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『去来抄』目次

 『去来抄きょらいしょう』は去来没後きょらいぼつご70ねん安永あんえい4(1775)ねん公刊こうかんされたしょで、その伝来でんらい若干じゃっかん疑問ぎもんはあるものの、蕉門しょうもん信頼しんらいできる俳論はいろんしょとされている。うたがうべきものかどうかは、中身なかみんでからじっくりかんがえてほしい。

『去来抄』先師評

外人之評有といへども先師の一言まじる物は此に記す

 1、蓬莢に聞かばやいせの初だより
 2、辛崎の松は花より朧にて
 3、行春を近江の人とおしみけり
 4、この木戸や錠のさされて冬の月
 5、うらやましおもひ切時猫の恋
 6、凩に二日の月のふきちるか
 7、春風にこかすな雛のかごの衆
 8、清瀧や浪にちりなき夏の月
 9、すゞしさの野山にみつる念佛哉
 10、面梶よ明石のとまり時鳥
 11、君が春蚊屋はもよぎに極りぬ
 12、振舞や下座になおる去年の雛
 13、田のへりの豆つたひ行蛍かな
 14、大歳をおもへバとしの敵哉
 15、散銭も用意がほ也はなの森
 16、月雪や鉢たたき名は甚之亟
 17、切れたるゆめハまことかのみのあと
 18、おととひはあの山こえつ花盛
 19、病鴈のよさむに落て旅ね哉
 20、岩鼻やここにもひとり月の客
 21、うづくまるやくわんの下のさむさ哉
 22、下京や雪つむ上のよるの雨
 23、猪のねに行かたや明の月
 24、蔦の葉は残らず風のそよぎ哉
 25、下臥につかみ分ばやいとざくら
 26、手をはなつ中に落けり朧月
 27、泥がめや苗代水の畦うつり
 28、じだらくに寝れば涼しき夕哉
 29、玉棚のおくなつかしやおやのかほ
 30、夕涼み疝気おこしてかへりけり
 31、つかみ逢ふ子どものたけや麦畠
 32、いそがしや沖のしぐれの真帆かた帆
 33、兄弟のかほ見るやミや時鳥
 34、   につと朝日に迎ふよこ雲
   青みたる松より花の咲こぼれ

 35、梅にすずめの枝の百なり
 36、舟に煩ふ西国のむま
 37、弓張の角さし出す月の雲
 38、でつちが荷ふ水こぼしけり
 39、妻呼雉子の身をほそうする
 40、   ぽんとぬけたる池の蓮の実
   咲花にかき出す橡のかたぶきて

 41、   くろみて高き樫木の森
   咲花に小き門を出つ入つ

 42、   あやのねまきにうつる日の影
   なくなくも小きわらぢもとめかね

 43、   二ツにわれし雲の秋風
   中れんじ中切あくる月かげに

 44、   分別なしに恋にしかかる
   浅茅生におもしろけつく伏見わき

 45、赤人の名ハつかれたりはつ霞
 46、駒ひきの木曾やいづらん三日の月


『去来抄』同門評

凡篇中ノ異評自ラ是トスルニ似タルハ、いまだ判者なきゆへ也。猶後賢を待侍る。

 1、腫物に柳のさハるしなへ哉
 2、雪の日に兎の皮の髭つくれ
 3、山路きて何やらゆかし菫草
 4、笠提て墓をめぐるや初しぐれ
 5、春の野をただ一のミや雉子の声
 6、馬の耳すぼめて寒し梨子の花
 7、白水の流も寒き落葉かな
 8、卯の花に月毛の駒のよ明かな
 9、鶯の啼て見たればなかれたり
 10、鶯の舌に乗てや花の露
 11、鶯の身を逆にはつね哉
 12、桐の木の風にかまハぬ落葉かな
 13、駒買に出迎ふ野べの薄かな
 14、嵐山猿のつらうつ栗のいが
 15、ちる時の心やすさよけしのはな
 16、電のかきまぜて行ゆく闇よかな
 17、時鳥帆裏になるや夕まぐれ
 18、取れずバ名もなかるらん紅葉鮒
 19、鞍坪に小坊主のるや大根引
 20、夕ぐれハ鐘をちからや寺の秋
 21、応々といへどたたくや雪のかど
 22、幾年の白髪も神のひかり哉
 23、白雨や戸板おさゆる山の中
 24、さびしさや尻から見たる鹿のなり
 25、唐黍にかがらふ軒や玉まつり
 26、玉祭うまれぬ先の父こひし
 27、御命講やあたまの青き新比丘尼
 28、門口や牛王めくれてはつしぐれ
 29、猪の鼻ぐずつかす西瓜かな
 30、まんぢうで人を尋ねよ山ざくら
 31、蕣にほうき打敷をとこ哉
 32、年たつや家中の礼は星づきよ
 33、(季重なり)
 34、盲より唖のかハゆき月見哉
 35、蕣の裏を見せけり秋の風
 36、時雨るるや紅粉の小袖を吹かへし
 37、   はつのいのこに丁どしぐるる
   生鯛のひちひちするをだいにのせ

