴメンねゴメンネ」と何回も謝った。
私は、大好きな一番の友達だったので、「うん。いいよ」といい顔をしてしまった。
でも、本当は、心は怒りに満ち溢れていた。
学校から帰ってベットにもぐり、「なんでよ・・・。」と何回もつぶやいていた。
ある日の事だった。
それは、突然の出来事だった。
香里ちゃんは、転校する事になってしまった。
びっくりした私は、つい身を乗り出してしまった。
私達の仲は、クラスでも一番よかったと、評判だった。
クラス替えの時も、いつもなぜか一緒で、それがとてもとてもうれしかった。
ほかにも、席替えでちょっと近くなっただけで、本当によろこんだ。
休み時間、香里ちゃんが「今日遊ばない??」と誘ってくれた。
「じゃあ、家きて!」と言った。
放課後、急いで香里ちゃんの家に、自転車をぶっ飛ばして、行った。
香里ちゃんの家に入って、香里ちゃんの机を見たら、すごい整理整頓されてて、
「おお・・・。」とつい言ってしまうほどだった。
よーく点検していったら、おもちゃの小さな救急車があった。
そこには「華チャン大好きだよ」と書いてあった。
私は嘘をついて「ちょっとトイレいってくるね」と言って、何回も心の中で反省した。
香里ちゃんが、とうとう転校する日、「バイバイ」私はそれしか言わなかった。
というより、それしか言えなかった。
本当は、大好きなのに。
私は、勇気をふりしぼって、こう言った。
「住んでいる場所は、はなれていても、ずっと友達だから!」
香里ちゃんは、おどろきもせず、笑顔で「うん!」と言ってくれた。
香里ちゃんが、いなくなってから1年…。
ある日、転入生が来た。
名前は、田口香里ちゃん。
私は「まさかな」と思いながら、じっと、そのコを見た。
よぅく、見てみると、そう! あの時の香里ちゃん!
もしかしたら、私たちの心が通じ合ったのかもしれない・・・。
大好き!
(おわり)
朝の日差しが、窓辺に飾られた花々を優しく包みます。
4月17日=あやめの13回目の誕生日は、よく晴れた日曜でした。
そっと窓を開くと、電信柱にとまっていたスズメたちもチュンチュン、
とごきげんの様子。あやめはすっかりいい気分になって、
「ハッピーバースデー、あやめちゃん!」
と叫びました。その声に驚いたのか、スズメはチチチチチ・・・と
小さな羽をばたつかせて、遠くの山へと飛んでいきました。
ふぅ、と浅いため息をついてから、あやめは、白い壁にかかった宝物の
アヤメの絵に目を移しました。(ハッピーバースデー、あやめの花♪)
自分でもう一度そう言って、あやめは花の透き通るような深い青紫色に
手を伸ばし、そっと・・・確かに触れたはずでした。なのに、感触が
しないのです。あやめの手は、そのまま絵を突き抜けて・・・
(体が、絵の中に・・・吸い込まれる!?)
そして。あやめの部屋には、風の吹きつける窓の、ぱたぱたという
音だけが響いていました=。
ふわっ。
ほのかに花の香りがして、おそるおそる目を開くと、あやめは山間の道の
真中に立っていました。辺りを見渡すと、吸い込まれそうなくらい澄んだ
青い空と、田畑や山々の深い緑色が一面に広がっています。あやめは何となく
この場所に懐かしさを感じました。
五分ぐらいそこにいたでしょうか。突然、走ってきた女の子がぶつかって
きました。
「ごめんなさい。急いでるので。」
女の子は、あやめが口を開く前に、それだけ言い残し走って行ってしまいました。
ふと見ると、さっきの女の子がいたところに、スミレの刺繍がされた小さな
ハンカチが落ちています。あやめが顔を上げると、遠くの赤い屋根の家に
消えていく女の子が見えました。(あそこまで。届けなきゃ・・・)
あやめは走り出しました。
「あぁ!あたしのハンカチー!これ、親友にもらった大事な物なんです。」
女の子は、あやめに何度もありがとうを言いました。
「えっと、私、すみれっていいます。それで、あの・・・」
と、その時。また女の子が走ってきました。女の子は、息を切らせながら、
涙声ですみれに言いました。
「引越・・・明日に早まった・・・今日は私の誕生日なのに・・・それに、
すみれと、離れたくないよぉ・・・」
「あいちゃん・・・」
本当に突然のことであやめもびっくりしましたが、二人を見てすぐに状況を
理解しました。そして、静かに口を開きました。
「大丈夫。二人はきっと本当の親友だから、どんなに離れていても・・・
心が繋がっていれば、絶対また会えるよ。それに、思い出もいっぱいある
でしょう?それがあれば、お互いのいないところでも、きっと頑張れるよ。
ね!」
二人は、強くうなずきました。すみれは急に家に駆け込んで、綺麗な箱を
取り出しました。
「これ、あいちゃんのために準備したんだ」
「ありがとう・・・」
そんな二人を見て、あやめは、ふいに、自分も誕生日だという事を思い出し
ました。
「私、帰らなきゃ・・でもどうやって?」
「大丈夫だよ。集中して、自分の家を思い浮かべて、これに乗れば、絶対
帰れるから。」
そう言ってあいちゃんが指さした先には、少し不思議な形をした汽車が
停まっていました。さっきまでは無かったのに・・・。
あやめは二人にありがとうとさよならを言いました。乗り込むと、汽車は
間もなく動きだしました。
「私、あなたの言ったこと信じて、引越先でも頑張るね。ありがとう、
あやめちゃんっ!」だんだんスピードが上がり、二人が小さくなっていきます。
(あれ?教えてないのに、どうして私の名前・・・)
=!
突然あやめの記憶が、パン!とはじけました。『あいちゃん』。それは、
あやめの・・・相沢あやめの、昔のニックネームだったのです。
「あなたは・・・三年前の私!それから親友のすみれ!プレゼントの中身は、
宝物のアヤメの絵=」あやめは、出る限りの声で汽車の窓から叫びました。
しかし、あやめの声は、涙と一緒に・・・風に消えてしまいました。
朝の日差しが、窓辺に飾られた花々を優しく包みます。気がつくと
あやめは、『宝物のアヤメの絵』の前に立っていました。絵に触れて
みましたが、何も起きません。
(この絵は、引っ越す時にすみれが描いてくれた物だったんだ。)
あやめは、外に出てみました。足元には、小さなスミレの花。
しゃがみこんで花を見つめると、すみれとの思い出が次から
次へと溢れてきます。あやめは急に寂しくなりました。
「すみれ・・・」
「なぁに?呼んだ?あいちゃん。」
びっくりして顔を上げると、そこには昔と全く変わらない懐かしい笑顔が=。
「逢いたかった!」
咲き誇る春の花々。今日は、あやめの誕生日です。
(おわり)