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決勝戦の三塁側アルプススタンド応援席。真中を左右に走る通路を挟んで下段には在校生とブラスバンド、そして応援を指揮する野球部員とチアガール。通路の上段には、父兄や卒業生、一般の三高野球部ファンなどが陣取っていました。全員が『日大三高優勝』を念じての観戦です。三高の攻撃時には、声を限りの声援が飛び、得点の度に『輝く日大』の大合唱です。しかし何かもう一つの物足りなさを私は感じていました。 その時です。アルプススタンド上段の私の席から少し離れた席を陣取っていた卒業生の一団とおぼしきグループの中から飛び出した2人が通路に立ち、上段の卒業生に向かって「第一応援歌〜!」。そして彼らの構えは、紛れもなく『応援団』のそれでした。「百花繚乱、時は今、三高健児の・・・・」と、かって歌い慣れ親しんだ形の応援歌応援の合唱が起こりました。下段では、「ウララ ウララ ウラウラと〜・・・・・」が。期せずして起きた上段の卒業生とおぼしきグループからの『日大三高・第一応援歌』の歌声に、下段の在校生たちが一斉に振り返り見上げています。応援歌を指揮する2人の男性のリードぶりは、明かに応援指導の心得を持つ人間の姿でした。応援歌合唱の輪は、そのグループを中心に徐々に周囲に広がっていきました。私もいつしか、メガホンを叩きながら声を大にして応援歌に加わりました。私の頭の中は、完全にタイムスリップし日大三高生に戻っていました。一区切りして応援歌の合唱が終わると、2人の“応援リーダー”は、また彼らのグループ席に紛れ込みました。期せずして合唱に加わった周囲の応援席からは、大きな拍手が沸き起こりました。グランドでは、再び、近江高校の継投投手陣を三高の各選手たちが攻め、得点チャンスを作っています。ブラスバンドの演奏は、バッターボックスに立つ選手の個々のテーマソングを奏でます。それに合わせて応援リーダーの指揮で声援を送ります、「ドッカーンと一発・・・」。再び、かの“応援リーダー”氏が登場です。「第三応援歌〜!」。そうです、攻撃のチャンスの時には、一気呵成にたたみ込むように「血潮沸き立つ、歓喜に燃えて・・・・」の第三応援歌が、かっての日大三高の応援の定番だったのです。「お前が打たなきゃ誰が打つ!!」、確かに。『君に全てを託している!』『打ってくれ〜、一発頼むぞぉ!』の気持ちは、『ウララ ウララ・・・』も『血潮沸き立つ・・・』も全く同じです。でも『しかし』なのです。 最初の突然の“応援リーダー”の出現に戸惑いを覚えたアルプススタンド上段の応援席は、今度は歌い出しからの大合唱になりました。打者が変わっても三高の攻撃は続きます。もちろん第三応援歌は連唱です。いつしか三高ブラスバンドの演奏も第三応援歌を奏でています。三高生の応援リーダーの横に大きな第三応援歌の歌詞板が掲げられています。アルプススタンド上段からの歌声が一段と大きくなりました。卒業生にとって、母校の応援歌を歌うなどという機会は、卒業後はめったにありません。ささやかな記憶に頼っていた合唱だったのです。それが歌詞板が与えられたのですから、そこは在学中に歌い慣れ親しんだ曲。大きな大きな『オール日大三高の大合唱の輪』が出来上がったのでした。 試合終了のサイレンが広い甲子園球場に鳴り渡り、その後、日大三高の選手がホームプレート上に一線に整列します。もちろん彼らの視線は全て、これから掲揚される日大三高校旗が上がるスコアーボード上のポールです。誰れ彼れとなく握手し抱き合い感涙を溢れさせ、喜びを全身で表現し合っていた三塁側アルプススタンドも一斉に注目をします。球場内に校歌の前奏が流れます。今まで何回も耳にしてきた我が母校の校歌が、これほどまで誇らしく聞こえた事はありません。グランドの土にまみれ、灼熱の真夏の太陽に流した汗にまみれ、さらに今、自分たちに与えられた栄誉に感激して流した涙にまみれている日大三高野球部の選手たち。その一人一人と同じ場所で、同じ歓喜の空気を吸い、同じ流れる校歌を耳にし、大会中の校旗掲揚に使われるのは この瞬間しかない中央部のポールを浜風に旗めきながら掲がっていく同じ校旗を見、私は至福の一時を味わっていました。もちろん周囲からは、嗚咽や号泣の声も上がっています。私自身、めったに歌う事の出来ない甲子園大会最後の試合に勝利した高校のみが歌う事が出来る校歌を歌おうと口を開くのですが、声にはなりませんでした。旗めく校旗もともすると霧の中にあるようにボヤけて見えます。『平成13年の夏』は終わりました。あれからも日大三高野球部は、幾多の好ゲームを私たちの前に披露をし続けてくれています。先輩たちの成し遂げた偉業に続けと、小倉監督の『練習は決して嘘をつかない』の言葉を信じて私たちの後輩は、今日も三高グランドで汗と涙を流しているでしょう。私は、そんな彼らを見守り、時には大きな声援を送り、再び感動に落涙出来る日を楽しみに待っています。 ※『第7話』に挿入のイメージ画像は、全てM氏よりの提供(クリックすると大きな画像が見れます) |
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つたない文章による“想い出話”にお付き合いくださり有難うございました。 画像提供をいただいたM氏、日大三高野球部の沿革データの参照をさせていただいたI氏とK氏、走り書きの文章を見栄え良くデザインしてくださったI嬢、そしてお読みくださった皆様に心より感謝します。 |
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