 38、梅の花あかいハあかいハあかいハな
 39、行ずして見五湖いりがきの音をきく
 40、梅白しきのふや鶴をぬすまれし
 41、鶯の海むいてなくすまの浦


『去来抄』故実

予初学の時より俳諧の法を知事を穴勝とせず。此故に、去嫌い季節等も不覚悟。まして其外の事は、いふに不及。しかれども、此編は先師の物語有し事共、わずかに覚へ侍るを記す。

 1、先師は俳諧の法式を用ひ給たまはずや
 2、蕉門に手に葉留の脇、字留の第三、用ゆる事はいかに
 3、卯七曰、蕉門に無季の句興行侍るや
 4、卯七曰、発句に切字を入るる事は如何
 5、卯七曰、花に定座有哉
 6、卯七曰、花を引上て作るはいかに
 7、卯七曰、猿みのに、花を桜にかへらるるはいかに
 8、卯七・野明曰、蕉門に恋を一句にても捨るはいかに
 9、卯七曰、蕉門に宵闇を月に用ひ侍るや、いかん
 10、野坡曰、東武の会にて盆を釈教とせず
 11、去来曰、許六と明月の明の字を論ず
 12、許六曰、村雨に季無し
 13、去来曰、手爾於葉は天下一まいのてにはにて
 14、許六曰、古事古歌を取には、作を並べて心を尽すべし
 15、去来曰、古事古歌をとるには、本歌を一段すり上て作すべし
 16、先師曰、世上の俳諧の文章を見るに、或は漢文を假名に和らげ
 17、先師曰、凡讃名所の発句は、其讃を其所の発句と
 18、先師曰、俳名は穴勝熟字によらず、只となへ清く
 19、去来曰、俳諧の集の模様、やはり俳諧の集の内にて作すべし
 20、去来曰、外題の寸法有
 21、魯町曰、竹植る日は古来より季にや
 22、卯七曰、先師に二見形といふ分台侍る由、いかがにや
 23、去来曰、先師曰、俳諧の書の名は、和歌詩文史録等と違ひ


『去来抄』修行教

 1、去来曰、蕉門に千歳不易の句、一時流行の句と云有
 2、魯町曰、俳諧の基とはいかに
 3、魯町曰、不易の句はいかに
 4、魯町曰、流行の句はいかに。
 5、魯町曰、不易流行其基一ツとはいかに
 6、魯町曰、風を変ずるには其人有りとはいかに
 7、魯町曰、基より出ると不出風はいかに
 8、魯町曰、先師も基より不出風侍るにや
 9、魯町曰、不易流行の句は古説にや、先師の発明にや
 10、丈草曰、不易の句も、当時其体を好みてはやらば
 11、去来曰、俳諧を修行せんと思はば
 12、去来曰、俳諧の修行者は、己が好たる風の
 13、先師曰、今の俳諧は、日比に工夫を附て
 14、支考曰、昔の俳諧は如来禅の如し
 15、去来曰、先師は門人に教へ給ふに、その詞極りなし
 16、先師曰、発句は頭よりすらすらと、いひ下し来るを上品とす
 17、許六曰、発句は題の廓を飛出て作すべし
 18、去来曰、他流と蕉門と第一案じ所に違ひ有りと見ゆ
 19、去来曰、蕉門の発句は、一字不通の田夫
 20、去来曰、俳諧は新意を専とするといへども、物の本情を違ふべからず
 21、去来曰、俳諧は火をも水に言ひなすと、清輔が云へるに迷ひて
 22、去来曰、句案に二品有リ
 23、去来曰、蕉門に同意同竈といふ事あり
 24、去来曰、句に句勢といふあり
 25、去来曰、句に姿といふものあり
 26、去来曰、句に語路といふ物有り、句走リの事也
 27、先師曰、発句はむかしより様々かはり侍れど、附句は三変なり
 28、牡年曰、いかなるを、ひびき・匂ひ・うつりとはいへるにや
 29、牡年曰、附句の位とはい成事にや
 30、牡年曰、俤にて附るとはいかが
 31、支考曰、附句は一句に一句也
 32、先師曰、附句に気色はいか程つづけんもよし
 33、支考曰、附句は附るもの也。
 34、去来曰、附物にて附ヶ、心附にて附るは、其附たる道すじ知れり
 35、宇鹿曰、先師十七條の附方、路通に伝授し侍ると承る
 36、去来曰、附かたは何事もなく、すらすら聞ゆるをよしとす
 37、支考曰、附句に新古なし
 38、先師曰、一巻表より名残迄一体ならんは見ぐるしかるべし
 39、其角曰、一巻に我句九句十句有りとも、一二句好句あらばよし
 40、浪化曰、今の俳諧に物語等を用ゆる事はいかが
 41、去来曰、凡吟ある時は風あり、風は必ず変ず
 42、牡年曰、発句の善悪はいかに
 43、牡年曰、発句と附句のさかひはいかに
 44、野明曰、句のさびはいかなるものにや
 45、野明曰、句の位とはいかなる物にや
 46、野明曰、句のしほり、細みとは、とはいかなるものにや
 47、先師遷化のとし、深川を出給ふ時、野坡問曰