コメ自由化への試案
コメ自由化への試案
農業は産業?それとも公共事業?(前)
農業は産業?それとも公共事業?(後)
農業は産業?それとも公共事業?
▲ 農業は産業?それとも公共事業?(後) フランスと日本の違い ( 2003年3月24日)
▲ コメ自由化への試案 Index
▲ 趣味の経済学 Index
▲ FX、お客が損すりゃ業者は儲かる 仕組みの解明と適切な後始末を
NHKTVで見るEUの農業保護政策
2日間の内容
「安全な「食」を求めて」と「農村再生」と題してEU各国からのレポート、政策担当者の見解、及びスタジオでのコメンテーター=ノンフィクション作家島村菜津(なつ)、九州大学大学院教授小川全夫(たけお)、両氏のコメント。
イギリス 狂牛病(BSE)に揺れたイギリスで有機飼料による飼育の例。自治体が費用の半分を負担して生産者直売店を作った例。
オランダ トマト生産農家が殺虫剤の代わりに天敵=テントウムシを使って害虫駆除を行っている例。
フランス 地主が都会へ転居して荒れたままになっている農地に、都会の青年を招き農業を委託する「青年就農援助プログラム」。
小規模農家が農業を続けていくことを保護するCTE(経営に関する国土契約)。
ドイツ 品種改良が進む現代に、在来種の良さが見直された養豚業の紹介。
イギリスでは狂牛病(BSE)を出した農家が市販の飼料に不信感を持ち、すべて自然の牧草で牛を育てる農家を紹介。
ちなみにイギリスでのBSEは1986年11月その発生が認知されてから2002年末までに、180,376頭が発生、約470万頭が処分された。日本の飼育頭数は450万頭。
イギリス以外での発生頭数はアイルランド1,199頭、フランス754頭、ポルトガル725頭、スイス432頭以下略。日本であれほどの騒ぎになるならヨーロッパではどれほどのパニックになったのだろう?想像がつかない。
(狂牛病=mad cow disease =海綿状脳症=BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)。人間の場合はクロイツフェルト・ヤコブ病と称される。
イギリスでの患者は129人、その内死者は121人。
番組では当局の対応ではなくて、一農家の対応を取り上げていた。イギリスでのBSEの影響、一般農家の対処の仕方などは報道されてなかった。場面は変わって小都市での「生産者直売市場」の話。
自治体がその設立費用の半分を出して50軒ほどの農家のための直売市場を作った話。これはイギリス版「地産地消」だ。自治体が費用を出す、ということは生産者保護であって一種の「価格維持」政策。
そして疑問は「この地域の農家は生産物を他の地域に売らないのだろうか?」ということ。生産量を拡大したり、品質に自信があれば遠隔地へも売り込みたいはずだ。そうした時に「地産地消」は邪魔になる。
ここで行政側の発言が紹介される。
オランダ、農薬・自然管理・水産省事務次官=ファン・デル・ザンデ氏のコメント
この10年、生産者本位の政策から消費者本位へ、消費者に配慮しなければ売れないことを痛切に感じたのです。
力を注いできた農産物は、常にたしかなものでなければ国境を閉ざされてしまうのです。
EUでは1990年代に農業政策が変更されるまで、その政策の主眼は「価格維持」であった。補助金を出して農家を保護する、そのために生産過剰になり、各国の財政負担が大きくなり、各国の負担率がEU農業委員会での論争の的になった。
また環境汚染やBSE問題などがおきて農業政策の見直しが迫られた。1993年に農政改革が始まり(マクシャリー改革)、1997年7月16日に「アジェンダ2000」と題された農政改革案が欧州委員会により発表され、1999年首脳会議で合意された。
この内容は@EU加盟を申請している中東欧諸国等への加盟前支援措置、AEU予算の大半(99年予算で約83%)を占める共通農業政策及び構造政策(格差是正基金及び構造基金)の改革、B2000年〜2006年のEU予算の枠組みを含むものである。
アジェンダ2000を巡っては、共通農業政策や構造政策の改革を進め、EU予算の増加を抑えるとともに、自国の分担金負担の低減をも図ろうとする純支払国(独、オランダ、オーストリア等、EU分担金の支払額がEU予算からの受取額を上回る諸国)と、
