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講演は、何の前置きも無く「シドニーオリンピックでは・・・」という形で始まりました。ひじょうに新鮮でした。単刀直入に本題に入ることで、限られた時間を無駄なく使おうということでしょう。2時間という枠の中で精一杯伝えようという誠意を、強く感じました。
コーチの言葉はそうあるべきでしょう。例えば、バスケットボールのゲームにおけるタイムアウトでの指示などは、単刀直入に、そして適確に伝えることが大切です。わずか1分しかないのですから・・・。平素の練習においても同様でしょう。私の場合、「前に言ったかもしれないが」とか「繰り返しになるけど」とかいう前置きが多く、無駄な時間を使っている感じがします。授業でも同様です。
ところで、2月ともなると、国公立大学の2次試験の準備を進めている受験生も多いことでしょう。2次試験で論述問題を課されることがあります。100字以内とか200字以内といった字数の制限があり、無駄な言葉を省きながら、必要なことをもらさず書く力が要求されます。ここでも「単刀直入」はひじょうに大切です。
先日見た毎日新聞の朝刊に電報の話が載っていました。字数によって料金が決まりますから、できるだけ字数を少なくし、しかも用件を正確に伝えなければなりません。そこで様々な符丁が使われました。新聞では、井伏鱒二の小説『駅前旅館』のなかから、例えば、長野県は「ソハ」(信州ソバのソバから濁点をとったもの)、新潟県は「コチ」(越後を逆さにしたことばをさらに省略したもの)などが紹介されていました。一昔前、ポケベルがはやったとき似たような現象が起きました。今は、メールの時代ですが、メールでも字数制限されることがあります。
さて、井村さんの話の冒頭は、シドニーで金メダルを取るために、観客の大半を占めるであろうオーストラリア人の拍手喝采をえるために、現地で意識調査をおこなったという話でした。テーマは「日本と聞いてイメージするもの」です。そのアンケートの結果、オーストラリア人がイメージするものは、テレビゲームと武道だったようです。
武道と聞いて、井村さんは「空手」の師範に指導を依頼し、シンクロの選手が真摯な態度でその指導を受け、演技に生かしたということでした。金メダルを取るためには、どういう演技をすればいいかを徹底して追究し、イメージができたらそれを繰り返し練習させることで定着させていく。
バスケットの指導においても同様で、勝利のためにチームのスタイルを確固たるものにすることが要求されます。例えば、本校の元ラグビーの監督さんは、単純化して「相手をバテさせること」という話をされました。私も選手に大枠については話をしています。次の課題は指導の徹底です。
講演会では、シドニーでの日本チームの演技のビデオも上映されました。プールに飛び込む前の演技では、お辞儀をした瞬間に、会場から大きな拍手が沸き起こりました。その後、空手の型をイメージした動きを入れ、それに選手の発想で「ヤーッ」という掛け声も付け加えられました。
最初の話に戻ります。単刀直入に語ることの重要性について話をしてきましたが、場合によっては必ずしも効果的ではないことがあります。余韻を持たせるような言い方が必要な場合もあるのです。商品のキャッチコピーなどがそうです。
以前紹介した『キャッチフレーズの戦後史』(岩波新書)に、新潮文庫のキャッチフレーズが紹介されていました。桃井かおりという俳優の写真を入れ、「知性の差が顔に出るらしいよ・・・・困ったね」というフレーズを使ったものです。単刀直入に言うなら、「知性の差が顔に出る」だけでいいのです。しかし、広告は消費者の頭に印象付けてしかも長く記憶にとどめさせなければならないので、余計なもののように思える部分を敢えて割愛しないことが効果的なのだということでした。
とは言え、スポーツの指導における言葉は冗長さとは無縁のものでありたいと考えています。書き言葉は冗長になりがちですね。反省しています。ほとんど推敲せずに載せているものですから、どうしてもそうなるのです。5・7・5で意を尽くす俳句・川柳等を学ぶ必要がありますね。 |