共通農業政策や構造政策の既得予算維持を図る純受取国(仏、スペイン、イタリア、ポルトガル等)との間でぎりぎりの交渉が続けられた(交渉は1999年3月25日深夜から26日早朝まで続けられ、最終的に合意に達したのは26日午前6時)。
ここでは「アジェンダ2000」ではなく、NHKの放送内容を中心にEUの農業政策を考えることにする。
<ドイツ>ドイツでは豚の品種改良が進み、在来種であるシュベービッシュハル豚(通称ハル豚)が絶滅に瀕している頃、その味の良さに目を付けて商品として売り出した話。
ただし番組の取り上げ方は「何でも新しいのがいい訳ではない」という取り上げ方。ハル豚がなぜ消費者に受け入れられたかと言えば、それは品質がいいからであって、古いからではないはずなのに、番組制作者の捉え方はこの通り。
ここで行政側の発言が紹介される。
消費者保護・食糧。農林省局長=ヘルマン・シュラーベック氏のコメント
農家が果たす役割は益々重要になってきています。国民のために食糧を生産することにとどまらず、地域を活き活きと健全に維持し続けているのです。又、農村に雇用を作り出す役割も果たしています。
今我々は農業に対する助成を、現状を守ったり自然を守ったりする分野で強化しています。さらに農村を活性化させるための助成も増やしています。こうした助成を徹底させていくことが必要だと考えています。
ここでもう一人行政側の発言を紹介しよう。番組では初めの方で紹介されていた。
欧州委員会農業担当委員=フランツ・フィシュラー氏のコメント
農業の役割は牛乳や肉、麦などを生産することにとどまりません。景観を守り、高い品質の食品を生産し、そして自然環境を維持していく役割のあるのです。
番組ではフランスの次にドイツだったが、ここでは先に紹介する。行政担当者の発言ではっきりしてくる、EUでは農業を「産業」としてではなくて「公共事業」と捉えている、ということが。
<フランス>フランスでは青年就業援助プログラムとCTE(経営に関する国土契約)を扱っていた。
さらに欧州委員会農業総局前副局長=ディビット・ロバーツ氏のコメントも興味深いものだが、これに関しては次週書くことにします。欧州農業社会主義共同体について書くつもりです。ご期待ください。
フランスと日本の違い
このように農業活性化には結びつかないと考えられるのだが、EUの考えは違う。ここで欧州委員会農業総局前副局長=ディビット・ロバーツ氏のコメントを紹介しよう。
農業は地域の活性化を維持する役割を果たしています。私たちは地域政策の中で農業を効率化しすぎないように、細心の注意を払わなければなりません。
農業の効率化によって、地方に住む人が減ってしまうことになってしまえば、基本的な地方行政を維持していくうえでの人口が保てなくなるために、その地方は衰退していかざるを得ないからです。
我々は地域に雇用機会を様々なかたちで保証し、農村を活性化しようとしているのです。
「乏しきを憂えず、等しからざるを嘆き悲しむ」そうした社会。「先に豊かになれる者から豊かになり、他の人は少し遅れて豊かになる」社会とは違う。
EUでは農業でもワークシェアリングを始めた。人々が等しく貧しくなる社会を目指している。
<CTE(経営に関する国土契約)=Contrat Territorial D'exploitation >
もう一つの話題がこれ。小規模農家が国と契約を結び、荒れ地の開墾など国土の保全を行う。その代わりに報酬を受け取る制度。
1999年農業基本法を改正しこの制度が発足した。番組で紹介されたのは、20haの土地で150年ブドーを栽培している農家。
(100ha以上の農家が少なくないフランスでは小規模に属する) この農家が3haの荒れ地を畑にしてそこにオリーブを植える、国からは40万円ずつ5年間補助を受ける。
番組では取り上げていなかったが、2003年にはCTEに代わって「持続可能な農業契約(sustainable agriculture contract - CAD)」が導入され、関連法制度は2003年前半に公布される。TV報道は時代に敏感であってほしい。
フランスでは農業に効率化を求めない、効率の悪い農家も存続させるために税金を使う。基本的な地方行政を維持していくために「農業が儲からなくてもいい」となる。
政府は若い人に向かってこう言う。「農業で高収入は望めません。将来妻子に苦労をかけるかも知れません。Boys, be ambitious.とは言いません。
野心家は来ないで下さい。環境保全のために献身的な努力をする人が必要なのです。官に逆らう経営者はいりません」。これでは日本にもある宗教団体のようだ。しかしそれがフランスの、そしてEUの農業政策の基本なのだ。
WTOに関して言えば、自由貿易ということで物事を画一的に考えればいいんだ、というような動きに対して日本とEUは共通の戦略を立てて対抗することが出来ると思うのです。
アメリカなんかはこういう農業の多面的な捉え方は「保護主義」だと言っているんですが、地球環境のことなどを考えると、日本もEUも共通の路線が取れるんじゃあないかと思うんですね。
「地域資源が再発見出来れば農家の収入は問題にすべきではない。保護貿易主義と非難されても地球環境の事を考えるべきだ」と言う。
番組制作者が「保護貿易主義者」なのか?あるいは「このような方向へ持って行った方が視聴者に喜ばれる」と考えたのか?それでも日本の視聴者は必ずしも「保護貿易賛成者」ばかりではない。
自由貿易の大切さを分かっていたり、農業の保護・過保護政策の弊害を知っていたり、けっこう日本の消費者は賢くなって来ていると思う。
「農業は合理化や利潤追求だけではダメで、環境保護などの社会的意義があるから儲からなくてもいい」などの主張は表向きは兎も角、本音では支持していない。
かつて大本営が「贅沢は敵だ」と言ったとき「贅沢は素敵だ」と蔭で言っていた日本国民、本音と建て前を上手に使い分けている。日本の農家はリスクを分散させるために「兼業農家」というリスク管理を考え出した。
いろいろな肩書きのある取り巻きよりも、農業経営者は経済感覚に優れている。
ところでジュビリー2000の主張するように重債務最貧国(HIPCs=Heavily Indebted Poorest Countries)の債務を帳消しにすると、一時的に財政が楽になる。しかしその後民間は投資しなくなる。
民間金融機関はモラトリアム、デフォルト、不良債権化する恐れのある案件には投資しない。
外部からの投資なしでの経済成長は期待できない。それは日本の農業を見ると分かる。農業への株式会社の参入を制限し、農地売買を制限し、外部からの資本参入を制限している日本農政、この制度を変えることが日本農業を成長させるポイントになる。
では日本ではどうなのか?ネットで見るとけっこう元気者もいるようだ。「コメ輸入反対」どころか逆にアメリカに産直をやっている「賀茂有機米生産組合」
こんな檄文が登場する「農業経営者」
農業の経営者は農水省でも農協でもなく農業経営者自身であるという自負と自己責任を自覚することだ。政治に頼らず、集団に埋没することなく、個人として農業の経営主体意識を持ち、そろそろ自ら借金をする農水省の作男の身分を脱することなのだ。
そして、真に地域を担おうと思うのなら、流行りや懐古趣味の建前でない論理を持つ本物の経営者としての役割を果たそうと思うべきだ。
そのために、集落営農の論理や農業・農村という枠に縛られない“村”を超える自由な論理で経営や地域の未来を考えるべきなのだ。
さらなるコストダウンに真剣に取組み、そして、消費業界とのネットワークの中で“食べる者”のためにある農業経営を考え、単なる稲作生産者ではなく本物の農業経営者への成長を目指すべきだということだ。
常に厳しさばかり強調しているようだが、豊富な知識と的確な判断力で読む人を納得させる「Rough Rice」。「農薬を使って何が悪い」と言い切る「ヤルゾ村」。
「農薬を必要悪と考えるのはやめよう」と、農薬に対する知識や経験を伝える「農薬ネット」。や「農薬のお話」。
ネット上の農産物取引所「農通インフォマート」。「栽培ネット」。
「食農ベンチャーサイト」。「東穀eコマース」。「日本農産情報」。
外食産業と提携し産業としての農業を確立している泣Cズミ農園。そしてコメの産直に関しては「コメ産直を考える」で書いた。
農業政策の基本は「儲かる農業を目指すべきだ」がTANAKA1942bの考えです。